【来年で還暦】泥沼裁判・スキャンダルで失墜のジョニー・デップ、“憧れのスター”に返り咲く光明は?

2022.8.14
『L.A.コールドケース』ジョニー・デップ

トップ画像=『L.A.コールドケース』より
文=バフィー吉川 編集=菅原史稀


ジョニー・デップ主演の映画『L.A.コールドケース』が、8月5日から公開中。

本作は、HIPHOP界のレジェンドとして今も語り継がれるラッパーの2パック&ノートリアス・B.I.G.が人気絶頂期に殺害された未解決事件について、その事件を担当したラッセル・プールの証言を元に書かれたノンフィクション小説の映画化。ジョニー・デップは、主役のラッセル・プールを演じている。

アメリカでは昨年公開されたこの作品、しかし製作されたのは2018年だ。公開まで3年もかかってしまった本作、その理由としては新型コロナウイルスのパンデミックによる影響も挙げられるのだが、一番の理由はデップの訴訟問題である。

日本とは違い、裁判の映像がテレビで放送されるアメリカやイギリスにおいては、デップと元妻のアンバー・ハードの裁判が連日のように報道されていた。結果的に逆転勝訴を手にしたデップであるが、この長期にわたるスキャンダルによって失われてしまった信頼は、簡単に取り戻せるものではないだろう。


バイプレイヤーからカメレオン俳優、そして誰もが知る大スターへ

ジョニー・デップといえば今や誰もが知る大スターというイメージが定着しているが、その名が知られるまでには紆余曲折の道のりがあった。

『エルム街の悪夢』(1984)で殺人鬼フレディによって殺害されてしまうグレン役や、『プラトーン』(1986)における北ベトナム軍との銃撃戦によって命を落とすガーター役など、端役からキャリアをスタートさせたデップ。1990年に主演を果たした『クライ・ベイビー』と『シザーハンズ』は、どちらも作品こそ注目されたものの、俳優としての知名度を映画ファン以外へ広めるまでには及ばなかった。

『クライ・ベイビー』(1990年、当時27歳)

『ギルバート・グレイプ』(1993)や『エド・ウッド』(1994)、『ナインスゲート』(1999)、『ショコラ』(2000)などの出演により、映画好きの間では演技派・個性派の俳優として名が知られ、音楽活動やクラブ経営などマルチな活躍をしていた。しかし現在のように、誰もが知る大スターとなったのは『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003)以降のことである。

『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003年、当時40歳)

ディズニーランドのアトラクションを映画化した『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでジャック・スパロウを演じたデップは、本作出演後、メジャー大作のオファーが殺到した。ビッグタイトルへの出演は演技の幅が狭まってしまうと、イメージの定着を嫌う俳優もいるなか、デップはそれをチャンスと受け止め、世間的イメージを上手に構築しながらプラス要素として変換していった。

『シザーハンズ』をきっかけに、プライベートでも友人関係であるティム・バートン監督とタッグを組んだ『チャーリーとチョコレート工場』(2010)や『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)、『ダーク・シャドウ』(2012)では、バートンの世界観を体現するような奇抜なキャラクターを演じ、ジャック・スパロウと同様にアイコンとしてイメージを定着させながらも、『パブリック・エネミーズ』(2009)、『ブラック・スキャンダル』(2015)など、演技や役に対してのストイックさが要される作品への出演も積極的だった。

こうしてメジャー役者かつカメレオン俳優として活躍しつつ、時には『Mr.タスク』(2014)や『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』(2016)といったおバカ映画にも前のめりで出演するなど、スターでありながらちょっとした顔出しでも参加してくれるフランクな性格も活かし、唯一無二の俳優として注目を集めていた。映画ファンにとってもそうでない人々にとっても、“大好きな俳優”であるという稀有な存在となったのだ。

