映画『ザ・ビートルズ:Get Back』は傑作である。世界遺産にすべき“リアル人間交差点”

2022.4.10
『ザ・ビートルズ:Get Back』

『クイック・ジャパン』本誌が2022年3月発売号よりリニューアルされ、それに合わせて映画レビューにも変化が。第2特集のテーマ「みんなの引き継ぎ」とリンクさせて紹介することになったのは、配信中のドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Get Back』。

本稿では、筆者がそのテーマである「引き継ぎ」を意識しながら、今また熱視線を浴びる世界的ロックバンドへの思いを綴っている。

※この記事は『クイック・ジャパン』vol.159に掲載のコラムを再構成し転載したものです。


オールタイム級の面白さ

『ザ・ビートルズ:Get Back』
(C)2021 Apple Corps Ltd. All Rights Reserved.

「QJ(クイック・ジャパン)」がリニューアルされるのは、何度目だろうか。これからは当コラムコーナーも特集とシンクロさせてゆくそうで、今号の第2特集のテーマはリニューアルにちなんで「引き継ぎ」とのこと。

思い起こせば、ボクがリニューアルを体験するのは3回目である。本誌に初参加したのはたしか、『時効警察DVD-BOX』&『時効警察オフィシャル本』発売記念特集のあった2006年5月の「Vol.66」だった気がする。そのオフィシャル本に関わった流れで書かせてもらうようになり、今日へと至るわけだ。

あれからずいぶん月日が経ったが、2022年、ボクは(一時、大病をして死にかけたものの)まだこうしてQJにお世話になっており、『時効警察』のメイン演出担当だった三木聡は映画『大怪獣のあとしまつ』で確信犯的に巷に大波乱を招き、主演のオダギリジョーは変わらず三木組の“顔”を堅持しつつ、絶妙なバランス感覚でNHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』でも良き味を。

三者三様、わが道を邁進中である(しかしまさか、三木聡の作風があんなにも世の中に浸透していないことにはいささかビックリしたけれど)。

ところで三木監督が、フェイクドキュメンタリー的に大怪獣を出したのは“コメディ界のビートルズ”=イギリスの天才コメディユニット、モンティ・パイソンの影響大なのだが、もはやそんなことを言っても通じない時代みたいで……と、ここで話は唐突にスライドする。

昨年11月末からディズニープラスにて独占配信、ピーター・ジャクソン監督によって編まれた約8時間のドキュメンタリー作品『ザ・ビートルズ:Get Back』について。ここ数カ月、いや、この数年の中で、もっと言うならオールタイムベスト級の面白さであった。

1969年1月、総じて22日間かけて行われたセッションと、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ──メンバー4人の赤裸々なやり取り、さらにはビートルズという稀有なバンドに関わった者たちの“リアル人間交差点”が生々しく映し出されている。

クライマックスの胸熱な「ルーフトップ・コンサート」の模様も最高だが、時系列通り順番に、1日ごと日めくりでそこへと至るまでの心の変遷が目にできるのがエクセレント! しかもピーター・ジャクソンは、評判の悪かった映画『レット・イット・ビー』(1970年)と膨大な素材を残した監督マイケル・リンゼイ=ホッグの失地を回復、継承と発展を併せてやってのけてみせた。

『ザ・ビートルズ:Get Back』
(C)1969 Paul McCartney. Photo by Linda McCartney.

さて、ボク的な「引き継ぎ」という意味では、幼いころによくビートルズを聴かせていた息子ふたり(今年、大学3年と2年生)に、この世界遺産と呼ぶべき作品の存在を伝えた。観るも観ないも彼ら次第だが“自分の代”の役目はこれで果たしたと思う。あとはもう、若いモンに任せたぜ!

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Written by

轟 夕起夫

(とどろき・ゆきお)1963年東京都生まれ。映画評論家。近著(編著・執筆協力)に、『好き勝手 夏木陽介 スタアの時代』(講談社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督 塚本晋也』(ぱる出版)など。読む映画館 todorokiyukio...