『週刊少年ジャンプ』連載中の『チェンソーマン』(藤本タツキ)が「イカれてる!」と話題だ。現在単行本で8巻まで刊行中(9巻11月4日発売予定)、ちょうど追いかけやすいタイミングだ。『ジャンプ』大好きライター・さわだが、魅力に迫り、今後の展開を考察する。
デンジが持つ“仕方ない力”
グロい、イカれてる、頭のネジがフッ飛んでいる、『チェンソーマン』を形容する際に使用される言葉だ。どれも本当にそのとおりだと思うが、それと同時に、優しく、教育的な魅力にあふれた作品だとも感じる。
本記事は、『週刊少年ジャンプ 2020年39号』(8月31日発売)までの『チェンソーマン』をもとに書いている。そのつづきを読んだ人が見たら、大きな矛盾を見つけてしまうかもしれない。何せ、とんでもないドンデン返しがあり得る作品なので。
『チェンソーマン』の世界には悪魔が存在する。ソ連が登場するということは1980年代ぐらいだろうか、舞台は日本、主人公の少年・デンジは、相棒である“チェンソーの悪魔”のポチタと共に、悪魔を駆除するデビルハンターとしてその日暮らしの生活を送っていた。ある日、デンジは雇い主のヤクザに騙され殺されてしまう。デンジはポチタを心臓にすることで復活し、チェンソーの悪魔になる能力を身につける。駆けつけたデビルハンターのマキマに保護され、公安で身柄を管理されることになる。

欲望に忠実過ぎるデンジは、主人公のわりに共感性が低い。胸を揉みたいときは「胸を揉みたい」と言っちゃうし、パンにジャムを塗るときは人の家のテーブルをベチャベチャにしちゃうし、敵に閉じ込められてもいいベッドがあったら寝ちゃう。そんな奴はまわりにいない、もしいたら嫌悪感がすごい。いきなり一緒に生活することを強いられた公安の先輩・アキも、デンジの非常識な行動の数々にイライラが止まらなかった。
だが、それでも好感度が低くないのは、多額の借金を背負わされた孤児であることと、まともな教育を受けていないことが理由だ。自分の年齢を聞かれ「確か16」(3巻)と答えてしまうデンジなのだ、子供のように本能的な行動を取ったとしても、「仕方ない」と思わせてくれる。

チェンソーマンになれることよりも、この「仕方ない」が主人公・デンジの一番の魅力かもしれない。デンジが多少人の道を外れた言動をしても、生い立ちを考えると悪気がないのが伝わってくる。ほかのマンガの世界を救うヒーローは読者の少年たちにとって憧れでありよいお手本だが、デンジという主人公には、人の立場で考えさせる力があるのだ。他人の行動とその行動原理を想像させるなんて、なんて教育的なのだろう。グロくてイカれてるのに、めちゃめちゃ『ジャンプ』してる。
関連記事
-
-
「奪われたものは取り返すつもりで生きていく」FINLANDSが4年ぶりのアルバムで伝える、新たな怒りと恥じらい
FINLANDS『HAS』:PR -
牧場バイトからアイドルへ、かてぃが歩んだ多彩な仕事遍歴
求人ボックス:PR