映画『クレヨンしんちゃん』には裏テーマがある。震災や原発などの社会的事件を反映した作品群を『クレヨンしんちゃん大全 2020年増補版』の共著者、大山くまおが考察する。
目次
原作者・臼井儀人の姿勢が大きく影響
今年、誕生から30周年を迎えた『クレヨンしんちゃん』。
テレビアニメは放送が始まってから28年、映画も第28作『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』が9月11日に公開される。『しんちゃん』が『サザエさん』や『ドラえもん』などと並んで国民的コンテンツであることは間違いない。
『クレヨンしんちゃん』が他の国民的コンテンツと比べてユニークなところが、その時代性だろう。浜崎あゆみが流行れば浜崎あゆみの名前が登場し、『踊る大捜査線』が流行れば織田裕二といかりや長介のパロディキャラの汚田急痔(「おだきゅうじ」と読む。ひどい名前だがいい活躍を見せる)とにがりや京助が登場する。また、映画版には、前年に旬だった芸人が毎回ゲスト出演をつづけている。
『ドラえもん』などと比べると、『クレヨンしんちゃん』はこのような時代性を反映させたキャラクターの登場頻度がかなり高い。また、『ちびまる子ちゃん』のようにあるひとつの時代に限られているのではなく、30年つづいているのもおもしろい。さまざまな場所にアンテナを張って貪欲にマンガに取り込んだ原作者・臼井儀人の姿勢が大きく影響しているのだろう。

『ロボとーちゃん』の敵は強い父権を求める集団
『クレヨンしんちゃん』の時代性の反映は、パロディキャラだけに留まらない。それが顕著に表れているのが映画版である。
映画『クレヨンしんちゃん』のメインテーマは、主人公・野原しんのすけのおバカな活躍と、父・ひろし、母・みさえとの家族の絆を描くものである。毎回、くだらないギャグに笑って、愉快な冒険に手に汗握り、最後にちょっとホロッとする。これが基本パターンだ。だが、近年の映画版のいくつかには、時代性を反映させた「裏テーマ」とでも言うべき要素が埋め込まれている。
たとえば、大ヒットを記録した『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(14年)は父・ひろしがロボットになってしまうという突拍子もない設定から始まる感動作だが、野原一家に立ちはだかる敵は、時代錯誤的な強い父権を求める「父ゆれ同盟」という集団だった。
当時は父権や古い時代の家族像にこだわりを持つ安倍晋三首相の第二次政権が発足したころ。脚本の中島かずきは「僕は自分自身、そこまで時代性にこだわる作家ではないと思っているのですが、それでも書いているとやっぱり時代の空気は自ずと出てきますね」と振り返っている。

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