一挙手一投足に想いを宿らせ、主演作『近況』で好演を見せた川尻蓮【JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』レビュー】

2022年3月4日にデビュー2周年を迎えた、11人組のグローバルボーイズグループ「JO1(ジェイオーワン)」。あだち充の同名短編集を原作に、彼らがそれぞれ1話ずつドラマ初主演を務めた『ショート・プログラム』が3月1日よりAmazon Prime Videoにて配信されている。
QJWebでは、このドラマの概要と見どころを記したレビューを1話ずつ掲載していく。第4回は、川尻蓮が主演を務めた『近況』を紹介する。
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すべてを完璧にこなす“ミスターパーフェクト”
川尻蓮といえば、サバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』で豆原一成との首位争いを繰り広げた末、デビューを勝ち取った人物。オーディション参加前は著名アーティストのバックダンサーやダンス講師として活動しており、現在はグループ内でパフォーマンスリーダー(ダンスリーダー)を務めている。
華々しい経歴を持っていても、いつだって謙虚で穏やかなのが川尻蓮。どんなときでも背筋を正し、誰よりも深くお辞儀をする。けっしていばらずでしゃばらず、空気を読んでスマートな対応ができるのも彼の強さだ。関節の可動域が広いダンスは繊細で、ダイナミックさもエレガントさも柔軟に表現。JO1の楽曲「My Friends」では振り付けを担当し、コレオグラファーとしての才能も発揮している。
ダンサーとして一流でありながら歌の安定感も申し分なく、サビの歌い出しを任されることも多い。優しく澄んだ歌声は彼の人柄をそのまま宿したかのよう。すべてを完璧にこなすオールラウンダーでありながら、常に上を目指しつづけるアーティストこそ川尻なのだ。

大人にこそ刺さる、甘くてほろ苦い一作
そんな川尻が演じるのは、スタイリスト見習いの杉井和彦。高校時代から裁縫や編み物が得意で、“好きを仕事にした人”である。杉井は高校時代の同窓会に参加し、友人の東年男や高沢亜沙子と再会。久しぶりに顔を合わせたことにより、懐かしい思い出や言えなかった本音の数々が3人の心をかき乱す。時が経ったからこそ言えること、時が経ったからこそ言えないこと。青春の1ページを大人になって振り返る、甘くてほろ苦い一作だ。
ヒロインの亜沙子を演じた貴島明日香は、モデルやCM、お天気キャスターも務めるマルチタレント。近年ではドラマ『社内マリッジハニー』(MBS)などにも出演し、女優としても活躍している。監督・脚本は劇団ナナカマドを主宰する上村奈帆が務めた。

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一挙手一投足に宿らせた想い
言えなかった思いを抱えたまま大人になった人にこそ、『近況』は強く響くはず。「実は好きだった」「実は憧れていた」と心の奥にひっそりとしまい込み、自分の中で温めていた気持ちが誰しもひとつはあるだろう。そんな甘い記憶に寄り添い、不完全燃焼な思いを救済してくれる物語が『近況』なのだ。
『ショート・プログラム』の中で、『近況』を川尻に当てたのも適任だったように思う。誰にバカにされても好きなことをひたすら突き詰め、自分のことは何を言われても怒らない。だけど、大切な人のものはなんとしても守る。優しく穏やかな人柄と芯の強さを併せ持った主人公の杉井は、川尻と重なる部分も多いのだ。
穏やかで自分の想いを隠してしまうキャラクターゆえに、殴り合いのシーンを除いて杉井が感情的になることはない。静かに、そして繊細に喜怒哀楽を香らせねばならない役を川尻は好演していた。ダンスで身につけたメリハリを演技に転用し、杉井の想いを一挙手一投足に乗せているかのようだった。
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