音楽、ドラマ、映画……さまざまなジャンルで世界中を席巻する韓国エンタメ。マンガも例外ではなく、韓国発の縦読みデジタルコミック「webtoon(ウェブトゥーン)」が今、大いに盛り上がっている。
『LINEマンガ』『ピッコマ』『めちゃコミック』などのマンガアプリを利用することで、日本にいながらいつでも気軽に「webtoon」が読めるが、ランキングページを眺めていると、ジャンルの豊富さ、そしてなによりも作品数の多さに圧倒される。
そんな数ある「webtoon」の中でも、特に今読むべき作品とは?
目次
サクッと読めるのに、どっぷりハマる「webtoon」
スマホでも見やすい縦読み、そして豪華フルカラーで描かれる「webtoon」。通勤中や休憩中にサクッと読めてしまう手軽さ、だけど読めば読むほど深みや魅力が増していくストーリーと絵……。確かなコンテンツ力で、読者をどっぷりと作品につなぎ止める魅力が「webtoon」にはある。
たとえば、主人公がチート能力を発揮して無双していく、いわゆる“俺TUEEE”系の『俺だけレベルアップな件』『4000年ぶりに帰還した大魔導士』。
主人公が転生、あるいはタイムリープしたあとに壮大な復讐や恋愛劇を繰り広げるロマンスファンタジー系の『再婚承認を要求します』『義家族に執着されています』。
また、恋愛描写だけではなく、圧倒的画力によるメイクシーンが話題になった『女神降臨』など、「webtoon」のおすすめ作品を挙げたらキリがない。
だが、数ある「webtoon」の中でもやっぱり『喧嘩独学』は別格だ。現在『LINEマンガ』にて187話まで配信中(※2023年8月10日現在)だが、もう1話からずっと失速なしのおもしろさ! 一度読み始めたら、私たち読者はスクロールする手を止められない。
“喧嘩の動画配信”を武器に成り上がっていく『喧嘩独学』
ひと言でいえば、なんの取り柄もない主人公が“喧嘩の動画配信”を武器に成り上がっていく。それが、『喧嘩独学』という物語だ。
主人公の志村光太は貧乏で小柄で力も弱い。学校ではスクールカーストの最下層として常に理不尽な目に遭っている、いわゆるいじめられっ子。『喧嘩独学』の主人公は、そんな圧倒的弱者として描かれている。
学校が終われば、アルバイトで母親の入院費や生活費を稼ぐ日々。だけど、クラスで流行っている“動画配信”は、ちょっと容姿が優れていたり、何か特技があれば、アルバイトするのがバカらしくなるくらいすぐに大金が稼げてしまうらしい……そんな現代を象徴するような“動画配信”がキーとなり、物語は進んでいく。
ある日、ひょんなことから光太とクラスメイト・カネゴンが取っ組み合いの喧嘩をしているところが全世界に配信されてしまうのだが、実はこの動画の視聴者数が想像以上に多かったのだ。
その動画は、お世辞にもカッコいいとはいえないし、光太はダサいほどボコボコになっている。だが、世間的にはコレがウケるのだと……。つまり、いじめられっ子による“喧嘩の動画配信”は金になるのだと気づく。
こうして、カネゴンとタッグを組み、“喧嘩”をテーマに動画配信を始める光太。でも、そもそもいじめられっ子なのだから、喧嘩に強いわけでもなく、ましてや喧嘩の方法だってわからない。
途方に暮れる光太だったが「絶対に勝てる喧嘩の方法」を配信している秘密の動画チャンネルを見つけたことをきっかけに、作品のタイトルどおり“独学”で喧嘩を学んでいく。
愛されつづける“成長型主人公”と、韓国の超ネット社会
光太が喧嘩を学び、強くなるたびに動画の再生数も増えていく。再生数が増えれば、その収益で貧乏な生活から抜け出すこともできる。さらに影響力が増すことでスクールカーストだってひっくり返る。
──変わりたい、もっと強くなりたい。そんな現状を打破しようともがき、夢や目標を叶えていく主人公は、「webtoon」のみならず、日本のマンガでも数多く描かれ、読者を熱狂させてきた。
