遅く起きた日曜日に、近所の喫茶店に初めて行ってみる(スズキナオ)

2020.7.5


高橋克典のサインが飾られていた喫茶店

商店街沿いの「ビクター」という喫茶店にやってきた。ここもまた、一度も入ったことのない店。

そういえばここにこういう喫茶店があったな、と思う

活気のある商店街に面した店だけあり、これまでにめぐった2軒の雰囲気とはうって変わって客の出入りが激しい。2階にも席があり、そこでは商店街を行き交う人を見下ろしながらひと息つけるみたいだ。

私は1階、店内中ほどの席に通された。窓の外を歩く人の姿がほんの少し見える位置。だいぶ歩いて汗をかいた。もうホットコーヒーはやめ、欲望に忠実にミックスジュースだ。

ミックスジュースは450円

メニューを見ると、フルーツが山ほど盛られたパフェとか、オムライスやサンドイッチなんかもおいしそうな店。だいぶ繁盛している。ものすごい勢いでミックスジュースを吸い込んでしまった。あとに残る酸味が体の隅々までエネルギーをくれるイメージ。

ふと壁を見るとサインがある。高橋……克……典、高橋克典だ。そのサインの文字を見つめながらミックスジュースの残りを飲み干し、外へ出る。

家にたどり着くと、心地よい疲労と、ほのかな達成感があった。

サインに添えられていた日付を思い返し、検索した高橋克典のブログを読んだ。一時期、大阪に長く滞在してロケをしていたみたいで、毎日のように天神橋筋商店街を歩いている様子が綴られていた。この辺りの雰囲気がかなり気に入ったらしく、あちこちの店の写真を並べて「楽しすぎ」と絵文字を連打している。サインが飾られていた喫茶店のことは書かれていなかったけど、高橋克典があの店のことも気に入ってくれていたらいいなと思う。この気持ちはなんなんだ。今日初めて行ったくせに、謎の上から目線。

今日歩いたルートを思い返していると、もう少し離れた場所にもいくつか喫茶店があったことを思い出した。どの店にも行ったことがない。扉の向こうにどんな空間が広がっているだろうかと、確かめてみたくなる。そうやって近所の喫茶店をめぐり歩くうち、いつか私にもコーヒーの味がわかるようになっているだろうか。


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スズキナオ

大阪在住のフリーライター。「デイリーポータルZ」「メシ通」等のWEBメディアで記事を書いている。酒とラーメンが好き。パリッコとの飲酒ユニット「酒の穴」としても活動中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)など。