「見ざる、聞かざる、言わざる」のお料理モンスター
と、これまで多くの素人系番組を経験したおかげで同世代のディレクターよりも「一般人をおもしろく活かす」ことには自信のあった僕だが、最近になってどうやって演出していいのかがまったくわからない超ド級の“スーパー素人”が現れた。コントロール不可能な料理研究家・園山真希絵である。
一度でも番組をご覧になった方ならわかると思うが、園山のマイペースっぷりはとにかく半端ない。台本は読まない、人の話は聞かない、よけいなことは言うのに必要なセリフはちゃんと忘れるなど、テレビでやっちゃいけない「見ざる、聞かざる、言わざる」を平気でやってのけるお料理モンスター、園山。バラエティ番組における“お約束”を何ひとつ理解していない「キング・オブ・素人」園山の扱いに『勇者ああああ』スタッフはここ数年頭を抱えている。
以前、料理アクションゲーム『オーバークック』をプレイしながら実際に料理を一品作ってもらう企画「オーバークックプラスワン」の収録時も園山節は全開だった。
「今日はエプロンを持ってきたんですけど
エプロンはしたほうがいいですか?しないほうがいいですか?
っていうかここで着替えちゃっていいですか?
裏で着替えたほうがいいですか?
でもやっぱりエプロンはしたほうがいいですか?しないほうがいいですか?
っていうかここで着替えちゃっていいですか……」
カメラの前で「エプロンをつけるかつけないか」だけの不毛なトークを10分以上つづける園山。もちろんディレクターが出しているカンペは完全無視である。
要領を得ない発言を延々と繰り返す園山、一応現場を取り繕うために園山をイジるもディレクターと同じく無視される平子、すべてを諦めてニヤニヤした表情を浮かべるだけの酒井。待てど暮らせど何も起きない地獄のような収録に僕は度肝を抜かれた。ちなみにその日のハイライトは打ち合わせでゲームの操作説明をする僕に園山が放った
「AボタンっていうのはAって書いてあるボタンのことですか?」
という、わらふぢなるおもびっくりなカラ質問だった。「そうです」としか僕は言えなかった。
おそらくほかの番組だったら出禁を言い渡されるレベルの人物である。しかしカメラの前であそこまで自然体のままダラダラとしゃべれる人って逆に貴重なのでは、とも思う。予定調和が一切通用しない「キング・オブ・素人」園山を演出できてこそ「一般人を活かす」真のテレビ東京ディレクターと言えるのではないか。そんな決意を勝手に秘めて今日も『勇者ああああ』の会議では「園山イジリ案」をみんなで考えている。どんなにイジってもあの「キング・オブ・素人」はきっと気づかない。
そう思っていたら先日、僕の上司である伊藤Pが園山が経営する料理店「恵比寿そのやま」に行ったとき、本人から
「テレ東の深夜にやってる変なゲーム番組にいつも呼ばれて、
バカにされてて困ってるんですよ〜」
と愚痴られたそうだ。どうやらイジってるのはもうバレているらしい。なんかすいません。
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#【連載】『勇者ああああ』芸人キャスティング会議
アルコ&ピース平子祐希が番組内で「むせかえるほど安いギャラ」と公言する、テレビ東京の低予算ゲームバラエティ『勇者ああああ』。
予算がなくたって、テレ東には「金がないなら企画を考える、有名人が出せないなら素人をおもしろく撮る」の伝統芸能がある。
この連載では、同番組の演出・プロデューサーを務める板川侑右氏が、過去に呼んだ芸人や今呼びたい芸人と、その理由などを明かす。
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