サラミの世界の扉が開いた
この勢いで私の飲みモードは一気に加速し、「三奥屋」の「南蛮味噌」の封も切って今度は焼酎を飲みながら味わってみる。南蛮味噌は青唐辛子の味噌漬けで、山形では定番のもの。仙台で名物の牛タン定食を食べると脇に添えられていたりする。味噌はしょっぱくて青唐辛子は辛くて、箸の先でちょこっとつまんだのを口に入れるだけで酒がグッと進む私の大好物だ。山形の親戚の家では自家製のものが食卓に並ぶのだが、もちろん今回注文したものもすごくおいしい。
さらに、私の手元には山形県南陽市にある「宮内ハム」のサラミソーセージ「味な物語」がある。
これは前述の伊澤さんがおすそ分けしてくださったもので、酒好きの伊澤さんいち推しのサラミなんだとか。そもそも山形県はサラミの消費量が全国的に見てもかなり高いんだそうで、確かに思い起こしてみれば、親戚の家で小さい子供たちがサラミをバクバクと食べまくっている光景をよく見るのである。親戚が我が家にサラミを送ってくれたこともあった。山形にとってサラミとは「もちろん食うよね?」という感覚のものなのだろう。
サラミな。サラミか。自分もこれまで幾度となく食べてきたけど、そこまでしっかりサラミと向き合ってこなかったな……。いつもボーッとした状態で食べてしまっていた。
伊澤さんからこんなメッセージをもらった。
「このサラミは『宮内ハム』の人気商品です。このへんでは宅呑みの定番のつまみで、もちろんそのまま食べてもいいのですが、刻んで軽くフライパンで炒めてもおいしいと思います。ハム工場の近くの居酒屋ではこのサラミを炒めたやつがメニューになっているところもあります。ライターでちょっと炙って食べるとおいしいです」
サラミを、炙る……? なんて悪い遊びを知っているんだ、伊澤さん。コンロの火でサラミを炙ってみる。脂が浮かび上がり、軽く焦げ目がついたぐらいがころ合いだろうか。台所に立ったままそれをかじってみて驚く。これはもう、ステーキだ! いや、ステーキではない。冷静に考えるとステーキではないのだが、ステーキを食べたときみたいに体が「ごちそうだ」と認識しているのがわかる。味覚が喜んでいる。そのまま食べてみてももちろんおいしかったが、炙りのあるなしでは味わいが全然違う。サラミの世界の扉が開いた。
山菜をモリモリ食べた時点で満腹に近かったはずなのに、気づけば際限なく飲み食いしてしまっている。まあいいか、いつも山形に遊びに行ったら親戚の家で山ほどおいしいものをごちそうになるもんな。宴会になれば酒も相当飲む。そんな1日を雰囲気だけでも少し味わったと思えば、幸せな時間じゃないか。
伊澤さんと「お互い慎重に、もう少し辛抱してまた必ずや乾杯しましょうね!」とメッセージを送り合い、今はまだ遠い山形の風景をもう一度思い浮かべた。
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