音楽アーティスト、モデル、インフルエンサー。さまざまな肩書を持つ佐藤ノア。
シンガーとして恵比寿リキッドルームでワンマンライブを成功させ、モデルとしては『bis』や『LARME』などの雑誌で活躍。SNSの総フォロワー数200万人超と、ティーン女子の間で、熱狂的に支持されています。
クレバーに早口で話してくれるノアさん。時代を駆け抜ける彼女が考えていること、歩んできた道、そしてこれからの活動について話してくれました。
「佐藤ノアはコンテンツ」女子のロールモデルになりたい
──アーティストやモデル、インフルエンサーなど多方面で活躍されているノアさんですが、活動全体の目標はありますか。
佐藤ノア(以下:佐藤) 「憧れの人は佐藤ノア」って言える女の子が増えることです。女の子って「いつかなりたい女の子像」を持ってると私は思ってて。みんな結局かわいいものが好きだって信じてるので、「佐藤ノア」はそれを具現化したいんですよ。
ロールモデルがいたらマネしやすいじゃないですか。本当はかわいくなりたいけど、自信がない人も、「佐藤ノアがやってるからマネしてみよう」ってひとりでも多くの人が思えるといいなって。
そもそも私にとって「佐藤ノア」ってコンテンツというか。
──アバター的な。
佐藤 そうですね、そんな感じです。私の中で「佐藤ノア」の明確なキャラみたいなものがあって、それを守りながらコンテンツを作ってる感覚で。
──キャラってどういうものがありますか?
佐藤 「SNSでは弱音を吐かない」とか「絶対に厚底を履く」とか。ほんといろいろありますよ。「メイクはツヤ肌で、うるうるリップで、キラキラのアイシャドウ」だし、髪の毛の長さも基本はあまり変えない。この長さが私にとっての「THE・かわいい女の子」のヘアスタイルなんですよ。少女漫画の主人公の親友キャラのイメージですね。
──ニッチなキャラですね。
佐藤 芸能界って主人公だらけだし、狙ってる人もマジ多いんで、ニッチに行ったほうがいいかなって。
あと、もうひとつ理由があって、こっちのほうが重要なんですけど、私はケミカルに生きていきたいんです。顔はバキッとキメたいし、装飾品は多ければ多いほどかわいい。ギャルでもナチュラルでもない、甘めのキラキラした感じを体現したいなって思ってます。
──もともとノアさんは、ロックバンドをやるために北海道から上京してきたんですよね。ロックに憧れて来た人が、若くして自分を客観視して、「佐藤ノアはコンテンツ」って言い切るのは新鮮です。
佐藤 ロックバンドをやってるときは全然マインドが違いましたね。そのころにしゃべってたらまた違う内容だったかもしれないです。
──憧れは時代によっても変化するから、難しい道ですよね。
佐藤 確かに。でも、私は時代に順応していくし、その時代のかわいいを体現していく人になりたいですね。私は生まれ持ったこの顔と体でできる範囲のかわいさをやっていくので、迷うことはないかな。自分に似合うものはなんとなくわかっています。
──ノアさんの前では「自己肯定感」という言葉も、かすむ感じがします。
佐藤 そういえば、わざわざ「自己肯定感上げよう!」とかは言わないですね。「自己肯定感が大事」ってよく聞くけど、もうちょっとなんとなくハッピーに過ごしてもいいのにって思います。
それでいうと「コンプレックス」って言葉も流行りになってる気がしてて。ほんとにコンプレックスがある人には必要な言葉だけど、みんな言い過ぎだなって。
みんなが当たり前に使う言葉も、もう少し違う言い回しを考えたら、捉え方も変わるはず。私は「この言葉は響きが好きじゃないな」って言葉は使わないですね。自分が好きな言葉だけを発してます。
私めっちゃポジティブで、超ハッピーですよ
──すごく芯が強い印象のノアさんですけど、どうやってその性格は培われたんですか。
佐藤 高校時代に、あまり学校に行ってなかったんです。たくさんインプットしてたんですよ。中学生までの間に学校のお勉強はしたので、これからの自分に必要なことは社会勉強かもなって思ったんですよね。
映画をいっぱい観たり、ひとりでゲームセンターに行ったり。平日の昼間にゲームセンターにいる人ってどこか変わってるじゃないですか。学校が苦手で外に出てばかりいました。
──音楽はずっと好きだったんですか。
