コミケ発『ひぐらしのなく頃に』はなぜ歴史的名作なのか?「正解率1%」の謎に挑む“新たな方法”【『ボイコネ』特別企画】
20周年を迎えた現在も“ミステリーホラーの傑作”として評価されつづける『ひぐらしのなく頃に』。2002年にコミックマーケットでノベルゲームとして発売されて以来、コミックやアニメ、小説、実写映画など、さまざまなメディアミックスを展開している。
そんな『ひぐらしのなく頃に』は今、ライブ配信サービス『ボイコネ』で「チャット小説」という新たな形で楽しむことができる。
そもそも『ひぐらしのなく頃に』は当時どのように人気を得て、なぜ今も熱烈に愛され、新たなファンも生みつづけているのか。00年代当時の熱狂を知るかーずSPさんのコメントと共に、その魅力を解説する。
目次
『ひぐらしのなく頃に』はコミケ発のゲームから始まった
『ひぐらしのなく頃に』(以下、『ひぐらし』)が初めて世に発表されたのは2002年の夏。同人サークル「07th Expansion」の代表である竜騎士07氏が制作したサウンドノベル形式のゲームから始まった。
サウンドノベルとは、キャラクターの挿絵や効果音による演出と共に構成された画面上のテキスト小説を、プレイヤーが読み進めていくことで展開されるゲームジャンルのひとつ。『ひぐらし』の場合はゲームといっても選択肢による分岐などはなく、「BGMやイラストのついた小説を楽しむ」という体験だった。
2002年夏にコミックマーケット(以下、コミケ)で発売されたこの同人ゲームは、2006年夏までの間に計8作品が発表される。作中で描かれるのは、山奥に位置する小さな村で起きる連続怪死・失踪事件。「鬼隠し編」から始まり、プレイすることで凄惨な事件の顛末が徐々に紐解かれていく。
『ひぐらしのなく頃に』あらすじ
舞台となるのは、過疎化が進む田舎の雛見沢村。この村では毎年6月に「綿流し」という伝統的な祭りが行われていた。しかしここ4年の「綿流し」の当日には、必ず誰かひとりが死に、ひとりが行方不明になるという怪事件が発生しており、村人は「オヤシロ様の祟り」として恐れていた。
主人公の前原圭一は、そんな雛見沢村に引っ越してきたばかりの少年。村にある唯一の学校に通い始め、クラスメイトである竜宮レナ、園崎魅音・詩音、北条沙都子、古手梨花とすぐに親しくなり、平穏な日々を送る。だが、やがて「綿流し」の日になると、新たな事件が起こる。そして豹変する、圭一の友人たち……。
「今でいうアイドルやVTuber」ファンが育てることが醍醐味だった
『ひぐらし』は、2002年の発表後すぐに多くの人気を勝ち得たわけではなかった。きっかけは2004年の5月。1作目の「鬼隠し編」冒頭が無料で遊べる体験版をネット公開したこと。
この体験版をプレイした感想が個人ブログや『かーずSP』『DAIさん帝国』といった人気テキストサイトによって拡散されることで、爆発的にファンが増加。その後はコミケで1作ずつ発表されるごとに2ちゃんねるなどでさまざまな考察が巻き起こり、秋葉原にある同人ソフト取扱店でもわずか数分で完売するなど一大ムーブメントとなった。近年でもドラマやマンガの「考察」は盛んだが、そのブームの先駆けともいえる盛り上がりだった。
人気の火つけ役ともなった個人ニュースサイトを運営するかーずSPさんは、当時の熱狂について、「ファンが育てている感覚があって、お祭りのようになっていた」と語る。
「コミケごとに1作ずつ発表される流れだったので、現在進行形で物語を追えたのがよかったですね。オタクが集まる同人活動の空間から生まれたものでもあったので、その成長を見届けるのは、今でいうアイドルやVTuberを応援しているような感覚にも近いかもしれません。
完結したときはものすごい達成感を覚えました。これは多くの人に広めたいと思う秀逸なゲームでしたし、その後のメディア展開も含めて、自分たちの界隈からヒーローが出てきたような胸が熱くなる感慨がありました」
(かーずSP)
世間の“日陰”コミケから爆誕した才能
