震災と原発の影響を受けた『しんちゃん』映画
翌年の『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』(15年)は野原一家が引っ越し先のメキシコで事件に遭遇するパニックホラー。キラーサボテンなる人喰い植物に人々が襲われるのだが、もともとこのサボテンはおいしい実がなる植物として街の人たちに大事にされており、惨事を招いたあとも町長は必死にサボテンを守ろうとしていた。
街の利益にもなるが暴走すると危険な存在という意味で、キラーサボテンとよく似ているのが原発だ。監督の橋本昌和は「キラーサボテンが街の利益に関わっているという設定は、震災後に原発の問題が話題になっていたことに影響を受けています」と証言する。ただし、橋本監督はサボテンを守ろうとしていた町長にシンパシーを感じていたという。
明確に震災の影響を受けた作品なのが、『嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』(12年)だ。
震災直後から制作が始まった本作は、敵が登場せず、野原一家が宇宙に飛び出して、しんのすけが太陽系のバランスに翻弄されるという異色作。監督の増井壮一は震災の影響を認めた上で、「もう『悪者を倒す』じゃなくて、宇宙の視点で地球を見たほうがいいよ」というメッセージを子供たちに伝えたかったと語る。
歪んだ家族を描く『しんちゃん』映画
『クレヨンしんちゃん』のメインテーマのひとつが「家族の絆」であり「家族愛」であることは先にも触れたが、同時に「歪んだ親子」も繰り返し描かれているモチーフだ。
『嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦』(11年)のゲストヒロイン、少女スパイのレモンは7歳でありながら厳しい両親から命令される任務を忠実にやり遂げる。その様子を目の当たりにしたひろしは、思わず「子供はもっとわがままになっていい」と助言を送っていた。
『映画クレヨンしんちゃん バカうまっ! B級グルメサバイバル!!』(13年)の敵役・世界A級グルメ機構の総帥・グルメッポーイはB級グルメを嫌悪する厳しい両親からの強い影響でB級グルメ撲滅を企むようになったという過去を持つ。子供のころ、本当は彼も焼きそばを食べたかったのだが、両親の厳しい言葉で食べられなかったという悲しいシーンが描かれていた。
ストレートに「毒親」という言葉を連想させるのが『襲来!! 宇宙人シリリ』(17年)だ。ゲストキャラの宇宙人シリリの父親・チチシリは非常に尊大な性格であり、息子を数々の禁止事項で完全に支配下に置いていた。しかし、子供に愛情はなく、自分の子供に嫌がらせをつづけてそれを笑いものにしていたというひどい父親だ。
「家族には家族の難しさがありますし、家族だからこそ抱えている複雑な部分もある」と語る橋本昌和監督は、本作に「子供に嫌なことをする親にノーと言うことは大事なんだ」というメッセージを込めたという。なお、チチシリの声は雨上がり決死隊の宮迫博之が演じていた。
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