0.1%を信じて闘う男たちの生き様
まずひとり目の志願者・山添の希望する金額は40万円。自身が考案したボートレースの完全必勝法“山添式メソッド・パーフェクトボートレース舟券購入資金”を使えば、「100%の確率で40万を100万に増やすことができる」という。疑問を持った松尾が「ここでの話に嘘などあれば不成立になりますが大丈夫ですか?」と尋ねるもただただまっすぐ松尾を見つめ「安心してください」のひと言。自分の考えに自信のない人間ほど口数が多くなるというが、山添は違う。無駄な言葉は一切発することはない。ブレイク初期のとにかく明るい安村をも超える「安心してください」だった。
対してふたり目の志願者もぐらの希望する金額は103万円。収録翌日に行われる競馬レース「アイビスサマーダッシュ」にて、“ライオンボス”という馬が絶対に来る自信があり、その単勝一点買いに100万円を賭けるという。半信半疑の長田社長に対しもぐらは、過去の戦績やコース適正などを綿密に調べ上げたデータを駆使して納得させていく。さらに、過去の勝負で不運に見舞われて勝ちをことごとく逃している状況を払拭するため、出資額の3万円を“メタモルフォーゼス”というパワーストーン購入費に充てたいという。「運はアップしなくても並に戻してくれればいい」と豪語するもぐらの目には光が宿っていた。
そう、ふたりの共通するのは「精神状態がギャンブルの結果に大きく左右する」と信じてやまないこと。山添は「自分のお金だと恐怖心に飲み込まれてしまうが、他人のお金だと冷静で思い切った判断ができる」と己を鼓舞し、もぐらは厄災を祓うためメタモルフォーゼによって自信を確信に変えようとした。何かを極めた人間にはオーラが宿るというが、山添ももぐらも確実に「クズのオーラ」を纏っていた。ある種の覇気とでもいえばいいのか、そういう人間は本当に強い。
それについてひとつ、ある作品の話をしたい。『アイシールド21』というアメリカンフットボールを題材にしたマンガで、主人公チーム「泥門デビルバッツ」の司令塔でチームの絶対的頭脳・蛭魔妖一は、常に数字と事実だけを見て勝算を導き出す非常に冷静かつ狡猾な男なのだが、時には選手の「死んでも闘いたい、勝ちたい」という「執念」や強敵と対峙することで見せる「成長」すら計算に入れて戦略を構築する、熱い一面も持っているのだ。「他人の金だと思い切って自分の予想ができる」「運を並に戻してくれさえすればいい」そんな精神論すらも計算に入れて勝負をしようとするふたりの姿に蛭魔妖一を見た。
デビルバッツが、弱小だったチームが、知略とハッタリと執念で格上相手から勝利をもぎ取ったのと同じように、この「マネーのクズ」は、単にクズ芸人のクズ発言を笑うだけの動画ではなく、0.1%を信じて闘う男たちの生き様を映した熱きドキュメンタリー番組なのかもしれない。
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