アルコ&ピースのネタを「おもしろい」と同時に「怖い」と感じる理由

文=かんそう 編集=鈴木 梢


雑誌『芸人芸人芸人』ラジオスター特集の表紙に登場したのが記憶に新しいアルコ&ピース。「ラジオスター」としてその名を轟かせているのは事実だが、彼らの原点は「ネタ」にある。


そう話すのは『kansou』とその名のとおりあらゆるエンタメやカルチャー、事象についての感想を綴るブログを運営する、かんそう。今回は「アルピーのネタのおもしろさ」について解説する。

【関連】アルコ&ピース酒井が紐解く、平子祐希の真の姿


メッセージ性のあるテーマを笑いに変える男、平子祐希

アルコ&ピースは基本的に平子祐希がネタづくり担当だ。『生まれながらの笑いの怪物・コントゴーレム』の異名を持つ平子の才能は同業者からも畏怖の念を抱かれている。彼の生み出すネタのおもしろさは「お笑い」という構造そのものに「ノー」を突きつける規格外の発想力にある。丸いものを見て丸と答えるのではなく「これは本当に丸なのか」と疑問を持ち、まったく違う答えを提示する。

たとえば『THE MANZAI 2012』の決勝で披露した彼らの代表的なネタ「忍者」は、片方がシチュエーションを提示し、それにもう片方が乗る形で成立する「漫才コント」を根底から覆した伝説の漫才。酒井が定石どおり「忍者になって巻物取りに行きたい。俺が忍者やるから平子さん城の門番やって」と提案するのだが、それに対し平子は苦悶の表情を浮かべながら「じゃあ、お笑いやめろよ」と切り返し酒井に説教を始めるという内容のネタで、その発想力はもちろんのこと、「忍者」「巻物」「城の門番」というワードそのものの強さ、そしてなにより「軽い気持ちで提案した男」と「本気で受け止める男」を完璧に演じ切るふたりの演技力の高さに戦慄を覚えた。この『忍者』は今でもお笑い界で語り継がれる伝説になっている。

アルコ&ピース
アルコ&ピース(太田プロダクション所属)
(左)平子祐希 1978年12月4日、ボケ担当。
(右)酒井健太 1983年10月29日、ツッコミ担当。

また、10年以上前に『エンタの神様』などで披露していた「逆面接」というネタがある。これは企業側が応募側に質問をする普通の面接の形ではなく、応募者である平子が面接官である酒井に対し「もし僕がおたくに就業したそのあかつきにはどのような働きぶりに期待していますか?」などと逆に詰めていく形のコントだ。

このネタのオチは「もし働く気があればこちらから連絡差し上げます。ただ2、3日経っても電話がいかないようなら働く気なくしちゃったんだな~と思ってください」と吐き捨てその場を去る平子を見つめながら酒井がポツリとひと言

「少子化か……」

と呟くというものなのだが、げにおそるべきは、このネタと同じようなことが今現在実際の企業で行われているというところにある。少子化や人手不足のあおりを受け「働く側が企業側を選ぶ」時代がきている。だからこそ「ネタ」として笑える状況だった当時と違い、2020年になった今このコントを見返すと「笑う」と同時に「恐怖」に似た感情を抱いた。平子が頭の中で描いたことが現実として我々の前に起こっている。平子祐希という男の「誰よりも早く未来を見据える目」とメッセージ性のあるテーマを「笑い」に変えて届ける表現力は想像を遥かに超えていた。

「初見の感じ」を100回できる男、酒井健太


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