12月1日決定「新語・流行語大賞」トップテンを勝手に予想、大賞は大谷翔平でしょう!

2021.11.30


東京オリンピック・パラリンピックからは

この夏に開催された東京オリンピック・パラリンピックからも授賞語が選ばれることが予想される。ただ、ノミネート語を見ると、これといった本命がないのが正直なところだ。

私がトップテン入りを予想するのは3つ。パラリンピックのボッチャで金メダルを獲った杉村英孝の得意技「スギムライジング」と、オリンピックの空手女子形の銀メダリスト・清水希容のやはり得意とする演武の形「チャタンヤラクーサンクー」、それから開会式でパントマイムで演じられた「ピクトグラム」である。

「スギムライジング」は、パラリンピックからはこれまでにまだ授賞がないことから選んだ。「チャタンヤラクーサンクー」は、卓球の伊藤美誠の得意技「チキータ」、フェンシング男子エペ団体・日本代表キャプテン・見延和靖の造語「エペジーーン」とともにどれにするか迷ったのだが、選考委員のひとりである漫画家のやくみつるが『現代用語の基礎知識2022』の口絵で、オリンピックの思い出として取り上げていたので、それに賭けてみた。

『現代用語の基礎知識2022』自由国民社
『現代用語の基礎知識2022』自由国民社

開会式をめぐっては演出に携わったクリエイターが、開催直前になって辞任が相次いだ。その内容に対しても、セレモニー全体として統一感がないなど多くの人が不満を漏らしたが、そのなかにあって好評だったのが、ピクトグラムのパフォーマンスだった。

そもそもオリンピックで初めてピクトグラムが採用されたのは、1964年の東京オリンピックである。今回のパフォーマンスはそれにちなんだものでもあった。海外から来た人にもわかるよう、図で案内するピクトグラムは、文字や音声とは異なるが言語の一種といえる。その意味でも言葉に贈られるこの賞にふさわしいように思う。

今回のオリンピック・パラリンピックでは、選手たちから名言らしい名言があまり出なかったが、その代わり、テレビ中継での言葉がふたつノミネートされた。このうち「ゴン攻め/ビッタビタ」は、スケートボード男子ストリートのテレビ中継で解説担当の瀬尻稜(プロスケートボーダー)が発したもの。同じくスケートボードの女子ストリートでは、西矢椛が日本代表では全競技で歴代最年少となる金メダルを獲得、このときフジテレビの倉田大誠アナウンサーが叫んだ「13歳、真夏の大冒険」も話題となり、ノミネート入りした。

ただ、私はこれにはどうも違和感を覚えた。オリンピックの理念では、選手たちに対し、人種や性別はもちろん年齢も関係なしに皆が対等に扱われなければならない。それがこのフレーズからは、選手を子供扱いするようなニュアンスを読み取ってしまう。似たようなことは、2018年にノミネートされた「もぐもぐタイム」にも感じた。こちらは平昌冬季五輪の女子カーリングで選手たちが試合途中の休憩時間に果物などを口にすることを指したものである。親しみを込めたのはわかるが、もぐもぐという語感が、どうも子供扱いしているようで好きにはなれなかった。

「真夏の大冒険」も「もぐもぐタイム」も、その語が用いられた対象が女子選手だったことはけっして偶然ではないだろう。このことは、女子選手に対してメディアではなぜ「ちゃん」づけやファーストネームで呼ぶことが多いのかといった問題にもつながっている。ここでは詳しく触れないが、『スポーツニュースは恐い―刷り込まれる〈日本人〉』(森田浩之 著/NHK出版)という本を読んでいただければ、よく理解してもらえると思う。2007年刊と、15年近くも前の本だが、いま読んでも示唆に富むところが多い。

出尽くしたコロナ関連からは

コロナ関連の言葉では、今年も「変異株」「自宅療養」「副反応」などがノミネートされた。しかし、コロナによる大きな変化を表す言葉の多くは、「3密」「アベノマスク」「ソーシャルディスタンス」「おうち時間/ステイホーム」など、昨年すでに授賞やノミネートされており、出尽くした感は否めない。

