劇場公演が中止になり「毎日芸人を招いてトーク」を約3週間継続した『特別編』
そんな彼らが2019年1月に自分たちのYouTubeチャンネルで始めたのが『ニューヨークのニューラジオ』だ。自腹で買ったマイク、会議室に布を張って反響を抑えた簡易スタジオ……まさしく手弁当での立ち上げだった。それでも、オールナイトニッポン時代の構成作家・奥田泰、サブ作家チェ・ひろしの協力を仰ぎ、毎週日曜日に90分間の生放送をやると決めた。
しかも、トーク中心でコーナーに割く時間はわずかという、『オードリーのオールナイトニッポン』に近いスタイル。“短時間で見られるわかりやすいコンテンツ”が求められるYouTubeにおいて、異色の存在だった。
ラジオ好きやお笑いファンの間で大きな話題を呼ぶような華々しいスタートとはならなかったが、それでもYouTubeチャンネルと併せて、ゆっくりと着実に評価を上げていく。昨年末の初の『M-1グランプリ』決勝進出も追い風になった。残念ながら決勝戦では最下位に終わったものの、松本人志のコメントに対して屋敷が「最悪や」と噛みついたことも話題になった。
『M-1グランプリ』の反響を受けて、『ニューヨークのニューラジオ』の聴取者数も伸びてきたころ、新型コロナウイルスの問題が浮上。2020年3月2日からはよしもとの劇場公演はすべて中止になる。それを受けて、ニューヨークは「ラジオに毎日芸人を招いてトークする」という『ニューヨークのニューラジオ特別編』を始める。
1日だけ仕事の都合で後輩に代役を任せたが、それを除くと連日90分間、1組もしくは2組のゲストを招いて生配信をつづけた。劇場がストップしているぶん、吉本の芸人はブッキングしやすい。同世代中心だったが、先輩のとろサーモン久保田や次長課長・河本も出演。事務所の違うスピードワゴン小沢も駆けつけた。ほとんど会ったことのない後輩も招聘。この生配信は、よしもと社内での配信自体が困難になった3月25日まで約3週間継続した。
この『特別編』では、ニューヨークが聞き手としての存在感を発揮した。お笑い界を目指した理由やコンビを組んだ経緯、現在の課題など、その芸人たちの根っこの部分を探るのが全体を通じたテーマとなったが、ふたりの掘り下げ方が秀逸だったのだ。
屋敷は各芸人に関する知識が豊富で、本当に細かい部分まで記憶している。本当に芸人が好きなのだろう。丁寧にツッコみ、話を展開していくのだが、同時に“イジリしろ”を探す人の悪さも垣間見せる。
一方、嶋佐は鷹揚(おうよう)に構えていて、肯定的にその人のことを受け止めつつ、素朴な疑問をぶつけていく。が、「それ、毎回質問してるよ」と言い返されることも。彼に漂う妙なカリスマ感は一部のリスナーの心を鷲掴みにしつつある。そんなふたりのバランスは本当に心地よい。
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