佐藤 音楽一家なんですよね。お母さんは音楽大学出てて、お父さんがバンドマン。衣食住と同じくらい当たり前に音楽がある環境で育ったので、バンドも自然とやってましたね。
お父さんの影響でずっとパンクとロックしか聴いてなかったんですよ。ランシドで育ったし、小さいころはレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)ばっかり聴いて。尾崎豊も小学生のころずっと聴いてました。
ちゃんとJ-POPを聴き込むようになったのは、バンドを辞めて、ソロ活動を始めるタイミングでした。それまではBPMが速ければ速いほどいいみたいな感じでした。
──上京してすぐに事務所に入ったそうですね。
佐藤 はい。高校生のころツイッターをしてたら、なんとなくフォロワーが増えて。ツイッターで私の自撮りを見た今のマネージャーからDMもらったんですよね。
──上京後は事務所のサポートもありつつ……。
佐藤 特にサポートはされてないです。私もほんとに何も考えてなくて「暇だから東京行こうかな」って感じで、家だけ契約して来ました。最初の1カ月はベッドもなくて寝袋で寝てたし。ほんとにお金がなくって、毎晩のように先輩に「お金がないです!」ってご飯連れてってもらって、なんとか生きてました。
──それでもバイトはしなかったんですね。
佐藤 そうですね。ちゃんとバンド活動してたら、いつかお金はついてくると思ってたので、一時的にお金がないくらいでは困らなかった……いや、生活は困ってたんですよ。でも心は困ってなかったので。わかんないけど、絶対大丈夫って思ってました。
──ポジティブですね。
佐藤 私、めっちゃポジティブですよ。超ハッピーですよ、ふふ(笑)。
「(モデルの)撮影しましょう」って声かけてもらったときは「やります」ってすぐ飛びつきました。モデルで生活費を賄って、音楽をがんばろうって思ってましたね。
──ロックとかパンクが好きな人って「音楽ひと筋!」的なトガった人が多そうですが、モデルの仕事に抵抗はなかったんですね。
佐藤 言葉選びが難しいんですけど、たまたま「私はできることが多いんだ」と思ってやってみるかって感じでした。「バンドとモデル」っていうのは自分の中では違和感もなくて。
それにモデルのお仕事で私を知ってくれた子が、ライブハウスに来てくれることも多かったんです。「ノアちゃんがきっかけでパンク好きになりました!」って言ってくれると普通にうれしかったです。
打ち上げで面と向かって悪口言われることもあったけど、そうやって意地悪を言う人は消えていくと思うので、気にしないです。
サンドバッグになる気はない。佐藤ノアのSNS処世術
──インフルエンサーとしても知られるノアさんですが、SNSのコツについても少し伺いたいです。
佐藤 私って感覚型なので、なんとなくやっていることなんですけど……。SNSごとに違うんですけど、あえて言葉にするとしたら、たとえばツイッターは共感されやすい言葉をつぶやきます。
──共感されやすい言葉。
佐藤 主語をなくしたりとか。歌詞を書くときと同じです。みんなが「これって私のことじゃない?」って思えるようなツイート。
あと、失礼な人への対応ですけど、嫌な絡みをしてくる人にははっきり言い返します。嫌いなことは嫌いってはっきり言うと、変なファンもつかないと思います。
よく「SNSでは好きを発信しよう」って言うじゃないですか。でも私は嫌いもちゃんと発信します。私はサンドバッグになる気はないので。呼び捨てされたりとかあんまり好きじゃないんですよ、ふふふ(笑)。
──言い返すと「失礼な人」って反省しますか?
佐藤 丁寧になるか、消えてくか、どっちかかもしれないですね。佐藤ノアの畑には、私のことが好きな人だけでいいんですよね。自分の畑に嫌な人がいたら、私がつらくなるから。
ファンの人が耕してくれる「佐藤ノアの畑」はお互いにとって気持ちいい場所にしたい。そのほうが私もファンもうれしいじゃないですか。
──ノアさんのSNS処世術、痛快です。インスタグラムはどんな使い方をされてますか?
佐藤 前はかわいい写真と「月記」を書いてました。1カ月のことを小説っぽく書いてたので、「日記」じゃなくて「月記」。ツイッターのような140字の制限がないぶん、長い文章を書く場所にして、人間性を伝えられたらって思ってたんです。でも、最近はやってないです。
──なぜですか?
