『チ。─地球の運動について─』が命がけで肯定する「好奇心に蓋をしない」道。「QUEEN」ブライアン・メイもそれを行く

2021.10.7


現代版「異端」天文学者・ブライアン・メイ

実は、『チ。』で描かれたことを地でいく天文学者が現代にいる。──ブライアン・メイ。彼が異端たるゆえんは、その経歴。ロックバンド「QUEEN」のギタリストでありながら、天体物理学の博士号を持つ。

『ロック・ギター・スコア ブライアン・メイ』シンコーミュージック スコア編集部
『ロック・ギター・スコア ブライアン・メイ』シンコーミュージック スコア編集部

1971年、23歳だったブライアンは大学院在学中にQUEENを結成した。音楽と研究、二足のわらじ生活を始めたところ、彼は父と何度も衝突することになる。父から「芸術家と科学者に同時になることはできない」「選択しなければならない」と繰り返し忠告されていた(インタビュー「わたしと宇宙」『宇宙のとびら(第51号)』宇宙航空研究開発機構)。

『宇宙のとびら 51号』宇宙航空研究開発機構(個別配送の申込は終了)
『宇宙のとびら 51号』宇宙航空研究開発機構(個別配送の申し込みは終了)

一方ブライアンは、「その考えは間違っていると思います。人生の中でずっとそれと戦ってきました。ぼくはあらゆるものに興味がありました」と言う(前掲インタビュー記事)。そして父の反対を押し切って、二足のわらじ生活を何年もつづけた。しかしライブや収録で多忙を極め、やむなく彼は学業を中断する。

それから80年代・90年代以降、QUEENメンバーとしての活動やソロ活動をしつつも、天文学への興味を失うことはなかった。2006年、ブライアンは何と30年のブランクを経て研究を再開。翌年、インペリアル・カレッジ・ロンドンにて悲願の博士論文を発表した。最近では、音楽活動を継続しながらJAXAの「はやぶさ2」プロジェクトにも協力したという。

『チ。』のキャラたちもブライアンも、好奇心に素直でいる姿が実にカッコいい。きっと今も昔もけっしてラクな生き方ではないだろうが、自分も彼らのようになろうと奮い立たせてくれる。

9月30日に発売されたばかりの『チ。』最新刊第5集では、ラファウやバデーニを追い詰めた異端審問官ノヴァクにスポットライトが当てられる。いよいよ重大な局面を迎える『チ。』から目が離せない。

『チ。─地球の運動について─』魚豊/小学館
『チ。─地球の運動について─』<第5集>魚豊/小学館

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Written by

ツヤマ ユウスケ

ライター。アニメや映画の宇宙考察記事をnoteで執筆。フォトメディア『DOF magazine』ではカメラマンとしても活動。