お笑い芸人として活動しながら、キャバクラで働いていた経験のある、本日は晴天なり。
キャバ嬢の中では珍しく身長が173センチと高身長である彼女は、その影響で心ない言葉をかけられることがあった。その一方で、高身長を好んでくれるお客様も多かったというが「見た目が好み」と言ってくる男性に対しては、ある疑念を抱いていたという──。
高身長女子の心得
キャバクラでは店内をちょこちょこ移動するだけなら大丈夫!という考えからか、普段履いていたら確実にコケるような10センチ超えヒール……鈍器にもなり得るような形状のものを履いているキャバ嬢が多い。
そんな子たちとは対照的に私は身長が173センチあり、ヒールを履くと実質178センチくらいあったので、キャバ嬢にしてはかなり低めのヒールを履いて、できるだけ大きくならないよう気を使っていた。
「背が高い女性が好みだ」というお客様も多かったが、ソファーに座ってるお客様の横をのしのしと歩いていると威圧感を与えてしまうこともあり、身長のことをイジられたり、会話の取っかかりとして話題にされることは多かった。
現に20歳くらいのころ、面接に行ったお店では、背が高くてお客さんがビックリしちゃうから、という理由で落とされたことがある。本当に身長が原因かどうかは置いといて、そう言われたのは事実だ。
中学生のころにガリバーというあだ名をつけられたりと、物心ついたころから“大女”の称号の元に生きてはいるが、正直、自分ではあまり自覚がなく、女子会などで撮影した集合写真を見て初めて客観的に「私、ひとりだけデカいな……」と気づくことが多かった。
150センチくらいのお客様に「で、で、でっっかぁ!」と言われたときは「いや、あんたが! あんたが小さいんだろ!」と喉元まで出かかってゴクンと飲み込んだのを覚えている。失礼なことを言ったというよりも心の底から驚いてとっさに出てしまったような印象だった。相手が座っていたということもあり、まるで山の頂を見上げるような首の角度だった。その姿を見たら、自分がだいだらぼっち(巨人の妖怪)にでもなったかのように思えて、あのときのお客様のリアクションを思い浮かべては、たまに思い出し笑いをしている。(今も思い出して笑ってる)
デカ!と言われることはこのお客様に限らずよくあることだったが、特に傷ついたりはせず「背が低いほうが悪い」というマインドで接していた。
本当に背が低い人を悪だと思っているわけではない。実際、私がお付き合いしてきた人の大半は、私より10センチほど背が低かった。でも、そう考えることで怯んだり申し訳なく思う気持ちを打ち消し、強気でいられるように心がけていた。
だって「背が高くてすみません」なんて変じゃない?
俺はボケるスキルありますよと言わんばかりに「大きいね、190センチくらいある?」などと尋ねてくるお客様には「2メートル40センチだよ!」と即答していた。キャバクラでは、こんなしょーもない返しでも「君、やるじゃん!」みたいなことを言われ、一目置かれる。
だいたいの子は容姿をイジられても「え~?」とか「やだ~!」とか「やめてよ~!」で収めるなか、ボケを重ねるという、芸人としてはなんの変哲もない初歩の対応でも、“やるじゃん”の部類に入るのである。
しかし、キャバクラでいくら「やるじゃん!」と言われても、芸人のフィールドでは初歩の初歩のバカにされるレベルなので勘違いしないように注意していた。あと、数字ボケはプロでも苦戦するので素人が簡単に手を出さないでほしい。
今でも忘れられない無礼男
背が高くてショートヘアだからか「男? おねえ?」というボケも本当によく食らっていた。私は子供のころから息を吸うように男の子に間違えられてきた経験があるため、そこに対しての憤りもあまりない。
なので、こう言われたときは「2年前に適合手術をしてもう戸籍も変わってます~ッ! どんだけ~ッ!!」と返し、ほぼ100%まじめに受け止められた。笑いながらヘラヘラと尋ねてきたお客様が急に真顔になり、「え? マジなんだ」「いつから自分が女性だって気づき始めたの?」「いくらくらいかかった?」などなど、真剣に話を掘り下げられた。店のオーナーに確認しに行く人までいた。
気まずいことを聞いてしまったと青ざめるお客様のその表情が病みつきになり、よく使っていた返しだ。テンプレ化するほど頻繁に言われていたのもどうかと思うが。
キャバクラ以外の場所でも、居酒屋の女性用トイレに入ろうとして店員さんに止められたり、女性専用車両に乗っていて運転手さんに注意されたり、お笑いライブのアンケートで「性別がどっちか気になってネタが入ってこなかった」と書かれたりと、嘘のようなホントのエピソードが山ほどある。
私のことを昔からずっと知っている人は女性だという先入観があるため、女性にしか見えないという人ばかりだが、事実として、こうして女の子しか働けないキャバクラで女性の服装に身を包んでいるにもかかわらず男性だと疑われることが多々あったのだ。
一番ひどかったのは、お店のお客様ではない人に言われたひと言。
