正統派スタイルながら、独特な切り口を持った漫才で注目を集めるエバース。そのネタ作りを担当する佐々木隆史は、野球一筋の学生時代を過ごしてきた。現在は漫才一本で強豪たちと戦う佐々木が、あのころの自分と重ねながら日々を綴る連載「ここで1球チェンジアップ」。
ラッパー/シンガーのちゃんみなが、SKY-HIが主宰するレーベル/マネジメント「BMSG」とタッグを組んで始動したオーディションプロジェクト『No No Girls』にハマった佐々木。『M-1グランプリ2024』決勝でも、ちゃんみなのマインドに影響を受け、審査員を審査するつもりで挑んだという。そんな佐々木が『No No Girls』を観ていて思い出した、理不尽な審査について綴る。
『No No Girls』と「バトルライブの客票」
こんにちはエバース佐々木です。
2025年に入って1カ月が経過しましたが、みなさんはどうお過ごしでしょうか? 僕はもっぱら『No No Girls』にハマっています。
『No No Girls』(以下、ノノガ)とは簡単にいうと、歌手のちゃんみながプロデュースするガールズグループのメンバーを決めるオーディション番組って感じです。たぶんそんな感じです。
こういったオーディション番組を観たのは初めてなのですが、これがめちゃくちゃおもしろいです。
国民が投票して人気順でデビューが決まるタイプのオーディション番組とかは全然興味をそそられないのですが、ノノガはちゃんみながすべての決定権を持っているので安心して観られます。
「人気投票」は若手芸人でいうところの「バトルライブの客票」に近いと思うのですが、客票で負けたときって死ぬほどムカつくんですよ。なぜなら負けた理由が明確じゃないからです。どう考えても負けてるはずないのに、お客さん一人ひとりに理由を聞けないし、そんなわけないネタをしてたコンビに組織票を疑うくらい何十票も入ってるし。僕らは最初の5年くらい、この客票システムにまったく歯が立たなかったです。
お客さんから見てもそういうことあるんじゃないでしょうか?
『M-1』の予選とかで応援してたコンビがウケてたのに落ちてて、そんなウケてないし何がおもしろいのかわからないコンビが受かってるとか、ざらにあると思います。でも審査員から理由は説明してもらえない。お笑いには明確なルールがないから、各々の主観になっちゃうんでしょうね。
でもノノガには“ちゃんみな”という明確なルールがあって、落ちた理由・受かった理由を毎回説明してくれるので納得ができます。
たとえ落ちた理由に納得できなくても、ちゃんみながプロデュースするグループなんだから、視聴者はちゃんみなに文句を言う筋合いがありません。それでも文句言ってるヤツがいるとしたら、ガチでエグいです。
ちゃんみなは26歳らしいです。僕の6個下です。僕が高2のときに、ちゃんみなは小5です。僕が1個上の彼女と初体験を終えたときに、ちゃんみなはまだ家庭科の授業でナップサック作ってます。
そんな年下の女性がガールズグループのプロデューサーをやってるんですね。
ノノガでのちゃんみなの言葉は音楽だけじゃなく、どのジャンルでも当てはまるなって思うことがたびたびあります。
「まわりの声に惑わされて2択を迷ってるときは、自分がやりたいほうをやりなさい。それが正解だから」
オーディション中に相談してきたFUMINOって子に言った言葉です。言い回しは全然違うと思いますがたぶんこんな感じのこと言ってました。
芸人でもよくあることで、先輩や審査員に言われたアドバイスを受け入れるか無視するかめちゃくちゃ迷うことがあります。それで、目先の結果欲しさに自分では全然おもしろいと思ってないことをやったりしちゃうんですけど、結局そういうネタって温度を感じないんですよね。それより誰がなんと言おうと「俺らはこれがおもしろいと思ってるんで」って感じのコンビのほうがネタに芯があるから、人の心に刺さるネタが多いイメージです。
ちゃんみなはたぶん『M-1』の審査員もできるんじゃないかと思います。それなりにみんな納得するコメントをしそうです。それくらい本質を見極める能力が、ガチでエグいです。
それでまだ26歳なんて末恐ろしいですね。
僕もちゃんみなに負けないようにがんばります。