「元・社長、現・地下芸人」の神宮寺しし丸。46歳。類を見ない肩書を持つ彼が、学校や職場などでさまざまな悩みを抱え、生きづらさを感じている皆さんが少しでも生きやすくなるような「生き方説明書」なるものを綴る連載コラム。
今月は、芸人の間だけに留まらず、日本全体のブームとなっている映画『浅草キッド』にちなみ、後輩芸人・しし丸が見た劇団ひとり、神奈月、松村邦洋の意外な一面、カッコいい言葉を紹介します。
「芸人カッコいい話」
皆さま、(少し遅くなりましたが)新年明けましておめでとうございます!
新年一発目の今回は、映画『浅草キッド』の大ヒットを記念しまして、芸人の「カッコいい話」を書いてみたいと思います。
『浅草キッド』は『劇団ひとり単独ライブ』でもある|劇団ひとり
ある日の稽古場。僕がネタの練習で訪れると、稽古場のスケジュール帳に「劇団ひとり」の文字が。僕が来る直前までここで稽古をしていたようです。
「あっ、さっきまでひとりさんいたのか。単独ライブもうすぐだもんなぁ」と思いながら何気なくゴミ箱を見ると、そこには大量のブラックブラックガムの紙クズが。
「なんだこれ?」と思い、もう一度スケジュール帳を見ると、ひとりさんは昨日の深夜から稽古場を押さえていました。
「稽古場に泊まり込んでたのかぁ。……待てよ!?」。時計を見るとお昼の12時過ぎ。急いで稽古場のテレビをつけます。生放送の『笑っていいとも!』にひとりさんは出ていました。「寝ないで『いいとも』行ったんだぁ……」。スケジュール帳にはその日の夜も「劇団ひとり」の文字が書いてありました。
『笑っていいとも!』のレギュラーでもあり、既に売れっ子芸人であるはずのひとりさんがなぜ単独ライブをやり続けるのか? その理由を訊いたことがありました。
「芸人である為の免許更新みたいなもんかなぁ」
単独ライブを辞めたら芸人としての免許が失効してしまう。“タレント”ではなく“芸人”であり続ける為に必要不可欠なもの。ひとりさんにとってそれが単独ライブなのです。
ひとりさんの単独ライブに懸ける思いは尋常ではないです。単独ライブのお手伝いで何度もその姿を間近で見て来ました。
本番前に僕を見つけると「おい、しし丸。今からしょんべんするから隣で見ててくれない?」と、ふざけます。しかし、僕は知っています。会場に来る途中、不安や恐怖に駆られて「ここで車に轢かれたら、単独ライブ中止にできるなぁ」と衝動的に道路に飛び込もうとする気持ちを必死に抑えて会場入りしていることを。
常軌を逸した精神状態で毎回単独ライブは開催されます。そして、常軌を逸した笑いを生み出します。『劇団ひとり単独ライブ』はあれだけ笑ったのに、観終わった後、何故か泣きそうになります。圧倒的な人間力にねじ伏せられて、自分が何者でもないことを思い知らされるのです。
2011年を最後に開催されなくなった『劇団ひとり単独ライブ』。
「もう単独ライブはやらないんですか?」と訊くと、ひとりさんは「やってんじゃん。映画がそれだよ」と。自分の創った物を発表する“究極の舞台”が今は「映画」だということでした。
『浅草キッド』は「映画」であると同時に、『劇団ひとり単独ライブ』でもあるのです。そして、“芸人免許”は今も更新され続けているのです。
~劇団ひとりのカッコいい言葉~
「売れない芸人なんてお前くらいしか思いつかなくてよ」
今から約8年前。劇団ひとりさん初監督の映画『青天の霹靂』に出させて頂きました。僕が頂いた役は「浅草の売れない芸人」役。ひとりさんにお礼を言いに行った時に言われた言葉。
「お前、本当に抜いてたろ?」
現在Netflixで公開中の映画『浅草キッド』(ビートたけし原作、劇団ひとり監督)に出させて頂きました。僕が頂いた役は「ストリップ劇場のトイレで抜こうとする男」役。その迫真の演技にひとりさんから言われた言葉。
※本当には抜いておりません
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