ロケを封じられた『王様のブランチ』がリモートで大進化を遂げている

2020.5.6
王様のブランチ

文=井上マサキ イラスト=まつもとりえこ 編集=アライユキコ


ソーシャルディスタンスはテレビの風景を変えてしまった。スタジオでわいわいやるのも、街ロケも今は難しい。だが『王様のブランチ』がやりおった。リモートを完全に武器にしたのだ。テレビっ子ライター井上マサキが『ブランチ』戦法に迫る。


最新情報もロケも封じられた『王様のブランチ』

『王様のブランチ』はどうするんだろう、と気になっていた。

コロナウイルス感染拡大防止のために「ステイホーム」が叫ばれ、ドラマやバラエティの新たな収録も見合わせがつづいている。情報番組のようにソーシャルディスタンスを取ることができず、ロケで遠出することも叶わない。撮り溜めた「ストック」が切れ、再放送や総集編を流す番組も増えてきた。

そこで気になっていたのが『王様のブランチ』だ。毎週4時間半にもわたる生放送はグルメ、旅、買い物、映画、ファッションといったトレンド情報で成り立っている。しかし、外出自粛が求められているなか、飲食店をはしごして食レポなどできないし、「買い物の達人」も「物件リサーチ」も不可能。さらに映画は新作の公開がことごとく延期されている。スタジオもレギュラー陣とブランチリポーターで「密」な状態だ。

最新情報もロケも封じられたブランチは、いったいどうなってしまうんだろう。放送休止もやむを得まい……と思いきや、『王様のブランチ』はまったく休まず生放送でトレンドを伝えつづけている。その武器は「リモート」だ。

家から一歩も出ずに話題の商品を食レポするには?

数週間前から『王様のブランチ』もリモート対応に切り替わり、オープニング時にスタジオにいるのはアナウンサーひとりのみ。MCの渡部建&佐藤栞里は局内の控え室から、番組レギュラーの藤森慎吾や石田ニコル、パンサーらは自宅からリモート出演している。

生放送の情報番組でリモート出演を行う場合、大きなモニタをスタジオに用意して、あたかも出演者がそこに「いる」ように見せていることが多い。しかしブランチは、出演者それぞれのリモート画面をCGにはめこみ、いつものスタジオにリアルタイムで合成。全員の画面が空にプカプカ浮いているように見せている。さすが長年『サンデーモーニング』で「バーチャル張さん」をつづけてきたTBSだけある(あれも元祖リモート出演だろう)。

出演者ごとに切り出したリモート画面は、そのまま「ワイプ」(VTR中に画面隅で出演者の顔を映している枠)にも転用。ライブ映像を紹介するときは、全員の画面を下に一列に並べて客席のように見せていたりもした。ただ、若干のタイムラグがあるので、ライブに合わせて歌うと口パクがズレたりするのはご愛敬。

『ミキ』のリモート漫才中、昴生の画面が固まる。お兄ちゃん、持ってるなあ

ステイホームを守ったまま食レポを完遂


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井上マサキ

(いのうえ・まさき)1975年宮城県生まれ。ライター、路線図マニア。大学卒業後、システムエンジニアとして15年勤務し、2015年よりライターに転身。共著に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(..

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