ロケを封じられた『王様のブランチ』がリモートで大進化を遂げている

2020.5.6


ステイホームを守ったまま食レポを完遂

そしてブランチの花形であるグルメコーナーも、リモートで収録されている。4月25日放送回で流れたのは「お米マイスターが選ぶご飯のお供ベスト8」。お米マイスターの女性が、自宅からリモート出演で「ご飯のお供」ランキングを発表。その商品をブランチリポーターが自宅に取り寄せ、自分で白米を炊き、自宅からリモートで食レポをしてみせた。これなら、おすすめする側も食べる側も、ステイホームを守ったまま食レポを完遂できる。

また、同じ日には「マニアだらけのリモート会議」と題したコーナーも放送。カップ麺マニア(大阪)、スイーツマニア(神奈川)、冷凍食品マニア(東京)、リポーターの4人がリモート会議をつなぎ、それぞれのマニアが「コンビニやスーパーで買えるオススメ商品」をプレゼン。自宅にこもりがちな視聴者にとっては身近なトレンド情報だろう。

ただ、どちらのコーナーもリモートの映像(固定カメラ)のみでは、紹介された商品がどのようなものか伝わりづらい。そこで、番組スタッフ側も商品を取り寄せ、ホカホカのご飯に乗ったイクラや、湯気が昇るカップ麺などをブツ撮りし、リモート映像の途中に差し込んでいる。こうした「インサート」は通常のロケでも使われる手法であり、そのノウハウはリモート食レポでも遺憾なく発揮されていた。

自宅からリモート出演で食レポ

視聴者と接続して「ライブ」を実現

食レポ以外では、映画コーナーを担当するLiLiCoも自宅から出演。自宅には夫である小田井涼平(純烈)もおり、ふたりで出演することもしばしば。新作が公開されないため、コーナーは「世代別好きなアクション映画ランキング」や「ハリウッド美男美女俳優ランキング」といったランキングで構成されている。

ほかにも、オンラインで友だちと遊べるゲームアプリや、無料公開されたアーティストライブ映像、通販で買えるディズニーグッズの紹介などがつづく。言うなれば「家で過ごせるもの」が今のトレンドであり、『王様のブランチ』がそれを伝えるのは当然の流れでもある。

もうひとつ、ゲスト出演にも触れておきたい。『王様のブランチ』はゲスト出演にもリモートを使いこなしている。香川照之は自分が手がけた絵本のPRを、伊沢拓司は『東大王』の番組宣伝を、自宅からリモート出演で実施。4月18日放送回では、はしのえみがリモートでつながり、往年の「姫様」のコーナーを振り返っていた。

さらに『王様のブランチ』のリモートは、視聴者をもゲストにしてしまう。出演を希望した視聴者の中から、生放送中にリモート接続し、番組中にゲストとして迎え入れてしまうのだ。視聴者も出演者と同様、CG合成されてスタジオにプカプカ浮いている。

その集大成が5月2日放送回の「ステイホームライブ」だった。この日のリモートゲストは番組テーマソングを歌うAI。さらに視聴者25組をリモートでつなぎ、CGでライブ会場を作り上げた。放送中のトラブルを避けるためか、AIが歌う様子は事前に収録されていたが、それも自宅からリモートで収録したもの(Appleのイヤホンをして歌っている)。

歌うAIの映像に合わせ、リモート画面の中の視聴者たちは一緒に口ずさんだり、手拍子したり、体を揺らしたり、タオルを掲げたりとさまざまに動く。場所も世代もバラバラの人々が、同じ画面の中でひとつになる姿は感動すら覚えるものだった。

もちろん、ほかにもリモートを使った番組はある。『ぐるぐるナインティナイン』の「テイクアウトゴチ」や、『有吉の壁』の「スターのおもしろ自宅公開選手権」、『青春高校3年C組』の「自宅王決定戦」など、リモートならではの企画も次々と生まれている。

その中でも、家で楽しめるトレンドを紹介しつづけ、まさに今自宅にいる視聴者とつなぐ『王様のブランチ』からは、「家にいよう」というメッセージを強く感じるのだった。


この記事の画像(全2枚)




この記事が掲載されているカテゴリ

井上マサキ

Written by

井上マサキ

(いのうえ・まさき)1975年宮城県生まれ。ライター、路線図マニア。大学卒業後、システムエンジニアとして15年勤務し、2015年よりライターに転身。共著に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(..

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。