DISH//、バンドとしての成長と有観客ライブへの感慨「同じ空間で、同じ気持ちを共有できる奇跡を噛み締めてる」

2021.5.31

文=坂井彩花 編集=森田真規


2021年2月にリリースした4thアルバム『X』を携え、5月1日の名古屋公演からスタートしたワンマンツアー『DISH// Spring Tour 2021“X”』。DISH//にとって1年4カ月ぶりとなる有観客ライブも、大阪で予定されていた3公演は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となってしまった。本稿では、5月14日に中野サンプラザホールで行われた東京公演1日目の模様を、QJWeb独占公開の写真と共にレポートする。

結成10年目を迎えたDISH//が見せた、ロックバンドとしての確かな成長。そして、北村匠海(Vo, Gt)はMCで「明日があるって、当たり前じゃない。だから今を楽しもうって思うし、みんなの顔を見ようと思う」とこぼした──。

堂々たるロックスターの風格

結成10年目を翌年に控えた2020年、混沌とした世界の片隅で、DISH//の4人は力を蓄えていた。DTMで曲を作り、スタジオで音を重ね、よりバンドとしてのDISH//に磨きをかけていった。そして生まれた4thアルバム『X』は、DISH//史上最も彼らの血が通った一枚であると共に、「自分たちは0から1を作り出すバンドである」という自負をDISH//に与えた。

5月14日、『DISH// Spring Tour 2021“X”』で中野サンプラザホールに立っていたのは、もはや「バンドになりたい」と憧れた少年たちではなかった。音楽を愛し、表現と向き合い、人と心を交わらせるロックバンドだった──。

SEの音が遠くなると共に、会場は暗闇に包まれていった。照明が落ちペンライトも息を潜めるなか、泉大智(Dr)の鋭いハイハットが沈黙を切り裂き「ルーザー」が導かれる。ストロボのように瞬くライトは、さながらドラマチックな劇画のよう。“それじゃ、正しさを糺しに行こう”と宣戦布告し、ステージの幕を開けた。

DISH//(QJWeb独占公開写真)

パッと舞台が明るくなると、「お久しぶりです、みなさん! 東京、帰って来ました!」という北村のひと声が会場に響き、「rock’n’roller」が投下される。矢部昌暉(Gt, Cho)のクールなギターソロに、橘柊生(Key, DJ)エッジーなラップ、全身で音楽を受け止める身のこなし。どこをどう切り取っても、堂々たるロックスターの風格があった。

メンバーで作詞・作曲したナンバーを冒頭でつづけざまに持ってくる姿勢も、自信の表れといっていいだろう。そして、//er(スラッシャー:DISH//ファンの呼称)とのお約束の曲である「ビリビリ☆ルールブック」があとを追う。“僕たちが立役者”ということを、彼らはパフォーマンスで体現していた。

つづく3曲は、アコースティックを中心としたしっとりサウンドで展開。あいみょんが楽曲提供した「へんてこ」と「猫」を連続で演奏し、エモーショナルな空気をより加速させていく。そこから、くじらが作詞・作曲を手がけ、北村がディレクションをした「君の家しか知らない街で」へ。くじらと北村が共通してルーツに持つ浅野いにお作品をイメージして作られたナンバーは、ささやかに甘くてほろ苦い。メロウでセンチメンタルな空気感を、吐息たっぷりな歌声で語り部のように描いていった。

実力で勝負するフェーズへ

穏やかなムードに包まれていたのも束の間、「次の曲もめちゃくちゃパワーをもらえる曲です」と告げられ、昨年2月にリリースされた『CIRCLE』のオープニング曲「Get Power」へ誘われる。かき鳴らされるセミアコとレスポールは非常にパワフルで、“完璧じゃないよ それでも向かっていくんだ/簡単じゃないよ それでも走ってくんだ”という歌詞の背中を強く押す。

MCで北村は「DISH//の新しいスタンダードができて、ここに辿り着いている」と話していたが、まさしくそういうことなのだろう。曲ごとにギターの種類にもこだわり、音・言葉・モーションをかけ合わせ、最大値のステージを作り上げる。彼らはすでに、そういうフェーズを迎えているのだ。

北村匠海(Vo, Gt)
矢部昌暉(Gt, Cho)
橘柊生(DJ, Key)
泉大智(Dr)

だからこそ『DISH// Spring Tour 2020 「CIRCLE」-Special Studio Version-』でサプライズ初披露された「KICK-START」も、より輝かしかった。泉はクールなドラムフィルを決め、北村・矢部・橘は歌って踊りながら演奏も難なくこなす。キッチュでキャッチーなことを盛り込んでも、おふざけ感に引っ張られ過ぎることなくDISH//のカラーとして昇華できるのは、彼らがロックバンドとして正々堂々と勝負できる実力をつけたからにほかならない。

勢い止まらぬまま「NOT FLUNKY」「東京VIBRATION」と、会場一体になって盛り上がれるライブチューンを連投。今の4人なら何をやってもぶれないというしたたかさが、ステージの上で息巻いていた。

「みんなで道のない道を歩いてきた」


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ライター_坂井彩花

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