外出自粛の街を癒した「ポッポッポッ」、Juice=Juice『ポップミュージック』ヒットの必然

2020.5.25

Juice=Juiceの歌唱力が魅せるギャップとの相乗効果

店内の有線放送でいきなり鳩の鳴き声が流れれば、それだけでかなりの違和感だ。気を張って仕事をしている人々や、不安を抱えながら外出している人々は、なんとも言えない脱力感に襲われ、その瞬間、緊張感あふれる現実を忘れることとなるだろう。

そこに次々と飛び込んでくるのが、「ちゅるちゅるぷにゅぷにゅタピオカミルクティ」や「ポッポッポ」という、これまた違和感たっぷりの言葉たち。中毒性の高いそれらのフレーズによって、脱力した心にいつしか“楽しさ”が沁み込んでくる。

しかも、Juice=Juiceが抜群の歌唱力で歌い上げることで、その“楽しさ”はくっきりと輪郭が際立ったものとなり、より伝わりやすくなる。ちりばめられたたくさんの“違和感”と“力強い歌唱”とのギャップは、“脱力感からの突き抜けた楽しさ”という楽曲の核となる部分を強く印象づけ、楽曲の魅力は何倍にも膨れ上がる。KANの緻密な類まれなるソングライティングとJuice=Juiceの歌唱力が、見事に相乗効果を生み出しているのだ。

オリジナルとの聴き比べで広がる魅力

KAN『ポップミュージック』 Short Version

ちなみに、KANのオリジナルバージョンの『ポップミュージック』は、ストリングスをフィーチャーしたゴージャス感あふれるディスコソングだ。スティーヴィー・ワンダー『Don’t You Worry ‘bout a Thing』からの引用があるなど、こちらも遊び心が満載。ミュージックビデオでは、KANが多数のダンサーを従えてガッツリ踊っており、Juice=Juiceバージョンとはまた異なるタイプの意外性と楽しさにあふれた楽曲となっている。ふたつのバージョンを聴き比べればなお、『ポップミュージック』の魅力を体感できるだろう。

ピリピリした世の中には、なんらかの逃げ場が必要だ。職場も自宅もストレスでいっぱいとなっている今、『ポップミュージック』は心地よい脱力感と楽しさを与えてくれる逃げ場となった。こんな時代に街なかの有線放送から『ポップミュージック』が流れることは、必然なのだ。

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相羽 真

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相羽 真

(あいば・まこと)ライター。1975年生まれ。神奈川県出身。近年の主な執筆分野は芸能・エンタメ全般。WEBメディアの編集も担当。

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