ラジオにおけるアルコ&ピース酒井健太と三四郎・相田周二のすごさ

2021.10.13
酒井健太 相田周二

文=かんそう 編集=鈴木 梢


アルコ&ピース酒井健太と三四郎・相田周二のポッドキャスト番組『83Lightning Catapult(エイティースリーライトニングカタパルト)』が10月4日にSpotify限定で初配信された。

佐久間宣行いわく各コンビの手ぶら担当であり、酒井が「俺と相田はカメラない現場なんか一番つえーんだから!」と豪語するように、テレビでは相方の平子祐希と小宮浩信に目がいきがちだが、「ラジオ」という場において覇権を握っているのはまぎれもなくこのふたり。それが手を組み同じ番組を担当することになったとなればまさに鬼に金棒。なぜ酒井健太と相田周二はラジオに強いのか、そのすごさを考えたい。

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酒井健太のすごさは「距離感」

私が思う酒井健太のすごさは、「距離感」の詰め方のうまさ。彼がメインパーソリティを務めるラジオ番組を聴いてもらえればすぐにわかるだろう。特に、年下の女性タレントやアナウンサーと共演している場面において、それは発揮される。

「やばたん」こと矢端名結アナウンサーと共演している『チョコレートナナナナイト!』(SBSラジオ)や、乃木坂46の弓木奈於と共演している『沈黙の金曜日』(エフエム富士)では、時にまるで恋人同士かと錯覚させるほどのイチャイチャを演出し、ほかでは見られない彼女たちの新たな一面を引き出している。

口癖である「○○かっつー話」「バカじゃねぇんだから」に代表されるように、これは彼を育んだ「川崎」という土地柄もあるのかもしれない。いい意味での「チャラさ」が相手の緊張をゼロにさせる。軽口で相手の警戒心を解き距離を縮める、卓越したコミュニケーション能力は、先日QJWeb内で公開された連載企画【魅惑の相方】で平子祐希が語っていた「許され力」ともリンクする。

ほかの人間であれば気を悪くしてしまいかねない言葉も、酒井が言えば「もぉ~! 酒井さんったらまたそんなこと言って(笑)」と笑って許されてしまう。暴言や軽口がマイナスどころかむしろプラスの要素に変換される、それを計算でなく天然でそれができるのが酒井健太なのだ。この「自分が楽しみつつも、自然と相手の懐に入り込み、よさを引き出す力」はリリーフランキーや吉田類を彷彿とさせる。

相田周二のすごさは「自然体」

一方、相田周二のすごさは常に「自然体」でいられるところにあると思った。相田は、誰が相手だろうが自分のペースを崩すことなく「相田周二」でありつづける。人気俳優を「友達」と呼び、先輩芸能人をイジり倒す。そこに気負いはなく、どこまでもリラックスしてラジオをやっているのが聴いているこちら側にも伝わってくる。口にするのは簡単だが、誰にでもできることではない。

そして相田が相田でありつづけることに対していっさいの無理がないからこそ、相田のリスナーはなんのストレスもなく相田周二を感じることができる。その姿は例えるなら所ジョージ、ラジオにおいて相田周二は唯一無二のポジションを確立しつつある。誰もがそのポジションに憧れるが誰も所ジョージになれないのと同じように、誰も相田周二にはなれないのだ。各番組が豪華ゲストを招くオールナイトニッポンのスペシャルウィークで、自宅でEMINEMを流しながら餃子パーティができるのは相田周二しかいない。

そんなふたりが織りなすこの番組は、「83年生まれで芸歴も同期のふたりが新しい流行、カルチャー、笑いを世界へ射出していく」というコンセプトなのだが、その期待どおり第一回目から明るい未来を感じさせる放送だった。

冒頭、リスナーから寄せられた「私は劇場にも行くお笑い好きだが、気になってる異性の話が絶望的につまらない」というお悩み相談に対し、「自分がつまんねーんだよってことを一回自覚しねぇと」「舞台立ってから言ってほしい」とぶっこむ酒井健太に対し、「ちょっと言い過ぎかな」「ごめんな」とフォローを入れつつも、「『劇場にも行くお笑い好きの私はやはりおもしろい人が好きです』って言い方はちょっとだけ気になります」とトドメを刺す相田。

冒頭たった3分で抜群のコンビネーションを見せるふたりのトークを聴いた瞬間、頭の中に「無双」という二文字が頭を駆け巡った。やはりラジオのふたりは強すぎる。自分ではなく互いの相方でマウントを取り合うサマも本当にたまらない。「剣を極めた者が最終的に剣を捨てる」のと同じように何も持たないからこその強みがこのふたりにはあるのかもしれない。

毎週月曜日21時に配信される『83Lightning Catapult』、全26回という期限つきだが、ふたりの口から射出されるトークを角が丸くなるまで死ぬほど聴き倒したい。


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