バカンスが招く意外な“青春のあと始末”『海上48hours ─悪夢のバカンス─』

2022.9.18
『海上48hours ―悪夢のバカンス―』

2022年7月22日より全国公開された映画『海上48hours ─悪夢のバカンス─』。制作は『海底47m』シリーズの制作陣。海底から海上へ舞台を移し、さらなる海の恐怖を描くサバイバルスリラーだ。

夏、海、若者とバカンスときたらサメ。今回は2022年の激暑を彩ったサメ映画をレビューする。

※この記事は『クイック・ジャパン』vol.161に掲載のコラムを再構成し転載したものです。


サメ映画に欠かせないバカンスの導入

(C)Vitality Jetski Limited 2021

2カ月に1度、こうして映画コラム的なものを(本誌の特集テーマに合わせて)書かせてもらっているが、新たなお題は「休み」とのこと。

とくればこのタイミングで選ぶ作品は一択、これしかない。『海上48hours ─悪夢のバカンス─』。堂々たるサメ映画である。

そう! パニックムービーの変種たるサメ映画にバカンスは付き物で、浮かれて調子こいてる人々(たいてい若者)を懲らしめるごとく、サメは彼ら彼女らを襲い、食い散らかす。で、本作の犠牲者は、アメリカのカンザス州からやってきた大学生。男女5人がメキシコのビーチで最後の春休みを迎え、はっちゃけまくっている。まあ、スプリング・ブレイクってやつですな。

予告編では登場人物のキャラを、ざっくりとこう紹介する。親友同士の女性ふたりは、「真面目な優等生」と「マイルドビッチ」。優等生のほうには「陽キャな彼氏」がいて、残りの野郎どもは「体育会マッチョ」と「お調子者」だと。確かにそんな感じ。

『海上48hours ―悪夢のバカンス―』
(C)Vitality Jetski Limited 2021

ハメを外すことを許すバカンスは、時に人を狂わせ、隠されていた本性を暴く。5人は浴びるようにテキーラを飲み、桟橋に停泊していた2台の水上バイクを盗んでヒャッホーと沖へ出る。あとの展開はもう、ほとんど予想がつくだろうから予告編で明かしている。すなわち、チキンレースに興じて衝突事故を起こし、「お調子者」が重症に。さらに水上バイクは1台だけ大破を免れたものの、エンジンが故障して動かなくなり、唯一「マイルドビッチ」が持っていたスマホの電波も圏外で届かず!

無論、周囲には凶暴なホオジロザメが生息しているわけだが、ここでそのスマホの画像を通して優等生は、彼氏と「マイルドビッチ」が浮気していたことを知る。眼の前のサメもヤバいけど人間関係もヤバし。このWパンチが後々まで尾を引く仕掛けがいい。

『海上48hours ―悪夢のバカンス―』
(C)Vitality Jetski Limited 2021

サメ映画もいろいろだ。メガ化したり幽霊になったり、多頭モノや生体兵器系となんでもあり。現れる場所も陸上、はたまた巨大トルネードに乗って空から降って襲ってきたりと、バカげた設定のアトラクション・ムービーが量産されている。昨年は、そうした酔狂で奥深い世界を探った書籍『サメ映画大全』(左右社)も刊行され、結構売れた。まるで店の数だけある“創作料理”。創作サメ映画に挑む気分は、開拓精神にあふれる『孤独のグルメ』の「井之頭五郎」だ。事実、サメ対決にひと味加えた、バカンスが招く意外な“青春のあと始末”を見届けて、筆者は「こういうのでいいんだよこういうので」と心の中で呟き、しばし五郎モードに浸ったのであった。


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  • 『海上48hours ―悪夢のバカンス―』

    『海上48hours ―悪夢のバカンス―』

    監督:ジェームズ・ナン
    出演:ホリー・アール、ジャック・トゥルーマンほか
    配給:ギャガ
    7月22日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー
    (C)Vitality Jetski Limited 2021

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Written by

轟 夕起夫

(とどろき・ゆきお)1963年東京都生まれ。映画評論家。近著(編著・執筆協力)に、『好き勝手 夏木陽介 スタアの時代』(講談社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督 塚本晋也』(ぱる出版)など。読む映画館 todorokiyukio...

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