コロナ禍のエンタメ業界で生き抜く考え方|お笑い第7世代の仕掛け術
YouTubeチャンネル『しもふりチューブ』や『みんなのかが屋』を手がけ、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)の企画・構成にも最年少で携わる29歳の放送作家・白武ときお。彼の書籍『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)が業界内外から注目を集めている。
“お笑い第7世代”と共に仕事をすることが多く、テレビやYouTubeといったメディアの枠を超えた仕事ぶりで、おもしろいコンテンツを次々に生み出している白武。本書には彼の視点から「YouTubeの隆盛と芸能人参入」、「第7世代論」、「コロナ禍のエンタメ事情」、「エンタメ業界で必要とされるスキル」などが語られている。
本記事では、その書籍の内容を一部抜粋して紹介。今回は「コロナ禍のエンタメ事情」や「“第7世代的”な仕事論」について書かれたパートを掲載する。
※文中の表記等はすべて本書のまま掲載していますが、一部の見出しや要約部(グレー部分)などはQJWeb編集部による追記です。
目次
お笑い界初の無観客ライブを配信
2020年の3月以降、新型コロナウイルスの影響でお笑いライブや営業イベントは軒並み中止になってしまいました。若手芸人にとっては、こういった仕事が生活の基盤でもあるので、とてもつらいことです。ライブの中止を聞いたとき、僕はそれを逆手にとって、劇場を借りて無観客でライブ配信をしようと考えました。
音楽ではBAD HOPさんやKREVAさん、あとは東京ガールズコレクションなどが、予定していた公演を早々に配信に切り替える決断をしていました。そこで、かが屋と相談して、3月4日にYouTube生配信「みんなのかが屋無観客お笑いライブ」を開催することにしたんです。
お笑いではおそらく前例のない無観客ライブとあって、フジテレビやQJWebが取り上げてくれて、キャパ60人の劇場で、同時接続で2千人以上の視聴がありました。
普段はライブで食べている芸人さんがたくさん出演してくれたので、スーパーチャットというYouTubeの投げ銭機能と、グッズが作れるサイトSUZURIでの物販、noteのサポート機能の3本柱を用意して、ちょっとでも楽しいと思ってくれたらお好きな形で応援してください、という風にお願いしました。
視聴者の方もどうなるかわからない不安に包まれている時期だったと思うのですが、「こんな状況でもお笑いを届けてくれてありがとうございます」と、ファンの方々が応援してくださって、普段のライブの倍の収益がありました。もちろん、不測の事態だし、その一発目ということもあってみなさん協力してくれたのかなと思います。
通常のお笑いライブには、会場に来た人だけが楽しめるという秘匿性があります。そのよさがある一方で、東京にいないと見られないライブを、地方の人にも生配信で届けたいという気持ちが前からありました。
もともとYouTubeチャンネル「みんなのかが屋」では、2019年にライブの様子を生配信したことがあり、そのためのチームも完成していたので、今回の無観客ライブは、フットワークも軽く、スピードを持って実現できました。
どうやって収益化するか
その後もいくつか生配信をやったり、他のライブ配信を見たりして思ったのですが、コロナ禍で“投げ銭”の認識が少しずつ変わってきたように感じています。「みんなのかが屋」でも、初めてスーパーチャットをする方が多かったんですが、スマホならキャリア決済で、LINEのスタンプを買うくらい簡単に投げ銭ができるんです。
これまでは、アイドルのSHOWROOMや17liveなどに恋人感覚で投げて「ありがとう○○さん♡」といったリアクションをもらうようなイメージが強かったんですが、お笑いでそれはちょっとやりにくかった。
視聴者から直接お金をもらうことでイメージが崩れるかもしれない怖さや、媚びを売ってダサいと思われるおそれもありました。しかし、今回はどうにもライブができない事情があったので、それを大義名分に挑戦してみたら、意外と好意的にとらえてもらえたのです。
自粛期間の初期は、楽しみにしていたお客さんや演者のために、緊急事態だから無料で流すというケースが大半でした。確かに事務所規模ならばプロモーションという考え方もできますが、それだけだとどうしても疲弊していってしまう。
最近は、公演ごと・動画ごとに課金できるようなシステムも利用されつつあります。ただ、YouTubeではこれができない。ここのルールが改定されれば、オンライン視聴という選択肢がもっと増えて、ライブだけでご飯を食べていける芸人さんがより増えるのではないかと思っています。
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