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つんく♂×CAMPFIRE家入一真「“いかがわしいもの”から革命が生まれる」。コロナ禍で変化したカルチャーの未来【前編】

つんく♂×家入一真

文=安里和哲 撮影=須田卓馬 編集=高橋千里


コロナ禍以降、エンターテインメントの業界は様変わりし、クリエイターたちは生き残るために試行錯誤している。そんな変化の転換点で、オンラインに活動領域を広げているのが、総合エンターテインメントプロデューサー・つんく♂だ。

日本のエンタメ界で30年近く最前線で活躍するつんく♂が現在注力しているのが、『つんく♂エンタメ♪サロン~「みんなでエンタメ王国」』だ。今、つんく♂がなぜ会員制/オンラインのコミュニケーションツールを利用する狙いは一体何なのだろうか。

「なりたい自分になる、そんな出会いに」「クリエイターがファンとつながることで創作活動のための資金を継続的に得られるコミュニケーション」を掲げる「CAMPFIREコミュニティ」。プラットフォームを提供する「CAMPFIRE」の代表・家入一真との対談で、その挑戦の真意を聞いた。

ふたりのトークは、コロナ禍以降のエンターテインメントにとって示唆に富むものだろう。

コロナ禍の今できること「この間に作戦練ってる奴が勝つ」

──つんく♂さんはプレイヤーとしてエンタメの第一線で活躍しつづける一方、家入さんは「CAMPFIRE」でプラットフォーマーとしてクリエイターをサポートされています。おふたりは、コロナ禍のエンターテインメント業界はどのように変わったと思いますか。

つんく♂ 音楽業界でいうと、ライブの仕方が全然変わったよね。さまざまな制限もかかったし、まだまだ変わっていくと思う。健全じゃないとやってはいけない、というような感覚かな。映画業界も、劇場での座席のあり方が変わったので、売るほうも観るほうも作る側も変わったよね。どちらにしても動員数が減ったので、当然売り上げは下がった。ただ、そういう実害以上に気になるのは、エンタメの“いかがわしさ”のあり方の変化だな。

つんく♂
つんく♂ 1968年、大阪府生まれ。総合エンターテインメントプロデューサー/TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qでメジャーデビュー。音楽家として「モーニング娘。」などのプロデュースを手がけ、エンターテインメント全般のプロデュースも行う。『つんく♂エンタメ♪サロン~「みんなでエンタメ王国」』では、自らの経験に基づくアイデアやテクニックを伝授する一方、「中2映画プロジェクト」などの企画もコミュニティメンバーと共に立ち上げる

──いかがわしさ、ですか。

つんく♂ うん。もちろんコロナ禍で健全でなければいけないんだけど、エンタメにお金を出すってどういうことかというと、タダでは観られないものだからお金を払ってでも体感したいってことでしょ? そこにはドキドキワクワクが必要なわけ。いわゆる「怖いもの見たさ」みたいなね。

たとえば自分が初めてライブハウスに行ったときって、ものすごく悪いことをしに行く気分だったのね。「酒飲まなきゃいけないのかなぁ……」とか「カツアゲされないかなぁ……」ってドキドキしたものです。もちろん実際にはそういう経験はないんだけど、でもその怪しげなイメージがあるからこそ、扉を開くときにワクワクすると思う。

コロナ以降、いかがわしさや怪しさに対する社会の忌避感は加速した。でもそれは当然のこと。YouTube含めて誰もが観られるエンタメというのは、僕らもアマチュア時代にやってたストリートライブみたいなもんで、小学生でも観に来られる。つまりは「いかがわしさ」から離れていく。そうなると、やはり有料より無料という発想になっていく。

なので、本来エンタメが持ってた「いかがわしさ」が少なくなっちゃったな〜、と感じてます。高額でも少人数で距離保って有料で体感するか、無料もしくは「ほぼ無料感覚でたくさんの人数で共有しましょう!」みたいなエンタメに二極化してますよね。

家入 確かにそこで引き裂かれますよね。コロナ禍で「不要不急」という言葉が喧伝されて、とにかくエンタメやアートといったカルチャーは、今は必要ないものにされてしまった。でも、この流れはボディーブローのように効いて、気づいたときには深刻なダメージになる。そのときに困るのは社会だと思います。

家入一真(いえいり・かずま)
1978年、福岡県育ち。株式会社CAMPFIRE代表取締役社長。2003年、株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)創業、2008年、JASDAQ市場最年少(当時)で上場を経て、2011年、株式会社CAMPFIRE創業。2012年、Eコマースプラットフォーム運営のBASE株式会社設立、共同創業取締役に就任、2019年、東証マザーズ上場

つんく♂ もちろんコロナは命に関わる問題ですし、この状況でエンタメやカルチャーを楽しむなら健全にやろうって流れは当然なんだけども、「いかがわしさ」の中から生まれるカルチャーこそが時代に何度も革命を起こしてきたことは誰でもわかることで。ビートルズやローリング・ストーンズがまさにそれです。なので、コロナ禍の今は「少々待て」の時期かもしれないけど、「この間に作戦練ってる奴が勝つんだろうな〜」って思ってます。

家入 そうですねぇ……。僕が大切にしてる言葉がふたつあって。ひとつはベネッセの創業者である福武總一郎さんが言った「経済は文化の僕(しもべ)」という言葉。福武さんが言ってるのは、経済ばかりが我が者顔をしてるけれど、本来は文化が先にあって、そのあとに経済がくるということです。

