最近のYouTubeで一番笑った動画は、ぶっちぎりで「罵倒村~もしも日本に住民全員が罵倒してくる村があったら~」(以下、「罵倒村」)だ。
『佐久間宣行のNOBROCK TV』内で突如始まった大型企画で、現在はepisode3まで配信されており、その総再生数は700万回を超えている。とんでもないモンスターコンテンツが爆誕してしまった。今回この記事では、episode2までの魅力について語りたい。
足を踏み入れた瞬間から感じる恐ろしさ
ルールは簡単。「村人たち全員が罵倒してくる」という架空の村で芸人たちがロケを行う。芸人たちは村人たちからの罵倒に、ひたすら耐えなくてはならない。無事にロケを終えることができた人は賞金100万円をもらえるが、少しでも怒ったりイラついたりすると、1回につき賞金が5万円減額される。2024年にやる企画ではない。狂っているとしか言いようがない。
そのすごさはなんといっても、YouTubeのいち企画とは思えないほどのクオリティの高さだ。「本当に実在する村を借り切っている」という力の入れようで、架空の村にもかかわらず嘘臭さや安っぽさが微塵も感じられない。まるで本当に「罵倒村」が存在しているかのような錯覚に陥ってしまうような没入感がある。
そんな天国と地獄が入り混じった世界に迷い込んだのは3人。消えることなき業を背負い復活した不死鳥、アンジャッシュ渡部建。ピュアのバケモノ、ザ・マミィ酒井貴士。翠星のごとく現れた童貞王子、カカロニ栗谷。『NOBROCK TV』や『ゴッドタン』(テレビ東京)、『トークサバイバー!』(Netflix)といった佐久間宣行が手がける番組の視聴者であれば、この3人がいかにこの企画に適任なのかがわかるだろう。
足を踏み入れた瞬間から、この村がいかに異常であるかを見せつけられる出来事が待っていた。一軒の家で飼われていた動物は、犬でも猫でもなく、豚と呼ばれているラランド・ニシダだった。
中年女性に「お前、何食ったらそんなに太るんだよ!」「どうしようもねーなお前は!」と罵倒されながら尻を叩かれるニシダ。これからいったいどんな恐ろしいことが始まるのか……ファーストインパクトとしてこれ以上の衝撃はなかった。
息つく間もなく、老人から子供までこの村に住むありとあらゆる人間たちが、3人を罵倒する。容赦なく急所をえぐってくるような言葉の刃は、まさに罵倒の五月雨斬りだった。
この村に最もふさわしい人間、錦鯉・渡辺隆の合流
ギアがかかったのは、episode2「新しい扉」だ。プライベートで「罵倒村」を探しに来たという生粋のドM、錦鯉・渡辺が合流。この世には、他人に罵倒されることがなによりの興奮になる人間がいる。「罵倒村」に最もふさわしい人間が来てしまったのだ。
そして渡辺隆が出てきた時点で、もうひとりなくてはならない人物がいることに、勘のいい『NOBROCK TV』の視聴者は気づいただろう。そう、もはや『NOBROCK TV』の顔と言っても過言ではない罵倒ギャル、みりちゃむが村の学校教師として登場。
その圧倒的な罵倒スピードと、並のマゾでは耐えられない悪口で4人を圧倒するのだが、みりちゃむの罵倒を唯一「栄養」として吸収できるのが、渡辺隆なのだ。命令されれば、なんのためらいもなく鼻フックヘルメットを被り、竹刀でしばかれれば「ありがとうございます!」と感謝の言葉を述べる。
みりちゃむ「これが調教された人間だからな」
そう言われて誇らしげな顔をする渡辺に、3人が「見てらんないっすよ」と苦笑いするシーンは、「罵倒村」のハイライトのひとつだろう。
当たり前だが「罵倒」というのは、罵倒する側とされる側の「信頼関係」が何よりも大切なのだと思い知らされる。このふたりを見ていると思わず自分も「罵倒されたい……」と願ってしまう。見事にドMスイッチを押されてしまった。
栗谷の見事な食レポと、芽生えた友情
episode2の名シーンといえば「栗谷の食レポ」だろう。村の学校の教室で待ち受けていたギャル軍団に、罵倒され続ける芸人たち。中でもカカロニ栗谷は「なんで『白黒アンジャッシュ』にも出れてねぇヤツがここにいんだよ」など一段とキツい罵倒を浴びせられ、心が折れかけてしまう。
そんな中、唯一の男子生徒・まさると栗谷の口ゲンカが勃発。さらに「生ワサビの食レポをする」というくだりで、先に挑戦した渡部が大量のワサビを注入させられ悶絶するなか、まさるが口を開く。
まさる「栗谷こんなのできねぇだろ?」
そんな挑発に煽られ、半ば強引に食レポをすることになった栗谷。大量のワサビを飲み込み苦悶の表情を浮かべるが、なんとかワサビを飲み込む。
ところがまさるは、栗谷のガッツを認めつつも「味の感想伝わってこなかったぞ」とさらに挑発。そうして栗谷は、まさかの2回目のワサビ食レポに挑戦することに。さすがにヤバいと判断したまわりが止めようとするも、頑なに止めようとしない栗谷。そんな姿に教室中が罵倒を忘れ、応援ムードになっていく。
「ちょっと……今までの取り返させてくださいよ。一番売れてない奴が一番ちゃんとつまんないんですよ、今のところ! さっきより(ワサビ)全然多くていいっす!」と叫び、大量のワサビを食す栗谷。
「フレッシュだから、ほかの商品とは違いますね……あ、でも辛さの中に甘みがバーっとあって全然ワサビだけで食べれるというか……味が……味が……あ、味……」というと、あまりの辛さからかしばらく静止してしまう。しかしわずかに残った最後の力を振り絞ってひと言、
栗谷「おいひー!」
常軌を逸した見事な食レポを披露した栗谷。限界を超えた、芸人としての執念を見せつけられた。この姿にまさるも栗谷を認め、労いの言葉をかける。
まさる「栗谷、お前やるじゃねぇかよ……でもな、お前な、これはちょっと危なすぎるから編集で切られるぞ」
栗谷「使ってくれって! 危なくないって! 絶対使ってくれ! 全然辛くない! これは切んないでくれ! みなさんがマネしなければ僕が使われます! お願いします!」
この場面が実際に使われていることが、栗谷の勝利の証といえるだろう。
栗谷とまさる。そこには罵倒を超えた、まぎれもない「友情」があった。2020年に「人を傷つけない笑い」という言葉がお笑い界を席巻したが、「人を傷つける笑い」だからこそ起きた最高の映像を、ぜひ目撃してほしい。
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