『がんばれ!ベアーズ』の最新型!?実在する“レコード”を基にした少女の物語

2020.1.26

人類と宇宙を結びつけた壮大なスケールのアンダードッグ映画

1970年代の米南部が舞台でありながら、当時まだ根深く残っていた人種差別のネガティブな現実は描かれない。クリスマスが暮らすトレーラーパークにはさまざまな出自の人々が暮らしているが、おおらかに、朗らかに生きている彼らは分け隔てなく身を寄せ合い、貧しくとも理想郷のようなコミュニティーを形成している。

『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』のルーシー・アリバーの脚本を映画化した本作が、小さな負け犬たちの無謀な挑戦を通して探求するのは、多様性が持つ可能性という現代的なテーマだ。何かが他人と違っていて、何かが欠落しているせいで、学園カーストの下層に押し込められてしまった少女4人と少年ひとりは、思わぬ特技や破れかぶれの勇気を発揮してスカウトのバッジを獲得し、固い友情で結ばれていく。女性ふたりの監督ユニット、バート&バーティ(ケイティ・エルウッド、アンバー・テンプルモア=フィンレイソン)は、そうしたテーマを説教臭く描くことを避け、子役たちが発散するアナーキーな生命力を積極的にカメラに収めている。

そしてクライマックス、第0団(トゥループ・ゼロ)というチーム名でガールスカウト大会にエントリーしたクリスマスのチームが、ステージでいかなる出し物を披露するかは見てのお楽しみだが、そこには1970年代を代表するロック・ミュージシャンのナンバーがフィーチャーされている。宇宙というモチーフを反映させるなら、この人しかいないだろうという納得の選曲だ。

要するに『トゥループ・ゼロ』は、ある意味、人類と宇宙を結びつけた壮大なスケールのアンダードッグ映画だ。夜空で始まり、夜空のシーンで幕を閉じる本作には、きっとこの世界の誰かが君のことを見つめているよ、という作り手の視点が込められている。宇宙の彼方の未知なる生命体に向けて打ち上げられる子供たちの無垢なメッセージは、気がつけば私たち大人の観客の胸に響き、しばし澄みきった余韻に浸らせてくれるのだ。




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ライター_高橋諭治

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高橋諭治

(たかはし・ゆじ)純真な少年時代に恐怖映画を見過ぎて、人生を踏み外した映画ライター。毎日新聞、映画.com、ぴあアプリ、劇場パンフレットなどに映画評を執筆中。日本大学芸術学部映画学科で非常勤講師もやってます。

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