「もっと困難なステップ」へ――という意思が感じられる秀逸なエンディング
一聴して感じるのは、やはりアメリカ市場を意識したのだろうか、ということだ。キャラの立ったメンバーたちのボーカルがアルバム全体にバラエティを与えて飽きさせないし、歌唱・ラップスキルも相変わらず高い。しかし彩り豊かなメロディや、ちょっとストレンジな味わいのある展開はやや抑えめで、シンプルなコード進行と起伏で語るよりもニュアンスで聴かせるようなメロディが耳につく。そこにちょっと物足りなさを感じる。『PERSONA』の中でも飛び抜けてメロウかつメロディアスな「HOME」や「Mikrokosmos」を収録しなかったあたりもこの方向性によるものだろう。
『7』のリード曲である「ON」は佳曲だが、手堅すぎるというか……。ループ感の強い構成にソウルフルなバックボーカル、さらにマーチングドラム的なスネアのフレーズとブラス。確かによい。よいのだが……。
当然ながら、楽曲のクオリティが低いわけではない。これだけぐちぐちと言ってしまうのは、先駆けて1月にリリースされた先行シングル『Black Swan』の図抜けたエレガンスに魅了され切っていたからだ。この曲とて派手な展開があるわけでもないのだけれど、メロディラインや上モノの繊細さと、それを歌いこなすメンバーたちの艶やかさは聴けば聴くほどに惹き込まれてしまう。こんな曲がひとつ収録されているというだけでも類まれな1作というほかない。
親しみやすいメロディとキャッチーなコード進行のビートでとびきり人懐こい「Respect」にほっとしたり、あるいは初期の代表曲の続編である「We are Bulletproof:the Eternal」で歌われるBTSの歩みとARMY(BTSのファン)との連帯に思わず胸熱くしたり、と、アルバム後半~終盤の流れにはさほど深いファンでない身であってもぐっときてしまう。「We Are Bulletproof:the Eternal」でじーんときたあとに、とことん祝祭的な「Outro:Ego」が流れ出す。この終わり方も良い。
アウトロのイントロ(というとややこしいが)に登場する「これから次のステップに進みます、もうちょっと難しくなりますよ(We’re now going to progress to some steps which are a bit more difficult)」というボイスサンプルはたしかダンスの教則レコードからのサンプリング(同じネタのテクノクラシックがある。ネタの詳細は失念……)だが、このサンプルはBTSのデビュー作の冒頭を飾ったものでもある。内省から自己(エゴ)の再発見&肯定に至るアルバム自体のストーリーとBTS自体のストーリー(そもそもタイトルからしてこの7人組に対する自己言及だ)をきれいにまとめつつ、ここ数年の飛躍を踏まえて「もっと困難なステップ」へ歩み出そうというマニフェストにもなっている秀逸なエンディングだと思う。
物足りなさもうっすら感じつつ、否応なしにグループの紡いできた歴史に惹き込まれる1作として、申し分ない出来だ。まだ聴いてないや、なんていう人がいたら、少なくとも「Black Swan」は必ずチェックしてほしい。
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