『がんばれ!ベアーズ』の最新型!?実在する“レコード”を基にした少女の物語

2020.1.26
映画『トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト~』

文=高橋諭治 編集=森田真規


2020年1月17日にAmazon Prime Videoで配信がスタートしたばかりの『トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト~』。1977年ジョージア州郊外を舞台にしたこの映画の主人公は、地球外生命体の存在を信じて疑わない9歳の少女。
本作は、1977年に宇宙船ボイジャー号と共に宇宙に放たれた“ゴールデンレコード”の実話を基に、負け犬だった少女が立ち上がるさまを描いたキッズ・コメディです。
Amazon Prime Videoが放つ21世紀の『がんばれ!ベアーズ』ともいえる、配信でしか観ることができない注目作のレビューをお届けします。


1枚の歴史的な“レコード”に想を得た、胸に響くユニークな負け犬キッズ・コメディ

主人公は地球外生命体の存在を信じて疑わない同性の友達ゼロの少女

Amazonスタジオが2020年に日本で最初に放ったオリジナル配信映画『トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト~』は、いわゆるアンダードッグもののコメディだ。アンダードッグ映画とは、周囲から人生の敗残者と見なされている負け犬たちが、強大なライバルとの勝ち目のない闘いや、途方もない目標のミッションに身を投じるというのが定型パターンのジャンルである。

アンダードッグ映画における主人公たちは、傲慢な勝ち組の連中から上から目線で蔑まれる。私たち観客は、何クソ精神を振り絞り、意外な奮闘を見せる負け犬たちにシンパシーを抱き、熱いカタルシスを得る。池井戸潤の小説やそれに基づくTVドラマがまさにそうだが、『トゥループ・ゼロ』の主人公は子供たちなので、負け犬キッズムービーの金字塔『がんばれ!ベアーズ』のスピリットを今に受け継いでいる。カラフルな装飾が配されたビジュアル面においては、『リトル・ミス・サンシャイン』や『ムーンライズ・キングダム』を思い起こす人も少なくないだろう。

『トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト~』予告編(オリジナル版)

1977年、ジョージア州の少女クリスマス・フリントは、SFドラマ「アウター・リミッツ」をこよなく愛し、夜空を見上げるのが日課の風変わりな小学生だ。同性の友達がひとりもいない彼女が、ひょんなことからまったく縁のなかったガールスカウトの大会に出場し、優勝を目指すという物語である。

9歳にして変人の烙印を押されたSF少女とガールスカウトを結びつけるのは、1枚のアナログレコードだ。この年、NASAは地球上のさまざまな音声や画像を記録したレコードを、無人の宇宙探査機ボイジャーに乗せて打ち上げようとしていた。宇宙のどこかに存在しているかもしれない知的生命体へのメッセージが刻まれたそのレコードは“ボイジャーのゴールデンレコード”と呼ばれ、本当に宇宙に打ち上げられた。2機のボイジャーは21世紀の今も宇宙空間を航行している。

地球外生命体の存在を信じて疑わないクリスマスは、ガールスカウト大会の優勝者にはゴールデンレコードにメッセージを吹き込む権利を与えられると知り、無謀な挑戦のために仲間を集めていく。やがて彼女がそろえた4人のチームメイトは、学園一の荒くれ少女、神を愛する片目の少女、男らしさの欠如したやせっぽちの少年など、そうそうたるメンバーだ。

クリスマス役のマッケナ・グレイスは『gifted ギフテッド』の愛くるしく賢い演技で脚光を浴びた人気子役だが、本作での彼女はぼさぼさの髪型からしていささか不細工で不器用な女の子として登場する。野原の道を走れば転び、木によじ登れば転落するグレイスのずっこけぶりを見ているだけで楽しい。


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ライター_高橋諭治

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高橋諭治

(たかはし・ゆじ)純真な少年時代に恐怖映画を見過ぎて、人生を踏み外した映画ライター。毎日新聞、映画.com、ぴあアプリ、劇場パンフレットなどに映画評を執筆中。日本大学芸術学部映画学科で非常勤講師もやってます。

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