“恋多き男”の泥沼裁判劇

またデップはスクリーンの中だけでなく、私生活でも注目を集めた。ウィノナ・ライダーやケイト・モスなど、数々の女優やモデルとのロマンスを繰り広げる恋多き俳優としても知られる彼。そんななか最も交際期間が長かったのは、1998年から恋仲となったフランスの女優ヴァネッサ・パラディだ。結婚こそしなかったが、事実婚として、ふたりの間には二子がいる。ファン公認のおしどりカップルとして知られていただけに、破局報道にショックを受けるファンも多かった。

ちなみに長女であるリリー=ローズ・デップとは、『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』でパラディと共に親子共演を果たしたことからも、別れたあとも関係性は良好であることがわかる。

愛娘リリー=ローズ・デップ主演『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』(2016年)

そして、冒頭で触れた“泥沼裁判”の相手であるアンバー・ハードとの出会いは、『ラム・ダイアリー』(2011)。同作で共演後、2015年に結婚したふたりだったが、わずか1年後に離婚申請が行われ、そして誰もが知る裁判劇へと発展。交際から結婚生活の期間よりも、訴訟期間のほうが長くなってしまった。

この裁判において大きな注目を集めたのは、アンバー側の主張からデップのDV疑惑が浮上したことだ。2020年イギリスのタブロイド紙『ザ・サン』は、アンバー・ハードの寄稿文を掲載し「ワイフ・ビーター(妻を殴る人)」と記載。これを受けたデップは同紙を相手に名誉棄損訴訟を行ったものの、「おおむね事実」としてデップ側が敗訴している。

こうした一連の出来事により、デップは俳優としてのイメージを悪化させただけでなく、多くのチャンスを失った。冒頭に触れた『L.A.コールドケース』をはじめ、去年日本公開された『グッバイ、リチャード!』などの公開延期、また水俣病をテーマとした『MINAMATA-ミナマタ-』(2021)も配給が途中から離れてしまい、アメリカでは公開すら危ぶまれたほど。『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)では、前2作で演じたゲラート・グリンデルバルド役の降板を余儀なくされた。

デップのDV疑惑についてはさまざまな見解が示されたが、元パートナーや元婚約者、共演者など彼をよく知る者たちからは「暴力的な人物ではない」といった擁護の声も上がっており、結果的に裁判はデップの逆転勝訴で幕を下ろした。


来年で還暦。今後の俳優活動でイメージ挽回なるか?

しかしいくら裁判で勝訴したといっても、一度ついたネガティブなイメージの回復は簡単なことではない。俳優がイメージを取り戻すためには、俳優をひたむきにつづけるしかないのだろう。

(c)2018 Good Films Enterprises, LLC.

そんなデップも、来年の6月で還暦に突入する。現在『トップガン マーヴェリック』で再び脚光を浴びるトム・クルーズも先月還暦を迎えたばかり。今年で70歳を迎えたリーアム・ニーソンは、毎年2、3本のアクション映画に出演しつづけている。

かなり回り道をしてしまったデップだが、近い将来アメリカでも大作に復帰できる日が来ると信じているファンも多いのではないだろうか。

作品情報

『L.A.コールドケース』

(c)2018 Good Films Enterprises, LLC.

8月5日(金)公開

監督:ブラッド・ファーマン
原作:ランドール・サリヴァン
脚本:クリスチャン・コントレラス
出演:ジョニー・デップ、フォレスト・ウィテカー、トビー・ハス、デイトン・キャリー、シェー・ウィガム、ニール・ブラウン・Jr.、シャミア・アンダーソン、マイケル・パレ、ザンダー・バークレーほか
配給:キノフィルムズ
(c)2018 Good Films Enterprises, LLC.

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2021年に観た映画は1100本以上。映画とインドに毒された映画評論家(ライター)、ヒンディー・ミュージック評論家。2021年9月に初著書『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房)を出版。Spotifyなどで映画紹介ラジオ『バフィーの映画な話』、映画紹介サイト『Buffys Movie & M..

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