高木啓成『弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール』:PR

YouTuber・インスタグラマー・ゲーム実況者、必読の一冊『弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール』

2021.1.6

文=森 樹 編集=森田真規


『弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール』というちょっと長いタイトルの本は、その名のとおり弁護士にしてプロの作曲家でもある高木啓成が記したエンタメ法務必携の一冊だ。

音楽・動画ビジネスの業界に従事している人はもちろん、これからYouTuberやインスタグラマー、ゲーム実況者として活動しようと思っている人も、とりあえず押さえておきたい権利とルールの話が網羅されている。

「撮影中に通行人が写り込んでしまっても問題ない?」「動画に音楽を乗せるときの注意点は?」など、具体的なトピックごとに分けられた解説がコンパクトにまとまっているので、活字が苦手な方にもぴったり。

本書で得た知識は、音楽・動画クリエイターにとってお守りになるはずだ。

現代のクリエイターが勝ち上がるために必須の“知識と交渉術”

世界にその名を轟かせるスターになることは、今も昔も難しい。だが、スターになるための最初のハードルはグッと低くなり、誰もがスマホひとつ、カメラひとつでそのスタートラインに立てるようになったのは確かである。

YouTube、TikTok、SHOWROOMなどの動画配信サイト、Spotify、Apple Musicなどの音楽ストリーミングサービス、そしてそれらと親和性が高く、バズを生み出すSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の隆盛──近年WEB上に整備された魅力的なプラットフォームの数々が、音楽・動画クリエイターを目指す者にとってスケールの大きな“夢”を与えてくれる存在になっている。

一方、参入の障壁が低くなり、一夜にして有名人になれる可能性があるということは、その代償としてSNSでの炎上など、さまざまなリスクも孕んでいる。中でも、契約・法律面に関してはプラットフォームの進化に比べて整備が遅れていることもあり、きちんと把握せず“なあなあ”で進めてしまうと、のちにこじれてしまう恐ろしさがある。

事実、先日も著名インフルエンサーが事務所との不当契約をSNSで告発したのは記憶に新しい。こうした事務所との契約や著作物の管理における交渉を「難しい」と遠ざけたり、第三者にすべて任せたりすると、結果的に自分の首を締めることになる。事務所に頼らず、ひとり、もしくは友人たちと勝ち上がれる時代だからこそ、知識と交渉術を武器にすることが重要なのだ。

弁護士兼現役作曲家がクリエイター目線で説明する著作権法

『弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール』は、今年7月に『地下アイドルの法律相談』を出版したことで知られる日本加除出版から発売された書籍で、現代のクリエイターたちを包括的にサポートし、より高みを目指すためのガイドブックである。

内容は、日本における「著作権」とその管理といった基礎から、動画配信サイトでの楽曲使用法、法人から動画制作を依頼されたときの注意事項まで、“クリエイターの権利”について網羅的に記されたものとなっている。

高木啓成氏

著者である高木啓成は、著作権法を中心に、エンタテインメント業界の法務を数多く取り扱っている弁護士。その傍ら、HKT48をはじめ多くのアイドルに楽曲を提供する職業作曲家としての顔も持つ。法の専門家でありながら、現在もDTMクリエイターとして活動する彼の視点が反映されたこともあり、平易な文章とかわいいイラストで著作権法を読み解いていけるのが特徴だ。

本書に登場するイラストは著者本人による描き下ろし!
高木啓成氏が作曲を手がけたHKT48「Just a moment」MV

音楽・動画クリエイターの創作を助ける膨大な法知識

チャプター1「音楽クリエイター編」では、ミュージシャンのための権利についてページが割かれており、世間からは何かと誤解されがちなJASRACやNexToneといった「著作権管理事業者」の具体的な職務や、実際に本を出版するわけではなく、著作者(クリエイター)から譲渡された著作権を運用する「音楽出版社」の役割を紹介。演奏家や作曲・作詞家、さらに編曲家に至るまで、音楽を生業にする者であれば理解しておきたい内容が記されている。

「音楽がお金になる仕組み(1)」/『弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール』より

また、この書籍で特に注目したいのがチャプター2「動画クリエイター編」だ。公共施設での撮影許可の取り方といった基本的な内容から、YouTube、ニコニコ動画といった動画配信プラットフォームにおける権利関係まで詳しく説明されている。著作権侵害/コンテンツ違反になるのはどのような場合か、さまざまな事例と共に紹介する構成は大変丁寧かつ親切だ。

「撮影中に看板やポスターが写り込んでしまっても問題ない?」/『弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール』より

たとえば、ゲーム実況は基本的に著作権侵害に当たるが、各ゲーム会社がガイドラインに沿って特別に許可を出していること、通信カラオケの音源を用いて「歌ってみた」動画をアップするのは原則NGであることなど、法律をベースに、グレーゾーンも含めて守るべき基準がわかりやすく示されている。

ここまでボリューミーかつしっかりと、動画制作についての注意点がまとめられた解説は珍しく、YouTuberやVTuber、TikToker、インスタグラマー、ゲーム実況者など、動画配信界隈で活動している人たちにとっては必読のチャプターといえるだろう。

チャプター3では、契約書の書き方を細かくレクチャー。その中で起きやすいトラブルについても、裁判での判例を交えながら触れられている。本書を締めくくるチャプター4では、これまでのおさらいと言わんばかりに、チャプター1~3で説明された契約書の雛形が用意されているのもうれしい配慮だ。

単に権利や法律を紹介するのではなく、クリエイターが活動していく上で、無視することができない音楽ビジネスの「いろは」を実践的に学べる内容にもなっているのである。

法はクリエイターにとっての“お守り”であり“友”である

CDが飛ぶように売れ、莫大な広告費を投入できた時代から大きく変化し、ストリーミングサービスとライブイベントにシフトした音楽業界(現状はコロナ禍でライブも厳しくなっているが……)。

一方で、急激に勢力を伸ばし、今や若者を中心にテレビと同様の影響力を持つまでに至ったYouTubeなどの動画配信プラットフォーム。どちらもコンテンツが重要視される場所としては共通しており、事務所に入るにせよ個人でやるにせよ、長期的に活動をつづけていくためには法律に則ったビジネスの観点が大切である。

本書にある知識の数々は、今すぐにではなくともいずれ役に立つ日がくる、クリエイターにとってはお守りのようなものといえる。「芸は身を助く」というが、法の知識はそれを後押しする友である──そんなことを教えてくれる充実の一冊なのである。


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Written by

森 樹

(もり・いつき)編集者、ライター。編プロ勤務を経て2019年に独立。『クイック・ジャパン』本誌ほか、カルチャー誌、アニメ誌などに寄稿。映画やアニメ作品のプレスリリースやパンフレットの編集も手がけている。映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』にも宣伝協力で参加。

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