加藤ミリヤ<女子高生の私>の孤独に響いた曲「誰かと深いつながりを求めていた」

2020.1.20
加藤ミリヤ

言葉にできない孤独を抱える高校時代を過ごしていた。2017年に加藤ミリヤがリリースした「新約ディアロンリーガール feat.ECD」。2005年に彼女がリリースした「ディア ロンリーガール」を再構築した曲だ。

そもそも「ディア ロンリーガール」は、ECDの楽曲「ロンリーガール feat.K DUB SHINE」へのアンサーソング。加藤ミリヤにとって、一連の楽曲はどのような存在なのだろうか。本人がコラムとして回想する。

※本記事は、2017年12月26日に発売された『クイック・ジャパン』vol.135掲載のコラムを転載したものです。


うまく説明できない孤独感があった

当時、私は16歳だった。メジャーデビューしてまだ半年ほど、自分自身が宙に浮いているような絶妙な浮遊感と高揚感。業界のルールや仕組みもよく理解していないまま、 若者特有の根拠のない自信と漠然とした不安感が混ざり合って心中忙しかった。

いわゆる芸能系の高校には通いたくなくて、白金台の私立高校を選んで普通の女子高生としての自分の確保をしたつもりだったのに、実際は心のどこかで同級生との間に一線を引いている自分がいた。自意識が高かったんだと思う。いつもうまく馴染めない。どうしてか周りの女の子たちは群れたがって、ひとりでいることを恐れているみたいに見えて不思議だった。

ひとりが好きなだけ。学校という集団の中ひとりでいることは私にとってちっとも寂しいことではなかった。でも登校する時や学校から帰る時に、iPod(スマホがなかった当時はiPodが主流だった。懐かしい)でアリーヤの曲を聴きながら無性に寂しくなって困った。寂しさの根源がわからないから厄介だった。風を切って歩くくらいの無鉄砲な強さがあったし、外見はどう見ても生意気で派手な女子高生(金髪にミニスカート)だったけど、うまく説明できない孤独感があった。

ECDさんの「ロンリーガール feat.K DUB SHINE」が、 時代感は違えど(曲はコギャルブーム時代の渋谷の女子高生についてラップしている)女子高生の私に完璧に響いた。「ロンリーガール」っていう言葉がやけにしっくりきた。世間知らずでいい、生意気でいい、噛みついていい、怒っていい。自分が歌うべきことがくっきりと見えた。この曲のアンサーソングを作りたい。東京で暮らすひとりの女子高生として、私から吐き出された言葉たちはとても必然性があるように思えた。とても自然に、生まれるべくして生まれた曲は数少ない。「ディア ロンリーガール」を世に出すと、同世代の女の子たちが一気に私に注目してくれるようになったのを肌で感じた。私のことを「女子高生のカリスマ」と誰かが言った。これはあまりにもよすぎる称号だと思うけれど。

過去曲と向き合いたいなんて思ったことなかった

「ディア ロンリーガール」での孤独感は、実体がなくぼんやりとしている。どうして寂しいのか、どうして悲しいのかわからなかったし、それが当時女子高生だった私の孤独の中身だった。ただ、誰かと深いつながりを求めていたのは確かだった。それから12年後にもう一度「ディア ロンリーガール」を再構築したいと思うなんて。

私は混沌としていた。書く、のではなく、書かなくてはいけなかった、と言える曲じゃなくては意味がない。自分の過去曲ともう一度向き合いたいと思ったことはこれまで一度もなかったから、やっぱり私にとって特別な曲なんだと思う。新しく生まれる曲にECDさんの声が欲しい。もしECDさんがラップをしてくれたら本当にもう一度「ロンリーガール」と対峙してみようと思っていたら、奇跡的にラップをして貰えたからやっぱりまたこれも必然だったと思う。

今、孤独を楽しんでいる私がいる。かつてはみんなで孤独を共感し合えることで救われたけれど、すっかり大人になってしまった今、もっと内側は多種多様、複雑になった。だからこれからは、それぞれが現れる感情と真っ直ぐ向き合っていくべきなのかも知れない。「新約ディアロンリーガール」は決意の歌になった。『ここからうちらの時代』と言っていた自分から解放されて、私もやっと飛び立てる気がする。 それでも、「ロンリーガール」っていう言葉がやっぱりしっくりくるのはなんでかな。

加藤ミリヤ 『新約ディアロンリーガール feat. ECD』

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