光太は、昔から共感を集め支持されてきた“成長型主人公”そのもの。そういった今まで愛されてきた主人公の系譜を受け継ぎつつも、その武器が魔法でも剣でもなく、現代の手触りとリアリティを感じる“動画配信”に据えたところが『喧嘩独学』のユニークな点だ。
特に“動画配信”の描写は、最近話題になった韓国ドラマ『セレブリティ』を彷彿とさせる。
『セレブリティ』では、SNSのフォロワー数によって権力が格づけされ、それによって繰り広げられる争いを鮮烈に描いたが、ネット上での権力が現実世界にも影響するという点は、『喧嘩独学』でも強く感じる要素のひとつでもある。
動画配信を利用してクラスのいじめっ子たちに復讐をしたり、また視聴者数が増えたことで他校のインフルエンサーや不良たちから狙われたり……。
純粋に人対人ではなく、必ずネットを媒介にして物語が動いていく様子は、日本以上の加熱、過激化を予感させる“超ネット社会”という韓国の社会性があってこそなのかもしれない。
まるで“韓国の現代版ドラえもん”!? ストーリーの緩急を生む仕掛け
また、本作を読んでいると、まるで“韓国の現代版『ドラえもん』”だと感じるときがある。
たとえば、光太は「絶対に勝てる喧嘩の方法」を配信している秘密の動画チャンネルを見つけ、日夜の特訓に励むが、ここで学ぶ喧嘩の方法とやらは、まるで『ドラえもん』の「ひみつ道具」並みの心強さがある。
喧嘩で必要な筋肉を鍛える方法や、各格闘技への対抗方法など、「絶対に勝てる喧嘩の方法」は理にかなっているようで、時にはやや拍子抜けというか“マンガだから”といわんばかりのユニークなテクニックが登場する。
物語が進むにつれて、喧嘩の動画配信は仲間が増え、光太はチームで配信活動を行っていくが、いざというときにのび太が「ドラえも〜ん!」と頼るかのごとく、光太が秘密の動画チャンネルにすがる様子を見ていると、どこか安心してしまう。
ネット上の数値がすべてを揺るがすという緊張感、喧嘩という暴力性を孕んだ描写、とにかく手に汗握る展開が多い『喧嘩独学』という物語の中で、光太に“絶対的に寄り添ってくれる存在”として、秘密の動画チャンネルが存在していることは、彼はもちろん、読者にとってもひと息つけるような心の拠りどころとなっている。
この緩急がしっかりと用意されているからこそ、特別疲弊することも、反対にマンネリを感じることもなく、『喧嘩独学』を読み進めたくなってしまう。
韓国アイドルのようなキャラクター、躍動感あるアングルにも注目
昔から愛されてきた“成長型主人公”、そして『ドラえもん』のように主人公にとって心の拠りどころとなる存在。
『喧嘩独学』には、長きにわたるマンガ文化の中で読者を夢中にさせてきたエッセンスのようなものを随所に感じるが、加えて日本にはない「超ネット社会」という韓国独自の社会性を組み合わせた……そんなストーリー展開が、読者を熱狂させる理由のように感じる。
また、縦読み、フルカラーという「webtoon」の特性を存分に活かした絵とアングルにもぜひ注目してほしい。
これは『喧嘩独学』以外にも、冒頭で挙げた『女神降臨』といった人気作品にも通ずる話だが、作品を彩る、まるで韓国アイドルを見ているかのようなシュッとした頭身のキャラクターが実に印象的だ。
写実的だけれど、二次元を感じるような“完璧さ”を取り入れたスタイリッシュな画風……男性はもちろん女性読者にとっても読みやすい、魅力的なスタイルだと思う。
そして、『喧嘩独学』の見どころにして、縦読みだからなせる技である動画配信や喧嘩のシーン。本作は、とにかくこちら側(読者)に向かって話す、あるいは動作をするようなアングルが多く、これによっていっそう臨場感が増す。
動画配信を行っている際は、実際にこちらもいち視聴者として体験しているような気持ちになれるのはもちろん、喧嘩のシーンは画面から拳が飛び出してくるような躍動感があるのだ。
ストーリーはもちろん、描写の面でも韓国発という一大カルチャー「webtoon」をダイレクトに感じる『喧嘩独学』。ぜひこの機会に体験してみてほしい。
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