なんでもあり!『キングオブコント2022』は「筋肉の祭典」。決勝進出者の特徴をおさらい

キングオブコント

文=ラリー遠田 編集=梅山織愛


いよいよ今日、10月8日(土)19時からTBS系列で生放送される『キングオブコント2022』。今年はいぬ、かが屋、クロコップ、コットン、最高の人間、ニッポンの社長、ネルソンズ、ビスケットブラザーズ、や団、ロングコートダディという10組が決勝戦へ進出した。

この10組はいったいどんなメンバーなのか。年々、盛り上がりを見せるこの大会を視聴者はどのように見届ければいいのか。お笑い評論家・ラリー遠田が、決勝直前にチェックしたい今大会の注目ポイントを紹介する。


過去最高レベルの大会となった2021年

2008年から毎年行われているコント日本一を決める大会『キングオブコント』は、2021年に大きくリニューアルされた。松本人志以外の審査員は全員入れ替えられ、顔ぶれが一新された。さまぁ~ず、バナナマンの4人が抜けて、代わりに過去の大会王者である飯塚悟志(東京03)、小峠英二(バイきんぐ)、秋山竜次(ロバート)、山内健司(かまいたち)の4人が加わった。

この改革は見事に成功した。もちろん、コントの実力や芸人・タレントとしての格という点では、さまぁ~ずやバナナマンでも問題はない。

しかし、『キングオブコント』優勝の実績を持つ新審査員の4人は、今なおライブシーンの先頭に立つ現役のコント芸人であり、審査される側の気持ちもよくわかっている。出場者としても、彼らに審査されるなら文句はない、というところがあるのではないか。

昨年の大会では、4人の審査員の審査コメントも評判がよかった。ネタのおもしろさを言語化することに長けている上に、出場者に対する愛情も感じられた。

そんな2021年大会は、過去最高レベルの激戦となった。決勝に進んだ10組がいずれも質の高いコントを披露して、爆笑をさらっていた。今ひとつのウケ具合で終わるコンビがひと組も存在しなかったのだ。

決勝まで勝ち残った芸人がおもしろくてウケるのは当たり前のことなのだが、この当たり前が何年も果たされていなかったことを考えると、その意義は大きい。2021年の『キングオブコント』は、現代最高峰のコントのおもしろさを世間に知らしめることになった。

ユニット初の決勝進出「最高の人間」は旋風を起こすのか

10月8日に『キングオブコント2022』が行われる。大改革から2回目の大会となる今年こそが本当の勝負どころだ。2021年大会の奇跡的な盛り上がりはただの偶然だったのか。それとも、今後も期待できるものなのか。今年の決勝はそれを見極める試金石となる。

決勝に残ったのは、いぬ、かが屋、クロコップ、コットン、最高の人間、ニッポンの社長、ネルソンズ、ビスケットブラザーズ、や団、ロングコートダディ、の10組。

今年のファイナリストで注目されているのは、ユニットとして決勝進出を果たした人がいることだ。実は、芸人同士が本来活動しているのとは別のユニットを組んで大会に参加することが認められたのも2021年からだ。

昨年の大会では、決勝に駒を進めたユニットはいなかったが、今年ついにそれが実現した。岡野陽一と吉住のピン芸人ユニット「最高の人間」である。彼らは対照的な芸風ではあるが、いずれもネタのおもしろさに定評があり、タレントとしても活躍している逸材である。

最高の人間 キングオブコント
最高の人間(左・吉住、右・岡野陽一)

そんな彼らが手を組んで作ったコントは、桁違いのおもしろさを秘めていた。ユニットコントでは、それぞれの個性が生かされることで「1+1」が2ではなく3や4になるのが魅力だったりするのだが、彼らの場合、感覚的には「1+1」が10や20になっている。それぞれのネタやキャラクターのおもしろさがそのままコンビのネタに昇華されている。

この見事なコンビネーションは、同じくユニットコンビとして『M-1グランプリ2020』で世間に衝撃を与えたおいでやすこがにも通じるものがある。おいでやすこがの漫才も、歌ネタを得意とするこがけんと大声ツッコミが売りのおいでやす小田が、それぞれの持ち味を生かしたネタを演じていた。最高の人間のコントの完成度の高さはそれに近いものがある。決勝メンバーの中でも見劣りしない実力を持っている。


クロコップ、コットン、ネルソンズ……肉体芸人の数が異常

初決勝組は最高の人間を含めて5組いる。残りの4組は、いぬ、クロコップ、コットン、や団。いずれも準決勝では格別に大きな笑いを起こしていて、順当に勝ち上がってきた。

ちなみに、初決勝組のうち、いぬの太田隆司は筋トレが趣味のマッチョキャラで、自慢の筋肉を生かしたネタもある。クロコップの荒木好之は、格闘家のミルコ・クロコップからコンビ名をつけていることからもわかるとおり、大の格闘技好きであり、彼らは空手やボクシングの要素を取り入れたネタで話題になったこともある。や団の本間キッドは子供のころにプロレスラーを志していたこともあるほどの格闘技マニア。彼らもプロレス技を取り入れたネタを持っていたりする。

いぬ キングオブコント
いぬ(左・有馬徹、右・太田隆司)
クロコップ キングオブコント
クロコップ(左・荒木好之、右・しょうた)
や団 キングオブコント
や団(左・ロングサイズ伊藤、中央・本間キッド、右・中嶋享)

さらにいうと、2度目の決勝進出となるネルソンズの青山フォール勝ちは、アマレスの経験者で元日本代表でもある。芸人の中には格闘技好きや筋トレ好きが多いとはいえ、この偏りは明らかに異常である。彼らはいずれも力ずくで笑いをもぎ取るパワータイプの芸風である。

今年の『キングオブコント』は、そんな肉体派芸人たちが躍動する「筋肉の祭典」となるかもしれない。そんな彼らを審査するのが、笑いと筋肉の頂点を極めた審査員の松本人志であるというのも不思議な縁である。

自由でシンプルな賞レース

ただ、彼ら以外の「非筋肉芸人」たちも指をくわえて見ているわけではない。かが屋、コットンは安定した演技力と緻密な構成力を生かしたコントを演じて、どこでも安定した笑いを取っている実力派だ。

また、決勝経験がある大阪勢のニッポンの社長、ビスケットブラザーズ、ロングコートダディの3組は、いずれも他人がまねできない、いや、まねのしようがない唯一無二の芸風を持っている。はまったときの爆発力は並大抵のものではない。

コントのいいところは、自由なところだ。『M-1』のあとで「あれは漫才ではない」といった意見が出て「漫才論争」が起こることはあっても、『キングオブコント』のあとに「コント論争」が起こることはない。

なにしろ、過去には「大きなイチモツをください」と声高らかに歌い上げるネタを披露したどぶろっくが優勝している大会である。初めから「なんでもあり」であることはコントという形式が保証してくれている。

出場者は肉体と頭脳をフル活用して、ただ己の信じる笑いを貫くのみ。視聴者はそれを楽しむのみ。この地上で最もシンプルなお笑い賞レースが『キングオブコント』である。今年も楽しみだ。


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ラリー遠田

(らりー・とおだ)1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わ..

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