imdkm 新しいJ-POPはリズムの発明にあり?そのエッジを探る3曲

2020.1.19

文=imdkm 編集=森田真規


初の著書『リズムから考えるJ-POP史』を2019年10月に上梓したライター、批評家のimdkm(イミヂクモ)氏。「J-POPをリズムから考える」という画期的なコンセプトを持った同書で「2018年の日本のポップミュージックをめぐる状況を改めて一瞥すると、そこに浮かび上がるのは『リズム』をめぐるアプローチの劇的な変化である」と記していた彼に、2019年11月以降にリリースされたJ-POP3曲をセレクトしてもらい、そのリズムの「エッジ」な部分を分析してもらった。


J-POPのリズム、そのエッジを探る3曲

ポップミュージックの現在を知るために最適なのは、リズムに注目することだ。と、あえてデカいことを言ってみたが、「新しい(とされる)音楽ジャンル」がこれすなわち「新しいリズムの発明」であることはけっこう多い。特に昨今はヒップホップやR&B、あるいはEDMの影響で音楽のなかのさまざまなリズム――ビート、歌、楽曲構成――が更新されてきている。もちろん日本でも例外ではない。というわけで、ここ最近の新譜を中心に、J-POPのリズム、そのエッジを探るのにふさわしい3曲を選んでみた。

w-inds.「DoU」 多様なリズム=ジャンルを横断する歌の魅力

3人組ダンス&ボーカルユニットのw-inds.が放つ新曲は、メンバーの橘慶太のプロデュースによるトリッキーなダンスチューン。16ビートのファンキーな平歌から、シャッフルするクールな4つ打ちのサビへの転換が意表を突く。
中盤にはハーフ(半分のテンポ)でとるトラップ調のビートも飛び出す。という具合に、ジャンルの垣根を軽々と超えて見せる展開は、ある種K-POP的な流儀を彷彿とさせる。
しかし、そんなビートのおもしろさもさることながら、多様な表情を見せるビートを貫通しつつ、メロディアスな味わいも成立する日本語の追求においてもw-inds.はユニークだ。事務所を同じくする三浦大知もリズムのエッジを攻めるアクトのひとりとして活躍を続けているが、w-inds.の活動も同じくらいスリリング。

w-inds.「DoU」

Friday Night Plans「HONDA」 スイッチするビートの快楽

Friday Night Plansは、東京を拠点とするヴォーカルのMasumiを中心としたプロジェクト。2018年に、海外からの再評価が高まっていた竹内まりや「Plastic Love」をカバーして話題を呼んだのも記憶に新しい。これで知ったという人も少なくないかもしれない。
「HONDA」はその名の通りホンダヴェゼルのCMソングで、頭から聴くとややスローな4つ打ちのR&B。英語詞のなかに日本語詞がところどころ織り込まれる構成に、日本のシンガーだとは気づかない人もいそうだ。オーソドックスなドラムキットのかわりにパーカッションやギターのカッティングでリズムを演出するビートが心地よい。シティポップリバイバルがすっかり定着したいまの空気感にもフィットする絶妙なスマートさがある。
しかし中盤で思いっきりビートがスイッチ(切り替わり。ヒップホップやR&Bではこうした転換がしばしば用いられる)し、歪んだベースが鳴り響くトラップに。両極のようなふたつのビートを行き来する快楽に浸りたい。

Friday Night Plans「HONDA」

中島愛「夏の記憶」 リズムが雄弁に語りだすスキルフルな1曲

声優でシンガーの中島愛が昨年11月にリリースしたシングル、のカップリング曲。作詞・作編曲を手掛けたのは□□□(クチロロ)の三浦康嗣だ。耳馴染みのいいリフが響くイントロから一転、ぐっと音数が減って中島のボーカルにフォーカスがあたり、三連符や休符を生かした現代的な歌メロが注意を惹く。と思うと、徐々にビートに彩りが加わって疾走感あふれる16ビートへ突入。
こうした歌・ビート双方のリズムの変化とともに、楽曲が描き出す感情や風景もめまぐるしく変化する。現在のポップミュージックが持ついろんなリズムを詰め込んだ、シンガーとしての中島の技量が引き立つ1曲だ。


ちなみに三浦と声優アーティスト(ユニット)との仕事で言えば、イヤホンズに提供した「あたしのなかのものがたり」は傑作。声優でもあるメンバー3人のスキルを活かしたボイスドラマ調のパートもさることながら、クライマックスに込められた仕掛けには脱帽させられる。

イヤホンズ「あたしのなかのものがたり」
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(イミヂクモ)ライター、批評家。山形県在住。単著に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019)。

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