誰かの「好き」を否定しないマンガ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』

2020.1.26

その流れの中の一つが、LGBTへの理解です。LGBTとは、「L:レズビアン(女性同性愛者)」、「G:ゲイ(男性同性愛者)」、「B:バイセクシュアル(両性愛者)」、「T:トランスジェンダー(性別越境者)の頭文字をとったものです。

様々なデータがありますが、LGBTの対象者は8%〜10%ほどいると言われており、このとおりなら左利きの人やAB型と同じくらいか、もしかすると多いかもしれないということになります。30人クラスなら、3人くらいはいるということになりますね。

そんなこんなで、ポリコレを多くの人が意識するようになり発言や態度に気をつけるようになったと同時に、LGBTなどへの理解も深まった結果、「他人が好きなものを、否定したり、いじったり、笑ったりするのはよくない」という空気になってきたように感じています。

さらに、ここ1年くらいでは「迷惑かけていないなら、他の人が何を好きだろうと、なんでもいいよね」という風潮になってきている気さえします。実際、僕も「私、バイセクシャルなんだ」と聞いても「へー」くらいしか思わないのですよね。たとえるなら、「私、ゴールデンボンバーが好きなんだよね」と言われているのと同じ感覚かもしれません。

これが10年前に聞いてたら「差別したり、偏見を持ったりしてはだめだ」という変な力が入ってしまってた気もするので、ポリコレの流れによって、このあたりを気にしない人が増えてきているのはとてもいいことだと思っています。

誰かの「好き」は、別にまわりが騒ぐことじゃない

で、マンガの話に戻ります。この「推し武道」は、パッと見た感じでは、女性と女性との恋愛にも見えますし、「女性のヲタが女性を推している」というところが、通常イメージする「女性のアイドルには男性のファンがつく」というところともずれている気もするのですが、作品を読むと、そのあたりは本当にどうでもいいものになっています。

なんというか「ほら、女性と女性の恋愛ですよ、珍しいですよね?」という雰囲気もまったくなく「女性のアイドルを、女性が追いかけているんですよ!」というアピールもありません。だって、好きなんだから、女性だろうと男性だろうと追いかけていいわけですよ。

「その人が好きなんだから別にまわりが騒ぐことじゃない」というふうな空気になっているのは、ここ数年、日本で起きたポジティブな変化のひとつだと思っています。その結果としてのこのマンガだと思っています。おそらく作者さんも、こんなこと考えずに自然と描いている気がするのです。

QJ読者の中でも、自分が好きなバンドやカルチャーの話をして、人からバカにされた……という人も少なくないと思うのですが、これからどんどん、好きなものを好きと言っていい時代になってくる気がしていて、僕はとてもいいことだと思っています。ということで、「推し武道」を推してみました。


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