メンバー全員がそれぞれのオタク分野を持つグループとしてシーンにおける新たなアイドル像を築いたでんぱ組.inc。今年2月にグループを卒業し、現在はソロで活動する成瀬瑛美(なるせ・えいみ)はアニメ・マンガに造詣が深く、『序』(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』)『破』(同『破』)も公開当日に鑑賞するなど、『エヴァンゲリオン』への思い入れも強い。
そんな成瀬は、『エヴァンゲリオン』とどのように出会い、ハマっていったのか。そして、完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観て何を思ったのか。最悪だった『エヴァ』との初遭遇から『シン』での別れまで、率直な言葉で、25年分の思いを書き下ろしてもらった。
※この記事は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のネタバレを含んでいますのでご注意ください。
目次
私とエヴァンゲリオンの25年
私マキシマムえいたそこと成瀬瑛美は、年齢非公開のアイドルとして活動している。それは、宇宙一のアイドルグループのでんぱ組.incを卒業した現在でも変わらない。いったいどの時代に生まれどの時代を生き抜いてきたのかをボワッと有耶無耶にしたまま、二次元なのか三次元なのかもわからない心ときめく存在としてこの地球に足をデンっと着けつづけているのだ。

そんな自分の生き方が好きであるし、何より年齢は自分で決めていいと思っている。芸名やペンネームという概念があるこの世界では、芸名ならぬ“芸齢”があったっていい。本当のことをちゃんと書かなくてはいけないのは大事な書類や病院だけでいいのだ。
だから、私は常にカラオケ店で入店時に記入する用紙に「17歳」と書いている。理由は、なんとなくアニメのヒロインの年齢っぽくて気持ちがいいからだ。最近はいつもマスクをしているからあんまり顔も見えないし。ちなみにこれは昼間の時間帯だけで、夜だったりお酒を飲みたいときはちゃんと成人年齢を書いている。あんまり褒められた行為ではないので、これはここだけの話にしてほしい。
というわけで、本当は17歳ではないことが明かされてしまったので臆せずに言うと、私は小学校に入ったころ、ほぼリアルタイムで『新世紀エヴァンゲリオン』と出会った。最初の出会いは、実家の近所に住んでいる友人の母のひと言だった。
「『エヴァンゲリオン』おもしろいよ! ビデオ観てみて、東京とかで流行ってるから!」
突如そう言われ、「エヴァ…? なんだろう」と思いながらも、なんだかその不思議な響きに、すごく心惹かれたのだ。

私の住んでいた福島県は、当時はアニメ不毛の地。『サザエさん』に『ドラえもん』、『ちびまる子ちゃん』など本当にメジャーなアニメしか放送されていなかった。だから、いつもレンタルビデオ屋さんでビデオを借りてアニメを観ていた。アニメといえばビデオだったのだ。今はネットのお陰でなんでも観られるようになって、本当にいい時代になったと思う☆
不毛の地だからか土地が広いからなのかはわからないが、地元にはやたらビデオショップが立ち並んでいて、私は片っ端から借りて観ていた。父親が非常に甘く、というか何も考えていなかったのか、まあ好きなだけ借りればというスタンスだったのだ。
さっそく、レンタルビデオ屋に向かった。たしか『エヴァ』の1巻目はレンタル中で、適当な巻を借りて観てみた。
ファーストインプレッションは非常によくなかった
しかし、甘かった。ファーストインプレッションは非常によくなかった。うっすらとした記憶だが、恐怖を感じたことしか覚えていない。
『スレイヤーズ』や『天地無用』など、幼女が観るには少しだけ早いような作品をゴリゴリに観ていた私でも、お兄さんやお姉さんの体がボロボロになったり、心からギリギリのことを叫んでいる姿は、なんというか非常にキツかったのである。

今にして思えば最初に『エヴァ』の話をしていた友人の母親は、私たち子供ではなく私の母親に『エヴァ』を薦めていた。私は痛いのも怖いのも苦手で、ジブリ作品『ナウシカ』の巨神兵を観ても泣き出すような幼女だったのだ。
それにダメ押しするように、ある日うちの家の庭の目の前にポンッとちょっとエッチなマンガが捨てられていたことがあった。それは知る人ぞ知る、『新世紀エヴァンゲリオン』の人気コミックアンソロジーシリーズだった。ページをめくると、触手に巻かれるキャラクターの姿……ショックだった。その5年後くらいにはすぐ同人誌に目覚めるのだが、その時点で目にしてしまった衝撃は、どちらかというとほろ苦い思い出として残っている。
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