もうひとつは、ブライアン・イーノの「アートとは別にやらなくてもいいことのすべてを意味している」。それって今の日本で言うところの「不要不急なもの」ってことだと思うんですけど、この不要不急というワードは、アートやカルチャーを根こそぎ切り捨てる方便になっちゃった気がします。

──つんく♂さんの長い創作活動もやはり、いかがわしさと健全さの闘いでしたか。

つんく♂ そうですね。わかりやすいところで言うと『LOVEマシーン』(モーニング娘。)のとき、グループのど真ん中に当時中学生だった後藤真希を据えたのは、そういう意味でチャレンジでした。茶髪の女子中学生が加わって、ディスコソングを歌って踊る。今の時代なら世間からお小言を言われちゃうような「いかがわしさ」があの曲にはあったんだろうな〜、って思うね。結果的にヒットしたから、今では「パーティーソング」なんて言われて、健全なものとして捉えられるようになりましたけど。

つんく♂

つまり、あのときのモーニング娘。のように、突き抜けちゃえば「不良性」とか「いかがわしさ」「怪しさ」は全部健全になっちゃうんよね。先輩でいうとBOØWYとか米米CLUBとか、シャ乱Qにしてもウルフルズもなんか怪しさ満載やったし、お笑いだと、ビートたけしさんや爆笑問題という存在も、今では健全でしょ? 本来は危なっかしい人たちだったように記憶してるけども(笑)。

コロナ前からそうだけど、出る杭は打たれる時代というか。いかがわしいものが突き抜けて、健全になる前に叩きのめされてしまう時代だから、大変だよね。

アーティストへの尊敬で成り立つ“小さな経済圏”

──そもそものおふたりの出会いについて教えていただけますか。

つんく♂ 「どこかでオンラインコミュニティを立ち上げたいな」ってリサーチしてるときに、家入一真という名前を知って。僕の妻と社長の家入くんの出身地がめちゃ近くって「○○中の○○さん知ってるんじゃない?」みたいな。なので、親しみを感じて昔から知ってる気分になってました。でも実際は2020年1月に「CAMPFIREコミュニティ」でオンラインコミュニティを始めて、去年の夏に初めて会いました。ゆっくり話せたよね。

家入 僕と奥様が同郷なんですよね(笑)。

家入一真

つんく♂ 初めて会ったときは商談とかミーティングじゃなくて、雑談ばっかしてたよね。なんか楽しくって。ビジネスの話ってなんかあったっけ?(笑)

家入 僕がお話しさせてもらって思ったのは、つんく♂さんは、コロナ前から「これからのエンタメはこうあるべき」というビジョンを持ってたからこそ、この時代にも対応していけてるんだろうなということでした。

つんく♂ 「こうあるべき!」というほどではないけど、「これは違うよなぁ」みたいなことは、ずっと思ってるよね。たとえば、昔から気になってたのは、日本におけるクリエイターやアーティストに対するリスペクトの低さ。

アメリカに住んでても思うし、ヨーロッパ旅行に行っても感じることやけど、路上ミュージシャンや絵描きさんであれ、何百億円の建物を手がける建築家であれ、創作する人はみんな等しく“クリエイター/アーティスト”としてリスペクトされてます。路上ミュージシャンが歌い終わったら、「楽しませてくれてありがとう」ってお金をチャリンと入れてく。投げ銭の光景が自然に目に入ってきます。

でも、日本ではそういう光景は稀ですよね。演奏終わったらサササって人が散ってく感じね。日常会話でも「ミュージシャンやってます」っていうと「あ〜、フリーターなんですね」みたいな感覚。

つんく♂

家入 なるほど。クリエイターへのリスペクトっていう意味でいうと、僕はずっと「Patreon(パトレオン)」っていうクラウドファンディングサービスがすごいなと思ってて。

つんく♂ 聞いたことある。

家入 そこではミュージシャンはもちろん、ゲームクリエイターやイラストレーターなど、さまざまなクリエイターが有料コミュニティを作れるんです。30人くらいの支援者が集まって、月々10ドルでクリエイターを応援できる。そんなマイクロコミュニティがたくさん生まれてます。

つんく♂ 10ドルで30人だと、それだけで食ってくのはむずいけど、でもいいよね。

家入 そうですね。生活はできなくとも新しい機材や画材の足しにはなるし、バイトのシフトをひとつ減らして空いた時間を創作に当てることもできる。こういったアーティストへの尊敬で成り立つ“小さな経済圏”がおもしろいなと僕は思ってるんです。インターネットで可能になったのは、システムを使ってこういう投げ銭を継続して得られることですよね。

家入一真

【つんく♂×CAMPFIRE家入一真対談 後編は9月29日公開予定】

「CAMPFIREコミュニティ」とは

CAMPFIREコミュニティは、月額制のオンラインコミュニティを誰でも作れるプラットフォーム。日本最大のクラウドファンディング「CAMPFIRE」で集まった仲間とつながりつづけたいという思いから生まれた。これまでに4500件ものコミュニティが作られ、ファンクラブをはじめレッスン、サロンや定期便など、さまざまなスタイルで運営されている。

【記事後編】「30人の経済圏を1万人にするにはどうするべきか?」コロナ禍で変化したカルチャーの未来


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安里和哲

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安里和哲

(あさと・かずあき)ライター。1990年、沖縄県生まれ。ブログ『ひとつ恋でもしてみようか』(https://massarassa.hatenablog.com/)に日記や感想文を書く。趣味範囲は、映画、音楽、寄席演芸、お笑い、ラジオなど。執筆経験『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』『Maybe!』..

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