「同期と飲んでたら売れない!」トガった後輩はただの変人だった<納言・薄幸の酔いどれコラム#13>


若手芸人にとって、お笑いの賞レースは人生を左右する大きいイベントだ。

『ツギクル芸人グランプリ2019』では、納言は最弱ファイナリストのレッテルが貼られたようだが、その3年後に太田プロの後輩であるストレッチーズは見事優勝!

今月は、賞レースとストレッチーズの裏話が盛りだくさんです。


納言は最弱ファイナリスト?

『ツギクル芸人グランプリ』という大会がある。
名前の通り、次に必ず売れる、必ず来るであろう芸人を決める若手の大会。今年で3回目。

私達は、第一回2019年に出場している。
個人的に大変思い入れの深い大会だ。

『ツギクル芸人グランプリ』は、1stステージから勝ち上がった3組がファイナルステージに進出し、そこで最も多く票を集めた芸人が優勝となる。
私達は第一回のツギクルで、ファイナルステージまで進出する事が出来た。

ただ、1stステージはボロボロに敗退している。
1stステージ終了後、審査員からネタの感想を貰う時間がある。
よく覚えている。

“納言は治安が悪い。僕はあんまり発言したくない”

ざっくりまとめると、審査員全員こんな感じの感想だった。

第一線で活躍されている審査員の方ばかり。
流石だ。
悪口しか言わないネタをする私達を褒めようものなら、自分達に被害が及ぶ可能性がある。
ある種の危機管理能力なのだろう。
すっごい、私達に絡みたく無い様だった。

得票も0。

全員かが屋に入れていた。

見事なまでに敗退した私は、岡野陽一さんと歯溶けるまで喫煙所で煙草を吸って、大会の終わりを待っていた。
1stステージ全組が終わった後、ファイナルステージ進出組以外がステージ裏に並ばされた。
第一回目は1stステージで敗退した芸人の中で、審査員が決めた1組だけファイナルステージに進出出来る、ワイルドカードという枠があった。
そのワイルドカードに選ばれた芸人を発表する為だ。

全員残るひと枠に望みを託し、お祈りのポーズをしていた。
私も、皆のマネをしてみた。
審査員から発言を控えられる様な奴が、そんな訳が無いから、格好だけマネしてみた。

「ワイルドカードは、、、」

MCのこじるりさんが、最高な間をとって進出者を発表する。

「、、納言です!」

納言なのかよ。

正直な感想

“やっべー”

だった。

プロ意識が欠落しているとしか言えないのだが、完全に諦めていたから、次のネタ合わせを一回もしていなかった。
ほんっとうに岡野陽一さんと煙草を吸っていただけだった。
たまたまその時隣に立っていた岡野陽一さんが“やったな!”という意味で肩をポンと押してくれた。

ニコッと笑ったその笑顔。
確か歯、6本溶けていた。

ワイルドカードに選ばれた理由は
「納言を応援していると思われたくない。無記名のワイルドカードなら自分が選んだ事がバレないから」
審査員全員、そんな感じだった。

どうにかこうにか、急いでネタ合わせをして、無事ファイナルステージを終える。

最終得点。
また、0票だった。

1stステージ:0票
ファイナルステージ:0票
総獲得票数:0票

最弱ファイナリストの誕生だ。

結果、誰にも応援されず辱めを受けただけに終わった私達の『ツギクル芸人グランプリ』だったが、この後すぐに審査員をしてくれたプロデューサーさんから仕事を貰ったり、他の番組にも沢山出る事が出来た。

心から感謝している。

ちなみに第二回からは、このワイルドカードというシステムは排除されていた。
最弱ファイナリストのせいでは無い事を祈るばかりだ。

“笑い方が下品な奴”と“変人”のコンビが優勝


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薄幸(納言)

(すすき・みゆき)お笑い芸人。1993年生まれ、千葉県出身。安部紀克との男女コンビ「納言」のメンバー。「三茶の女は返事が小せえな」「渋谷はもうバイオハザードみてえな街だな」など“街ディス”ネタが人気のコンビ。バラエティでは薄幸のヘビースモーカーっぷりや大酒飲みのやさぐれキャラクターにも注目が集まって..

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