「インザーギ」の元ネタとは?
9話には、重要な人物……じゃなくて、重要な動物が登場した。その名はインザーギ。ヴィンチェンツォの部屋にやってくる鳩である。
真夜中、窓の外でクルックーと鳴く鳩に「失せろ! どこかへ行け!」とイタリア語で一喝するが、鳩はどこ吹く風。「いい場所を見つけたな」とあきれたヴィンチェンツォは鳩に「インザーギ」と名づける。
名前の元ネタは、元サッカーイタリア代表の名選手、フィリッポ・インザーギ。通算300ゴールを達成したフォワードだが、とにかく場所取りがうまく、絶妙なタイミングでゴール前に飛び出して得点するという相手に嫌がられるプレーが得意なプレーヤーだった。
サッカーに造詣の深いヴィンチェンツォだから、場所取りがうまく、相手に嫌がられても平然としている鳩に「インザーギ」と名づけたのだろう。
9話の小ネタといえば、何度も出てきたサツマイモ。サツマイモ(韓国語では「コグマ」)は、韓国では物事が行き詰まってもどかしいときに慣用表現として使われる。水なしで食べると喉につかえてしまうからだ。
ヴィンチェンツォとチャヨンが最初に食べているときは、バベルの影のボスが誰かわからずに行き詰まっていたし、暖薬寺(ナニャクサ)でサツマイモを勧められたときは立ち退きがうまくいっていなかった。チョン・イングク検事(コ・サンホ)と会食したときも、話が進まないときに大学イモが出てきている。ちなみにサツマイモの反対が「サイダー」(飲むとスカッとするから)。チョン検事役のコ・サンホは『ヴィンチェンツォ』の人気について「日常にサイダーが必要だからだと思う」とコメントしていた(『スポーツソウル』5月11日)。
それにしても、ヴィンチェンツォは世界一美しく焼き芋を食べる男だと思う。鼻の頭が黒くても美しい。
みんな大好きヴィンチェンツォのパジャマ姿
チャヨンの家にも侵入者が現れるが、ヴィンチェンツォが華麗に撃退! 投げられたハンマーから守るため、チャヨンに抱きついてソファに飛び込む姿にキュンと来る。
女性にとことん優しいヴィンチェンツォだが、友達の家に泊まるというチャヨンが電話をかけると、隣にいる彼の電話が鳴って、問答無用で「断る」と言うくだりは、とてもスマートなコント。結局、チャヨンはヴィンチェンツォの部屋にやってくる。インスタントラーメンを作っているときにヴィンチェンツォの肩にあごを乗せる仕草は、気があるというより父親に甘える娘のよう。
寝るとき、チャヨンに「人を殺したかどうか」と聞かれて、ヴィンチェンツォは「いや」と嘘をつく。避けられたくないと思ったからだ。「俺は人と距離を置く生き方がいい」と虚勢を張るが、いつものようにうまい言い回しも出ない。
母ギョンジャとのやりとりや、バベル製薬の被害者家族たちとの温かな食事会のあとに深い感謝を捧げられたときの反応などからもわかるように、冷酷なコンシリエーレ(マフィアの右腕)だったヴィンチェンツォが人間性を回復させていく過程がゆっくり描かれている。その端緒がホン・ユチャン(ユ・ジェミョン)との人間味のある付き合いであり、それをさらに押し進めていくのが娘のチャヨンとの付き合いというのもおもしろい。このようにポジティブな事柄だけがヴィンチェンツォのまわりにあればいいのだが……。
なお、みんな大好きヴィンチェンツォのパジャマ姿だが、今回登場したネイビーのガウンとパジャマは韓国のブランド「EVENIE(イブニー)」のもの。どちらも5000円前後でけっこうお手頃な価格。家で着てみてヴィンチェンツォ気分を味わおう(ガウンは品切れ中)。
悪の回復力の強さと衝撃のラスト!
「悪は善より早く回復し、そのたびに強くなる」
ヴィンチェンツォの言うとおり、バベルグループの反撃は早かった。まずは南東部地検を操るためにファン地検長(ソ・ジンウォン)とソ部長検事(ファン・テグァン)との会食をセッティングするが、地検のふたりはバベルの表向きの会長ハンソ(クァク・ドンヨン)や悪徳弁護士チェ・ミョンヒ(キム・ヨジン)にも上から目線を崩さず、侮蔑的な言葉を浴びせていく。
黙っていないのがバベルの影の会長チャン・ジュヌ(オク・テギョン)だ。ハンソに命じてふたりを拉致監禁すると、自分はホッケースタイルでやってくる。どう見てもヤバい奴が来たのに、まだ悪態をついているソ部長をためらいなくスティックで一撃! ソ部長を殺害し、ファン地検長を「息子を殺す」と脅して完全に屈服させることに成功したジュヌは、カネと暴力で支配下に置いた地検を操って、融資を断ったふたつの銀行に圧力をかけ、両行はバベルへの融資を決定する。
ジュヌの目的は韓国を「麻薬天国」にすることだった。融資された資金で、麻薬とほとんど同成分の鎮痛剤「RDU-90」の生産を大々的に再開する。これまでヴィンチェンツォとチャヨンたちがやってきた努力はすべて水の泡と化した。
悪の力はますます強くなる。バベルの悪事に加担していたものの、裏切る動きを見せていたキル院長(ホン・ソジュン)も容赦なく殺害。呆然とするヴィンチェンツォとチャヨンのもとに、さらに衝撃的な一報が入る。旅行に出かけたはずの被害者の家族たちが、集団自殺をしてしまったのだ!
悪徳弁護士はよく食べ、悪徳法律事務所の代表はゴルフを楽しみ、ハンソは拳銃で遊び、ジュヌはバベルタワーの模型の前でうっとりと舞い踊る。悪い奴ほどこの世の生を謳歌している一方で、弱い者たち、正しいことをしようとする者たちは虐げられ、踏みつけられ、命を落とす。もちろん、このままではすまさない。悪を悪で処断する。ヴィンチェンツォとチャヨンの反撃はこれからだ。デデン!
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