店の入っているビルには同じような夜のお店がたくさんあるので、上の階から降りてくるお客さんも多い。帰り際、お客様をエレベーター前までお見送りするのがこの店のルールだったため、自分を指名してくれたお客様と店長とヘルプのキャバ嬢とエレベーターを待っていた。
上から来たエレベーターが開いてたくさん人が乗っていたので「次のにしましょうか」と言うと、エレベーターの一番奥に乗っていた男性が私を指差して渾身の大声で「わあー! 男がチャイナドレス着てる! 気持ち悪りぃ!!」と叫んだ。その言葉を残してエレベーターはチン!と閉まった。
これは、たとえ本当に男性がチャイナドレスを着てエレベーター前に立っていても、見ず知らずの人間に言う言葉ではないと思う。
私が見送ろうとしていたお客様も顔が引きつっていた。隣に立っていた元芸人の店長すらもかける言葉がない様子で立ち尽くしていた。もちろん、ほかのキャバ嬢たちも同様の様子だった。
女性は「あんな男やめときな」と言われると、彼を理解してあげられるのは私だけなんだ!と燃え上がるらしい(知らんけど)が、男性はその逆だと聞いたことがある。そんなにかわいいと思ってなくても自分の友人などに「いいじゃん、あの娘」と言われたらよく見えてくるし、けっこう好きでも「どこがいいんだよ、あんな女」と言われたら冷めてしまうと。
その理屈でいうと、いいと思って指名していたキャバ嬢が知らない男に指を指されながらみんなの前で男に間違えられ「気持ち悪りぃ!!」と言い放たれたら、取り繕う術ナシ。
そして案の定、そのお客さんは二度と来なかった。
名前もわからない指差し無礼男がどこかでのたれ死んでくれてたらいいなと、今でもたまに思う。(のたれ死んでは言い過ぎた。不倫でもして奥さんにバレろ)
結局は見た目しか興味がないのだろうか
ボーイッシュな女性が好みだという男性もこの世には多くいる。本気で男だと思われたり、デカい!と毛嫌いされることも多かったが、捨てる神あれば拾う神あり! 高身長のショートカット好きも多く存在する。
お客様に好みだと言われた際には、「背が高い子が好きって言う人、あんまり会ったことないからうれしいなっ」と言う。するとお客様は「うんうん、そうだよね。珍しいかもね!」と言ってくるが、実際はそんなに珍しいことでもない。ガリガリ君の梨味くらいのレベルでは巡り合える。
さっきの定説とは真逆だが、ここではモテ経験が少ない女をアピールした。
そうすることによって、俺でもいけるかも!という期待値を高め、何度か店に通って口説いたら落とせるかも!と思わせるためである。
もちろん、指名客が少なかった私が考えた戦略なのでお察しとは思うが、そんなにうまくいくわけでもないので、参考にはしないでほしい。むしろ、私が先陣を切ってイマイチな手法だと証明したので、このパターンはダメなのか……という方向で参考にしてほしい。
捨てる神あれば拾う神ありとはいっても、見た目が好みと言われたところで、手放しに喜べないと個人的には思っている。
それは以前、プライベートで仲よくなった男の子にも、ボーイッシュな子が好きだと猛アピールされたことがあり、その際「性格はどんな子が好きなの? 性格も男っぽいほうがいいの? それとも女の子っぽい子がいいの?」と問うと「性格はなんでもいい!! ボーイッシュであれば!!」と言われ、激萎えしたことがある。
その当時は、化粧っ気もなく体格もがっしりしていたので、こんな自分のありのままを受け止めてくれる男の子が現れたと浮かれて損した。
結局それは、美人がタイプだと言っている人となんら変わらない。ぽっちゃりした人が好みだという人も、ちゃんと見た目で人を選んでいる。外見に捉われずに選んでいるのではなく、ボーイッシュという入れ物に寄ってくる男がいることを学んだのだ。
ちなみにその男の子の好みの有名人は現役時代のライオネス飛鳥さんだった。
髪が短過ぎて、ウィッグを被ってキャバ嬢をしていた時期も、髪が長いだけで通常よりチヤホヤされた。髪型だけで相手の対応は容易に変わる。キャバクラでもプライベートでも関係なく、私が出会った男性たちは浅はかで単純だ。中身を見てほしいだなんて、ないものねだりなのかもしれない。
10年ほど前、人生で一度だけ髪を伸ばしたことがある。その時期、久しぶりに会った先輩に「なんだか前よりも男っぽくなったな」と言われ、心外過ぎて驚き「そんなはずないですよ! だってこんなに髪だって長くなったのに!」と反論すると、「おまえさぁ、髪が長ければ女だと思ってるところが男なんだよ」と言われた。
この言葉にはなんの反論もできなかった。
髪が長い=女性という考えは、男っぽいとか言う以前に、あまりにも古臭く猛反省した。昔からロン毛の男性だっているのにね。(ロン毛って言葉も古いね)
私自身も、私が出会ってきた男性たちと同じような浅はかで単純な思考があったのだ。気づいたのが10年前でよかった。ありがとう、先輩。
そう考えると「君のこと、全然タイプじゃないけど好きだよ」って言われるのが、一番うれしいのかもしれない。いや……それはそれで嫌だな。
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