実は「エンターテインメント超大作」
少女が主役の男性向けコミック、アニメの実写化はとてつもなくハードルが高いもの(女性向けの場合は『恋はつづくよどこまでも』など、必ずしもそうではない)。人気作ならなおさらだ。たとえば、2020年1月期のドラマ『ゆるキャン△』では原作コミックとアニメ版をひたすら忠実に再現して好評を博したが、それでも怒りを表明するファンは少なくなかった。
ドラマ版『映像研には手を出すな!』は、浅草みどりが多少アグレッシブになっていたり、金森さやかがそれほどツンケンしていなかったりとアレンジが加えられている。このあたりは好き好きだろうが、筆者はそれほど違和感がなかった。根っこの部分を押さえていれば、多少のアレンジは気にならないものだ。
妄想のアニメーションシーンはアニメ版に比べて短めだったが、その代わり導入されたのが学園ドラマ要素。1話では「野球部」のメンバーが「内野部」と「外野部」に分裂するコント、2話では「メロディック・ハードコア部」「グラインド・コア部」「カオティック・ハードコア部」「パンク部」の争いを描くコントなどが挿入されていた。このあたりは伝説のコント番組『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』を手がけた英勉監督らしい仕掛け。のちのち、コント部分も本筋の伏線に絡んできたりするのかもしれない。実写ならではの人海戦術にも注目だ。
実写版『映像研には手を出すな!』は実際のところ、制作プロダクションがROBOT、製作には東宝、ソニー・ミュージックエンタテインメント、乃木坂46合同会社、Y&N Brothers(秋元康の会社)、小学館、MBS、ひかりTV、LINEが名を連ねるビッグバジェットの「エンターテインメント超大作」(公式サイトより)である。
でも、そんな「エンターテインメント超大作」のドラマ版が、深夜ドラマにぴったりなのがおもしろい。これがたとえばプライムタイムの60分枠ドラマだったら、原作にはない恋愛の要素やら何やらが盛り込まれることになったかもしれない(あり得ないけど)。女子高生たちが妄想を膨らませながらアニメーション制作に突っ走る物語は、深夜にこそふさわしいのだ。