『呪術廻戦』4巻 序盤最大の悲しみ、順平「グニィ」の衝撃を考える

『呪術廻戦』4

文=さわだ 編集=アライユキコ 


『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中のマンガ『呪術廻戦』(作・芥見下々)を『ジャンプ』大好きライター・さわだが、映画公開(今年の冬らしい)を待ちながら、1巻から隔週で読み直していきます。4巻で考察すべきは「グニィ」!

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予想できたのに衝撃的な死

『呪術廻戦』の4巻のハイライトは、順平の「グニィ」だと思う。

吉野順平は、ちょっと青春をこじらせてしまった不登校の高校生。特級呪霊である真人(まひと)にそそのかされて闇堕ち。真人に最愛の母親の命を奪われ、さらには真人に頭を「グニィ」ってされる『呪術廻戦』屈指の悲劇の少年だ。

真人が母・凪の命を奪ったことを知らない順平は、真人に心酔し、悪の呪術師である呪詛師として目覚めてしまう。手に入れた術式は、澱月(おりづき)という毒を持ったクラゲの式神だ。おそらく、シングルマザーの凪に言われた「学校なんて小さな水槽に過ぎないんだよ 海だって他の水槽だってある 好きに選びな」という言葉の影響を受けてのクラゲだろう。母の言葉に従って、水槽を飛び出して海に出たのだ。しかし、頼った相手が悪かった。

真人にそそのかされた順平は、意気投合したはずの虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)と戦わされてしまう。なぜ闇堕ちしたのか、何も知らない虎杖は、身体を張って順平を正しい道に引き戻そうとする。しかし、そこに現れたのは真人だ。

真人は触れた魂と肉体の形状を変化させる術式「無為転変」で、虎杖に説得された順平の頭を「グニィ」っと膨張させる。思い切り握ったスライムが指の間からはみ出てくるように、順平の首と頭部が伸びる。「無為転変」なんてものは当然この世には存在しないのに、画と効果音で膨張した人間の質感が想像できてしまうから気持ち悪い。

そのまま順平は意思を持たない改造人間にされて虎杖に襲いかかるが、強力な術式に耐え切れずに息絶えてしまう。だが、正直、順平の死はそれほど意外なものではなかった。

急速に主人公・虎杖と仲よくなったのは、悲しい未来の前フリにしか見えない。「グニィ」が掲載された第27話「もしも」の扉絵は、順平が虎杖、伏黒恵(ふしぐろ・めぐみ)、釘崎野薔薇(くぎさき・のばら)らと一緒に歩いているもので、「もし、順平が虎杖らと同じ学校の生徒だったら……」というアナザーワールドを描いているようだった。どれも悲しみを引き立てる前フリだ、死亡フラグが立ちまくっている。

予想どおりともいえる順平の死は、それでも掲載当時の『週刊少年ジャンプ』ファンに大きな衝撃を与えた。また、このあたりから『呪術廻戦』人気に火がつき始めたように記憶している。

『劇場版 呪術廻戦 0』解禁映像

ページをめくったらいきなり「グニィ」


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