それでもひとつぐらいは授賞するだろうと予想し、「黙食/マスク会食」を選んでみた。もし、これが授賞したら、ここ2年近く、営業時間を制限されるなど苦労に耐えてきた全国の飲食店の人たちへ応援の意を込めて贈るというのはどうだろうか。授賞対象が広過ぎると思われるかもしれないが、東日本大震災のあった2011年には「絆」という言葉の授賞者として、「今活動しているボランティアを含め日本国民、そして海外から日本を応援してくださったすべての皆様」が選ばれた先例がある。

社会問題に関する語では、家族の介護や世話を担う18歳未満を指す「ヤングケアラー」が、社会に改めて訴える意味でも授賞するのではないか。この手の言葉では、授賞者に当該の問題を研究する専門家が選ばれることも多い。「ヤングケアラー」に関しては、その存在にかなり早い時期から着目し、問題提起してきた成蹊大学の澁谷智子准教授を予想してみた。


「うっせぇわ」「ととのう」

若者文化に関連する語では、Adoの歌ったヒット曲のタイトル「うっせぇわ」の授賞を予想。その強烈な歌詞に加え、ネットにアップした「歌ってみた動画」により注目され、顔は一切出さないというAdoの“いまっぽい”キャラクターも、選考委員が好みそうな気がする。

昨年には瑛人のヒット曲「香水」がノミネートされたが授賞はならなかった。なぜ流行る最大のポイントとなったフレーズ「ドルチェ&ガッバーナ」ではなく曲名を選んだのかが謎だが。この例に限らず、新語・流行語大賞では、単に流行したものの名前が選ばれることがしばしばある。そこへ行くと、ここ数年のサウナブームから、「サウナ」ではなく、ブームにより広まった「ととのう」という言葉を持ってきたのはなかなかのチョイスである。せっかくなので授賞してほしい。その場合の授賞者には、コミック・ドラマ化もされてこの言葉が広まるきっかけをつくったエッセイ『サ道』の作者・タナカカツキ(漫画家・映像作家)を予想。

『サ道』タナカカツキ/講談社
『サ道』タナカカツキ/講談社

「マリトッツォ」ブーム

トップテンの残る1枠には「マリトッツォ」を挙げたい。もともとはイタリア発祥のブリオッシュ生地に生クリームをたっぷり挟んだスイーツだが、日本での流行源は福岡市にあるベーカリー「アマムダコタン」である。店を運営する料理人の平子良太(株式会社ヒラコンシェ代表)によれば、昨年、コロナ感染防止のため、客が密になるピークの時間帯を分散させるため、午後のおやつの時間の看板商品としてマリトッツォを登場させたという(清水美穂子「ピンチをチャンスに。ワクワクがとまらない福岡の超人気パン店『アマムダコタン』の東京進出。」、「Yahoo!個人」2021年10月1日更新)。もろ流行した食べ物の名前で、いきなり前言を翻すが、時代を反映してのブームということであえて選んでみた。授賞となれば、やはり平子氏に賞が贈られるのだろう。

ここまでの予想を改めてまとめると下記のとおりである。こうして並べてみると、2021年という年がどんな年なのかなんとなく見えてくるはずである。……いや、そうでもないか……。

2021年トップテン予想(カッコ内は授賞者予想)

●大賞「リアル二刀流/ショータイム」(大谷翔平:ロサンゼルス・エンゼルス)
・「SDGs」(日本SDGs協会)
・「スギムライジング」(杉村英孝:ボッチャ金メダリスト)
・「チャタンヤラクーサンクー」(清水希容:空手銀メダリスト)
・「ピクトグラム」(が~まるちょば・HIRO-PON、GABEZ・MASAとhitoshiら5名:パフォーマー)
・「黙食/マスク会食」(コロナ禍のなか頑張ってこられた全国の飲食店の皆様)
・「ヤングケアラー」(澁谷智子:成蹊大学准教授)
・「うっせぇわ」(Ado:ミュージシャン)
・「ととのう」(タナカカツキ:漫画家・映像作家)
・「マリトッツォ」(平子良太:ヒラコンシェ代表)


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近藤正高

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近藤正高

(こんどう・まさたか)1976年、愛知県生まれ。ライター。高校卒業後の1995年から2年間、創刊間もない『QJ』で編集アシスタントを務める。1997年よりフリー。現在は雑誌のほか『cakes』『エキレビ!』『文春オンライン』などWEB媒体で多数執筆している。著書に『タモリと戦後ニッポン』『ビートたけ..