佐藤二朗と片山慎三監督が描き出す、ハンマーカンマーな映画『さがす』

2022.1.21
映画『さがす』

公開中の映画『さがす』は、今後の映画界を担う新たな才能・片山慎三監督が主演に佐藤二朗を迎え、観る者の価値観を覆し、心の奥底に潜むヤバい“風景”をあぶり出していく作品。

次々と襲いかかる驚天動地な展開によって、心を打たれた筆者がこの映画に受けた衝撃をレビューする。


探さなければ、見つけなかった

アンバランデンデレンドンドロンハンマーカンマー!

──というわけで。

突然なにを口走ってんだとお思いでしょうが、片山慎三監督の新作『さがす』を観たらこうなってしまった次第。

とはいえ“ザコシ”、ハリウッドザコシショウとの関連はひとつもない。ましてやバラエティ色濃厚な作品とも違う。が、しかし。これでいいと思う。お行儀よく意味に収まった言葉では感想を表せないのである。

胸の奥がハンマーカンマー状態となり、無闇に叫びたい……そんな激しい衝動の結果なのだ。

映画『さがす』
(C)2022『さがす』製作委員会

片山監督が自費で完成させた『岬の兄妹』(18)もまた、足に障害を抱える兄が生活苦から、自閉症の妹に売春をさせる、という「字面」とは遠く離れた場所へと観客を連れ去るハンマーカンマーな映画だった。

この『さがす』は長編2作目にして商業デビュー作。自ら書いたオリジナル脚本で勝負する姿勢は同じである。

大阪の下町で細々と暮らす原田智(佐藤二朗)は中学生の娘・楓(伊藤蒼)と暮らしている。智はふと、「懸賞金付きの指名手配中の連続殺人犯を目撃した」と話した翌日、どこかに消えてしまう。

ひとり残された楓は、失踪した父をさがしはじめ、手掛かりを求めていき、日雇い現場に立つ。だがそこにいたのは、父親の名を騙った例の殺人犯(清水尋也)で、ここから映画は多層的な、「さがす」をめぐる物語へと突入していく!

映画『さがす』
(C)2022『さがす』製作委員会

片山監督がかつて、助監督として日本ロケをしたオムニバス作『TOKYO!』(08)の一篇「シェイキング東京」や『母なる証明』(09)にて、あのポン・ジュノ組の一員だったことはご存じだろう。ポン・ジュノは『岬の兄妹』にこんなコメントを寄せた。

「慎三、君はなんてイカれた映画監督だ! 力強く美しい、ここまで大胆な作品が生まれるとは……衝撃を受けたよ。多くの論争を巻き起こす見事な傑作だ。おめでとう」

このコメントは『さがす』にも当てはまる。あらゆるジャンルを横断していく本作は、ノワールなスリラーにして胸熱な父娘の映画でもあり、終盤にはハードボイルドで感動的な卓球シーン(!)が待っている。

随所に用意されたハンマーカンマーな、超弩級展開についてこれ以上語るのはやめておくが、一点だけ。冒頭は佐藤二朗がハンマーを振り回すショットなのだ。

ハンマーといえば韓国映画の傑作で、チェ・ミンシクやハ・ジョンウがそれを手にする『オールド・ボーイ』(03)、『チェイサー』(08)を思い出す。

『さがす』は、それらにも肉薄する衝撃作と言っておこう。

※この記事は『クイック・ジャパン』vol.158に掲載のコラムを転載したものです。

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轟 夕起夫

(とどろき・ゆきお)1963年東京都生まれ。映画評論家。近著(編著・執筆協力)に、『好き勝手 夏木陽介 スタアの時代』(講談社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督 塚本晋也』(ぱる出版)など。読む映画館 todorokiyukio...