Aile The Shota『IMA』楽曲レビュー。楽曲のカラーを形作っている“主人公になる声”(imdkm)

2022.7.15
Aile The Shota『IMA』楽曲レビュー。楽曲のカラーを形作っている“主人公になる声”(imdkm)

文=imdkm 編集=森田真規


SKY-HI(スカイハイ)主宰のレーベル/マネージメント「BMSG」から、今年1月に『AURORA TOKIO』でデビューを果たしたAile The Shota(アイルザショウタ)。彼の2nd EP『IMA』が7月6日にリリースされた。

ここでは『IMA』に収録されている4曲について、『リズムから考えるJ-POP史』の著者であり批評家のimdkm氏が分析した楽曲レビューをお届けする。


Aile The Shotaのボーカルに引き込まれる『IMA』

SKY-HIの主宰するレーベル/マネージメント「BMSG」に所属するシンガー、Aile The Shota。BE:FIRSTを輩出したオーディション『THE FIRST』で頭角を現したのち、BMSGにソロとして所属。2022年1月にシングル『AURORA TOKIO』でデビューし、つづいて同じく1月末にデビューEP『AINNOCENCE』をリリースしたばかりの新鋭だ。

先頃リリースされた2nd EP『IMA』は、そこから半年足らずでの新作となる。1曲ごとに異なるサウンドでさまざまな世界を見せながら、彼のボーカルに引き込まれる作品である。

たとえば印象的なのは1曲目。ラッパーのMa-Nuをフィーチャーした、スムースできらびやかな4つ打ちのサウンドが響く「so so good」のボーカルに耳を傾けてみる。平歌のストレートなメロディに対して、微妙なニュアンスを忍ばせたサビ後半のフレーズを軽やかに歌いこなす。

<胸躍らされてたい>の末尾のポルタメントもそうだし、さらにラストの<逃せない>で少し宙吊りにするひねたメロディライン(つづくスキャットでスッとオチる)。フレーズとしてはぐっと耳を惹きつけるものだけれど、ボーカル自体はふっとビートの中に溶けて消えるような、そんなバランスがよい。

Aile The Shota / so so good feat. Ma-Nu (Prod. Mori Zentaro) -Official Audio-

あるいはほかにも、ゆらゆらと漂うようなビートにローファイなピアノのメロディアスなフレーズが絡み合う「夢宙」では、字余り気味の言葉を巧みに操って、グルービーにビートへ刻み込んでゆく。

表題曲「IMA」は80’s調のアップテンポなシンセポップだが、エイトビートに乗る歌メロの緩急と起伏、そして細かいハモリが作り出す疾走感と浮遊感によって、そのまま空に駆け上がっていくような感覚に包まれる一曲だ。いずれも、メロディの感覚もリズムの表現も心地よい。

Aile The Shota / IMA (Prod. KNOTT) -Music Video-

デビューからの確かな前進を聴かせる作品

しかし興味深いのは、楽曲ごとの声のトーンの使い分けだ。前作では一曲の中で地声とファルセットを行き来するようなスタイルもあったけれど、今作ではむしろ主人公になる声の焦点が定まっている。前述の「so so good」も、「IMA」も、春野をフィーチャリングした「常懐」も、ハイトーンなボーカルが基調となって、楽曲のカラーを形作っている。

Aile The Shota / 常懐 feat. 春野 (Prod. maeshima soshi) -Lyric Video-

ということは、実に4曲中3曲がそんな調子なのだが、だからといって単調ではまったくない。跳ねるようなビートに呼応して弾んだり、オートチューンのぎらつきをうまく活かして彩りを添えたり、あるいはビートと共に鋭く駆け抜けていったり、そのニュアンスはバラエティに富んでいる。

「夢宙」は少し色合いが違うがこちらも重心高めの声で、あえて線の細い、息遣いの伝わるボーカルを重ねることで、メロディと密やかな語りの間をゆらめく幽玄なサウンドを作り出しているのがおもしろい。歌声の魅力だけではなくて、楽曲をどう響かせるかにトライしているような印象だ。こうしたささやかな表現の綾に頼もしさを覚える。

Aile The Shota / 夢宙 (Prod. illmore) -Official Audio-

まだ数は多くないにせよ、これまでのディスコグラフィ(BMSGからのデビュー前も含めて)を辿った上で『IMA』を聴くと、この作品はけっして派手ではないが着実なステップになっているように思える。

いや、この作品に限ったことではない。前作もそうだ。シンガーとしての地力をお披露目した等身大の作品が『AINNOCENCE』だとしたら、今作はそこからさりげなくも確かな前進を聴かせる作品とでもいおうか。それはAile The Shotaというシンガーのみならず、SKY-HI率いるBMSGがどのように彼をサポートしていこうとしているか、というビジョンにも関わりそうだ。

とはいえ、始まったばかりのキャリアを深読みしていたずらに未来を接ぎ木するよりは、ともあれリリースされたこの作品を楽しむことが先決だろう。気を揉まずとも、近い将来にその成果はやってくるだろうから。

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(イミヂクモ)ライター、批評家。山形県在住。単著に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019)。

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