あいみょんもハマり倒した!“泥の女”たちの恋愛模様を描く注目の漫画家とは

2020.11.17
『泥の女通信』サムネ

文=岡部 愛 編集=前田和彦


恋愛マンガというジャンルも限りなく細分化されて久しい昨今。それは現実にあらゆる恋愛のかたちが存在することの表れともいえる。まさに恋愛漫画百家争鳴の時代とも呼べるだろう。

そこに、こつ然と現れた漫画家がいる。にくまん子と名乗るその漫画家が描くのは、現代の“やっかいな恋愛”を追い求める女性たちの姿である。「次にくるマンガ大賞2018 Webマンガ部門」にノミネートされ注目を集め、昨年は初の単行本『泥の女通信』(太田出版)を発表。ジワジワと支持を得て、異例の売れ行きを記録している。

そんななか、若年層を中心に大人気のシンガー・あいみょんが、にくまん子作品を愛読しているというニュースが! そして既にコラボ作品の短編「バカみたいでゴミみたいな」も発表された。ブレイク寸前の今だからこそ、にくまん子の世界を深く掘り下げてみた。以前から漫画書評でにくまん子を高く評価している、岡部愛がコラボ短編をレビュー!


“こじらせ”を軽く超える、やっかいな恋愛物語

先日、久しぶりにマンガ以外の紙の雑誌を待ち望んで買いに走った。『TV Bros.』2020年10月号あいみょん特集号(東京ニュース通信社)である。シンガー・ソングライターのあいみょんのニューアルバム『おいしいパスタがあると聞いて』の発売に合わせた特集号だ。

しかし、私の目当ては漫画家・にくまん子との描き下ろしコラボ漫画であった。

コロナ禍の影響でライブがなくなっていたステイホーム期間に、にくまん子のマンガに出会い、周囲に勧めるほど彼女のマンガにハマり倒したという、あいみょん。そんなきっかけでこの企画が生まれたと思うと、自粛期間も悪い影響ばかりではなかった……と思えるほどに、最高のコラボレーションだったのではないだろうか。

新たな恋愛漫画の描き手としてSNSや同人誌の場で注目を集め出し、昨年立てつづけに3冊のコミックスを発売した、にくまん子。現在はさまざまな恋愛を10ページ前後の短編で描く「泥の女通信」を不定期で連載中。発売中の同名の単行本『泥の女通信』(太田出版)は従来の“こじらせ女子恋愛マンガ”にはない、恋愛をするすべての人たちへの作者の大きな愛が感じられる珠玉の一冊となっている。

にくまん子『泥の女通信』
『泥の女通信』にくまん子/太田出版/2019年
『泥の女通信』p14
『泥の女通信』より (C)にくまん子/WeComix/太田出版

というわけで、あいみょんへの知識も興味もほとんどなかった私は、これをきっかけにめちゃくちゃ、あいみょんを聴くという事態になった。

“麦わら帽子”に“マリーゴールド”という言葉のイメージや、ビールのCMの草原の中で弾き語る姿。若々しく爽やかで、切なくもリア充な恋愛……そこまで刺激的な印象はなかったあいみょん。しかし、ライブ中に多くの観客の前で“セックス!”と叫ぶし、好きな人が自分から離れていくなら“死ね!”と歌う女の子であることを知った。

また『TV Bros.』のインタビューの中では、にくまん子の一番好きな作品に『泥の女通信』に収録されている「アツくてギトギトでベタベタを君は無理矢理」を挙げているのも、トガりにトガったチョイスである。『泥の女通信』の中でもとりわけ登場する女の子の感情がややこしく、捉えどころのないオチなのだが、それを「エンディングがもう衝撃で(笑)」と軽やかに受け入れ笑っているところに、若さとパワーを感じて好感を持った。

『泥の女通信』P84
『泥の女通信』より (C)にくまん子/WeComix/太田出版

あいみょんの歌声と切なくシンクロする“感情の爆発”

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岡部 愛

(おかべ・あい)新宿ゴールデン街にあるマンガバー“bar図書室”の店主。2020年2月に店が10周年を迎えた。漫画のコラムを寄稿したり、『このマンガがすごい!』(宝島社)や「マンガ大賞」ほかで投票者を担当するなど、店の営業以外の活動も細々と。

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