『岡村隆史のオールナイトニッポン』に期待する深夜ラジオの新しいかたち



「中年が中年に向けて放送」変化した下ネタの意味合い

そして現在、深夜ラジオは長寿番組が増え、パーソナリティの年齢もグッと高くなった。それに合わせてリスナーの年齢層も広がっている。『オールナイトニッポン』は常に新陳代謝が起きているが、その中で岡村隆史はコンビ時代を含めると約26年間パーソナリティを担当。もちろん『オールナイトニッポン』の歴史において最長記録である。TBSラジオの『JUNK』でも放送20年を超す伊集院光、爆笑問題のほか、全パーソナリティの番組が10年以上継続しており、また全員の年齢が四十路を越している。

「若者向け」からスタートした深夜ラジオは「中年が中年に向けて放送する」というかつてない状況になっている。もちろん変わらずに若いリスナーも存在しているのだが、これも深夜ラジオが時代に合わせて変化してきた現れかもしれない。

下ネタの意味合いも大きく変わった。かつては具体的な話や直接的な表現が目立っていたが、現在のパーソナリティには結婚している人間も多く、その手の話は避けられる傾向にある。また、インターネットを使って気軽に映像を見られる時代だけに、リスナーがラジオに性的なものをあまり求めなくなった。具体的、直接的な表現を扱うとしても、お笑い要素やまじめな雰囲気をしっかりとトッピングしている。

2015年発売の『新 お笑いラジオの時間』では、ひとりでパーソナリティを務めるようになった心境を語っていた岡村隆史。本稿の筆者・村上謙三久がこのムック本の編集長を務めた

今の深夜ラジオにおける下ネタは「歴史が紡いできた真夜中の共通言語」と言えるだろう。その番組を聴いてきた人にしかわからない、パーソナリティとの“共犯関係”を実感できる共通の言葉。一見、過激に感じる単語も「リスナーが文字にしたい言葉」「パーソナリティに口に出してもらいたい言葉」というニュアンスで、ほとんどが言葉遊びや妄想の類だ。リアリティは薄い。そんななかで、『岡村隆史のオールナイトニッポン』はかつての直接的な表現を残していた、と言えるかもしれない。

インターネットとradikoの登場によって共有するメディアに

深夜ラジオの在り方を大きく変えたのはインターネットの誕生だが、何より一番影響があったのはradiko(ラジコ)の誕生ではないだろうか。90年代以降の深夜ラジオは、真夜中に眠い目をこすって、電波を介して必死に聴いているリスナーだけのもので、放送後は流れ去って中身は残らなかった。すでに誰もが聴いているメディアではなかったから、「一部の人間しかおもしろさを知らない」という優越感もあった。

だが、今やradikoがあれば、スマホでもPCでも気楽に聴くことができる。エリアフリー機能を使って全国の放送局をチェックできるし、タイムフリー機能によって1週間前までならば遡ることができる。

それ以外にもインターネットの影響は数え切れない。違法アップロードにより、YouTubeにもすぐに音声が出回るし、ツイッターによるハッシュタグを使っての実況は当たり前になって、深夜ラジオは個人で楽しむものからSNSによって共有するものに生まれ変わった。ネットニュースというメディアが生まれ、深夜ラジオのトークが記事になることが増えた。

もしこれらの変化がなければ、一部の人間しかおもしろさを知らない状況は保てただろう。だが、もうradikoやそのタイムフリー機能がない状態には戻れない。そもそも下火になっているジャンルの起爆剤として生まれたもので、これを使ってリスナーを広げていくのがラジオ業界の生き残る道。それを否定することはできない。リスナーとしても、radikoなしの状況は考えられなくなっている。深夜ラジオはもう何年も前から閉ざされた場所ではなくなっているし、“深夜の解放区”という言葉からもわかるように、実は誰に対しても開かれているのが魅力のひとつなのだ。

今の時代にマッチした、深夜ラジオの新しい景色を見たい

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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)がある。

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