竜騎士07氏は、一度はゲームクリエイターを夢見るも就職活動でうまくいかず、『ひぐらし』を発表するまでは公務員として働いていた経歴を持つ。彼はインタビューの中で当時のことをこんなふうに振り返っている。
『ひぐらし』を発表した2002年から少し遡った1997年ごろ、当時の僕は普通に勤め人をしていて、毎日変わり映えのしないテンプレート通りの生活をしていました。『このまま毎日を過ごしていたら、何も変わらずに壮年、中年になってしまう』と、“大人中二病”みたいなことを考えてしまったんですね。それで『何でもいいから形として残したい』と思って、学生時代にしていた同人活動を再開しました。[…]そして出会ったのがノベルゲームという発表方式でした
『ひぐらしのなく頃に』15周年。竜騎士07さんと15年間をインタビューで振り返る【周年連載】|電撃オンライン
竜騎士07氏は『ひぐらし』をきっかけに超人気シナリオライターとなり、『うみねこのなく頃に』シリーズや『トライアンソロジー』、『祝姫』などの作品を続々と発表。人気ホラーゲームシリーズ『SILENT HILL』の最新作でもストーリー制作を担当することが明らかになり話題を集めている。
当時まだコミケや同人文化は一部のマニアが楽しむ趣味であり、“日陰”の存在だった。そこから突如として、世間一般にまで届くほどの才能が誕生したのである。竜騎士07さんと『ひぐらし』は、同人活動から一躍人気クリエイターになるという夢物語を叶えた記念碑的な作品なのだ。
何が真実なのか? 20年間愛される、秀逸なミステリーの結末
『ひぐらし』の魅力は、ミステリーホラーとして緻密に計算されたストーリーテリングにある。「正解率1%」というキャッチも多くのファンを惹きつけ、こぞって事件の謎に挑んだ。今新たに『ひぐらし』に触れるとき、どのようなポイントに注目すればより物語を楽しむことができるのだろうか。
「叙述トリックを持つミステリー小説のような一面があるので、すべての描写に対して疑いを持つと真相に一歩近づけると思います。たとえば、主人公の圭一が思っていることは果たしてすべて真実なのか……?と考えながら読んでみたり。最後まで読んだら絶対に納得のいくストーリーであることは間違いないので、『正解率1%』に真っ向から立ち向かってみてほしいですね。
あとは、『ひぐらし』はとにかくヒロインたちのキャラクターが魅力的なんです。面倒見がよく心優しい献身的なキャラクターがいたり、幼さのあるお嬢様気質のキャラクターがいたり。きっと推しのキャラクターを見つけられると思います」
(かーずSP)
ライブ配信サービスの『ボイコネ』では現在、『ひぐらし』の第1作である「鬼隠し編」の物語をチャット小説として無料で楽しむことができる。『ボイコネ』は推理やリアクションをライブ配信で共有できるのもポイント。誰でもキャラクターの声を通して配信することも可能で、物語を超えて『ひぐらし』の世界を存分に楽しめ、新鮮な体験として「正解率1%」の謎に挑戦できるはずだ。
『ボイコネ』で初めて作品に出会ったファンの間でも、すでにさまざまな考察が盛り上がっている。『ひぐらし』未経験の方も、ミステリーホラーの傑作として20年間愛される理由を体感してみてはいかがだろうか。
そして、凄惨な事件の真犯人は誰なのか、その衝撃を楽しんでほしい。
『ひぐらしのなく頃に』×『ボイコネ』コラボ企画を開催中
『ボイコネ』では『ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編』を無料で公開しているだけでなく、作品をモチーフにしたアイテムや称号がもらえる企画も開催中。作品を読んで楽しむのはもちろん、誰でも『ひぐらし』のキャラクターになりきって配信することもでき、好評を呼んでいる。
【『ボイコネ』とは?】
「これまでにない読書体験」をテーマとする、小説で繋がるライブ配信サービス。チャット形式で小説が読めるだけでなく、朗読など声を使った生配信も可能。好みの声で小説を聴く、推しのボイスを応援するなど、さまざまな楽しみ方ができる。