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ベタ中のベタを目指すド直球の番組
そんな鈴村がこの春からスタートさせた『ラジベース』は、語弊を気にせず言うと、とにかく“オジサン臭い”。何せ番組の立ち上げから中年らしい熱量を漂わせている。
鈴村とタッグを組むのは同世代の構成作家・伊福部崇。鈴村が初めてラジオに出演したのは、WEBラジオ黎明期にBSQRで放送していた『榎本温子のらじお・む~』だが、このとき作家を務めていたのが伊福部で、強い縁を感じずにはいられない。
前述した『ユニゾン!』でもふたりはタッグを組んでいる。この番組のテーマは“ラジオ・オブ・ラジオ”。『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)『ナインティナインのANN』という人気番組の真裏で、ド直球の深夜ラジオを目指した。大喜利感満載のネタコーナーもあれば、まじめな人生相談もあり、リスナー参加企画もある。プレゼント企画では、餃子焼き器が故障してピンチを迎えた苦しむ中華料理店に餃子焼き器を贈呈。ハガキ職人には独自のコーナーを担当させ、そこから実際に現役の構成作家を生んでいる。
番組終了から半年後に行われた対談で、鈴村は「もし自分で営業をかけてひとりしゃべりの枠が取れたり、もしくはオファーが来て『座組を決めていいですよ』と言われたら、伊福部さんを呼びます」と語っていた。とはいえ、ラジオ番組の最終回でよく語られる「いつか同じメンバーで番組をやりたい」という発言は、得てして実現しないもの。
これは“ラジオあるある”なのだが、鈴村はこの言葉を忘れておらず、『ラジベース』の企画が立ち上がった際には作家に伊福部を指名。「文化放送で新番組をやるなら伊福部とやらせてほしい」と強くアピールしたらしい。あまりこの言葉は使いたくないのだが、そんなふたりのつながりはどこまでも“エモい”。
『ユニゾン!』の流れを継ぐ『ラジベース』は中身もオッサン臭い。どうしても既存の深夜ラジオや芸人ラジオは「過去とは違うもの」を目指すため、良くも悪くもひねった内容になりがちだ。しかし、『ラジベース』のテーマは「ラジオの基本に立ち返るラジオラジオしたラジオ」。以前と変わらずベタ中のベタを目指すド直球の番組だ。
まじめな人生相談も、芸人ラジオ顔負けのネタコーナーも、ちょっとした下ネタも、スタッフいじりも、リスナーを巻き込んだ企画も健在。コーナーによっての温度差があり過ぎて、“風邪を引く”と称されるほどだ。
温度差という部分でいえば、『星野源のANN』を想像してもらうとわかりやすいかもしれない。雰囲気は古きよき深夜ラジオ、古きよき22時台のAM夜ワイド。当時を知るリスナーは懐かしさを覚えてしまうけれど、そんな歴史を知らない若いリスナーは逆に新鮮で真新しく感じるだろう。鈴村は密かに地上波の2時間放送を狙っているらしい。
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