佐藤 ちょっと飽きちゃいました。私はSNSを仕事じゃなくて趣味でやってたので、飽きたらフェードアウトしちゃうんです。それにSNSって趣味でやってる人が一番おもしろいから、仕事にはしたくなくて。嘘とかもすぐバレますし。
今年は『armée』(アルミー)っていうファンコミュニティを濃くするターンだと思ってて。そこでの収益を全部音楽活動に使おうって計画しています。
ファンコミュニティは、もらったものをお返しする場所
──今までSNSというオープンな場で発信していたノアさんが、なぜクローズドなファンコミュニティを立ち上げたんでしょうか。
佐藤 ファンからもらったものを、もらった分だけ精一杯返せるようにするためですね。
密度の濃いファンってやっぱりすごく大切なんです。「SNSのフォロワー=ファン」ではないじゃないですか。だからファンの方々にはちゃんと別の場所を設けて、発信したいと思ったんですよね。
まぁ、SNSの場合は、アンチも含めてフォロワーみんな大切なんですけど。それとは別に濃い人は大切にしたいなって。
──先ほど「ファンコミュニティでの収益を音楽活動に使おう」という言葉がありました。
佐藤 音楽業界っていろんな事情があるじゃないですか。ライブと制作の予算は別々とか。この売上はこの部署につくからそこでしか使えないとか。
でも、そういうのってファンには意味わかんないし無関係なんですよね。みんな純粋に楽しく佐藤ノアの音楽とかライブ、MVを体験したいだけだから。まあファンの人がわかんない事情って私もよくわかってないんですけど(笑)。
私は何かができない理由がお金になってしまうのがとても嫌なんです。私のやりたいことってケミカルで、もちろんお金がかかることになるので。だから『armée』での収益を音楽関連のクリエイティブに還元します。
──ファンも「私が佐藤ノアを応援してるんだ」って、より実感できますね。
佐藤 そう。めっちゃいいMVが出たら「私たちのサポートでこんなにいいものができたんだ!」って思ってもらえるかもしれない。最初に言ったとおり、佐藤ノアはコンテンツなんで、ファンのみんなにもクルーとして参加してもらいたいんです。ということで今度のMVはパワーアップする予定です。あくまで予定ですが。
──ファンコミュニティではどんなイベントを計画していますか?
佐藤 今年から奇数月はチェキのイベント、偶数月は「佐藤ノアを探せ!」っていう鬼ごっこイベントをやるつもりです。インスタのストーリーズでヒントの写真を載せながら、都内を探し回ってもらって、見つけてくれたファンは私と一緒に写メが撮れるみたいな。
時世的にはもろもろ心配ですが、これなら密を作らずにファンのみんなと会えるかなって思ってます。
──鬼ごっこ楽しそうですね、取材してみたいです。ちなみに数あるオンラインサロンやファンコミュニティサービスの中から、CAMPFIREコミュニティを選ばれた理由はなんでしょうか?
佐藤 (事務所の代表に)おすすめされたからです(笑)。でもリアルなところで言うと、ケータイのキャリア決済ができるのが大きいですね。クレジットカードだけのところも多いですけど、私のファンは若い子が多いのでケータイ代と一緒に払えたほうがいいんですよね。
実際、親が払ってくれるケータイ代で会員登録してる子とかいて、そういう子には「今度お母さんも(イベントに)連れておいで」って誘います。ほんとに一緒に来てくれる子もいて、お母さんの顔と名前も覚えちゃいますね。
お母さんもひとりの女の子。大切なファンのひとりにしたいです。もちろん、お父さんもね。
「CAMPFIREコミュニティ」とは
CAMPFIREコミュニティは、月額制のオンラインコミュニティを誰でも作れるプラットフォーム。日本最大のクラウドファンディング「CAMPFIRE」で集まった仲間とつながりつづけたいという思いから生まれた。これまでに4500件ものコミュニティが作られ、ファンクラブをはじめレッスン、サロンや定期便など、さまざまなスタイルで運営されている。
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【連載】クリエイターズChoice -変化と挑戦-<CAMPFIRE×QJWeb>
最前線で活躍するクリエイターたちは、めまぐるしく変化する現代において、どのように“創作”に向き合い、どんな方法で数々の困難を打破しているのか。
直面した課題と解決法、見据える未来を聞く、CAMPFIRE×QJWebインタビュー連載。変化を恐れず、時代に合わせて挑戦をつづける、表現者たちの今を追う。
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