「芸人が売れていく様をラジオでリスナーに追体験させる」が今まさに――
この『特別編』からヒシヒシと伝わってくるのは、お笑い芸人の息づかいだ。ニューヨークの「ネクストブレイクと言われつづけてきたが、なかなか結果を出せない」という立場も、リアルな空気感を引き出すことにプラスに働いている気がする。
いつか売れたいと悪戦苦闘する者、一度はブレイクしかけたものの爪あとを残せずにもがきつづけている者、愚直に芸に磨きをかけている者、売れっ子になったが芸人としての将来に思い悩んでいる者……。実際はあくまでバカバカしい話が中心なのだが、そこから漏れ出す芸人の純粋さと狂気を味わうと、ヨシモト∞(無限大)ホールを中心に活動している芸人たちを描いた濃厚な群像劇を追体験しているような感覚になる。
私もライターとしてインタビュアーを務めることは多いが、「すでに信頼関係のある芸人が芸人に話を聞く」というスタイルには完全に白旗を上げるしかない。いくら下準備に時間をかけようとも、当事者同士の踏み込んだ話には敵わない。この『特別編』でのトークは世の中に無数にいるライターがやろうとしても絶対にできないことだ。
「あなたたちってさ、ポーンと行くところまで行っちゃえばMCじゃん」(ゆいP)、「ひな壇よりもMCって感じよ」(オカリナ)と出演したおかずクラブのふたりが語っていたが、まだ知名度は低いかもしれないけれども、ニューヨークはこの世代でMCの立場を担える存在なのだ。
『特別編』終了後は週3回ペースでZoomを使った生配信を実施。これをラジオと位置づけるのは難しいだろうが、ここでも芸人たちとのクロストークを行っている。7月に入ってからは通常の週1回のラジオ放送に戻ったが、気づけばYouTubeチャンネルの登録者は10万人を超え、毎週のラジオも平均4~6万程度のアクセスをコンスタントに集めるようになった。
もちろん登録者数のケタが違う中田敦彦、江頭2:50、宮迫博之、石橋貴明たちのチャンネルと比べるのは酷だろう。ただ、本人たち曰く「一度もバズらず」に10万人まで来たニューヨークのまわりには確かな熱が生まれつつある。
「コロナの自粛期間中はニューヨークのYouTubeが支えだった」というコメントはよく目にするし、メディアに携わる人間にも魅力が広がり、ネットニュースで取り上げられることも増えてきた。屋敷が自粛期間に打ち込んだ版画も一部で話題となり、テレビ番組の出演も増加。『さんまのお笑い向上委員会』や『くりぃむナンチャラ』では確かな爪あとを残した。また、「ニューラジオ」という冠をほかの芸人にも提供し、その番組数も増えつつある。
ここまで書いたのはあくまでラジオという切り口であって、ネタ作りやYouTube展開から見たら、また違ったニューヨークの物語があるはず。だから、こう言い切るのは強引かもしれないが、ニューヨークは『オールナイトニッポン0(ZERO)』では実現できなかった「芸人が売れていく様をラジオでリスナーに追体験させる」を今まさに形にしようとしている。
YouTube配信ならではの利点は、アーカイブを公式なかたちで全回聴き直せるところ。今から聴き始めても遅くはない。『ニューヨークのニューラジオ』も『特別編』もすべてあと追いできる。
改めてもう1回書こう。「YouTubeだろうとなんだろうと媒体なんて関係なく、彼らのラジオはおもしろい」。“YouTubeラジオ界の超新星”が本当に輝くのはこれからだ。
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