最新のニュースから現代のアイドル事情を考える。振付師・竹中夏海氏がアイドル時事を分析する本連載。今回は、女性アイドルの活動年齢を切り口に、アイドルたちの妊娠・出産について考える。
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目次
30代を迎えた女性アイドルが悩む「妊娠・出産のタイミング」
2021年9月末、嵐の櫻井翔と相葉雅紀が同時に結婚を発表した。
“推し”の結婚は「○○ロス」なんて言葉が生まれるほどファンの心にぽっかり穴を空けてしまう場合も多い。とはいえSMAP以降、活動年数が飛躍的に長くなったジャニーズをはじめとする男性アイドルは、結婚して子供を持つメンバーも少なくない。
言い換えれば、こうした事例が認められているからこそ、アイドルを長くつづけられているのかもしれない。
ところが女性アイドルは、10代でデビューして25歳を超えても活動をつづけていればもうじゅうぶんにベテランと呼ばれてしまうほど、現役の平均寿命は短い。
それでも10年前と比較すれば、30代を迎えてからも活躍しつづける女性アイドルは増えつつある。
2020年末、新潟発のアイドルグループ・Negiccoは、Kaedeが結婚を発表したことでメンバー3人全員が既婚者になった。
2021年には現役でアイドル活動をつづけながら結婚して母になるという未開の地を、でんぱ組.incの古川未鈴が切り拓いた。日本の女性アイドル界に新しい潮流・選択肢が生まれる兆しは確実にある。
その一方で「アイドル=恋愛禁止」というイメージもまだまだ強い。息の長い活動を目指すアイドルが増えているなかで、そうした「暗黙のルール」との折り合いをなかなかつけられずにいるケースが多いのが現状といえる。
「アイドル」とひと口に言っても、その活動内容もグループのコンセプトもさまざまである。青春時代のほんの数年を集中的に活動に費やすパターンもあれば、人生に寄り添ってライフワークとする人もいる。
アイドルという仕事に並々ならぬ想いを懸けてきた古川未鈴を中心に据えるでんぱ組.inc。一方、アイドル戦国時代と呼ばれたころの前も後も“戦うことなく”あくまで穏やかにたおやかに存在しつづけるNegicco。
一見対照的にも思える2組であるが、どちらも「彼女たちの人生ごと推す」という覚悟を持ったファンを多く擁する。アプローチこそ違えど、推しがステージに立ちつづけてくれるという奇跡にファンが意味を見出せる、そんなムード作りに長けていると思う。
これからの女性アイドル界は、この両組から学ぶことは多いはずだ。
いずれ妊娠・出産を望むアイドルと、そのファンたちへ
息の長いアイドルを目指す場合、こうしたファンとの信頼関係の築き方は活動の要となるが、女性にはもうひとつ忘れてはならない重要な課題がある。
いずれ妊娠・出産を望んでいる場合、そのタイミングの決定だ。男性アイドルと違って女性は物理的に休まなくてはならない期間が必ずある。
「子供は授かりもの」といっても、まず大前提に備えておきたい知識はある。しかし働きながらそれを女性アイドルたちが学ぶ機会は現状、ほとんど存在しない。
拙書の『アイドル保健体育(CDジャーナルムック)』では、こうした女性アイドルたちの選択肢について産婦人科専門医の竹元葉先生に話を伺っているので、彼女たち自身にはもちろんのこと、スタッフやファンにもぜひ目を通していただきたい。
(以下、竹中夏海 著『アイドル保健体育』「第一章 アイドルと生理 専門家インタビュー」より一部抜粋・改稿)
竹中夏海(以下:竹中) 現代はアイドルの数がとても増えたことで活動形態にも多様性が生まれつつあります。中には10年以上活動を続けていたり、30代に入ってからもがんばっているアイドルが増えつつあるのですが、そうすると妊娠・出産のタイミングを決めかねている子もいると思うんですよね。これはアスリートの方にも共通する悩みだと思うのですが。そういう子たちへは婦人科の視点からどういったアドバイスができますか? たとえば卵子凍結は選択肢のひとつになり得るんでしょうか?
産婦人科専門医・竹元葉先生(以下:竹元) 卵子凍結はもちろん将来の妊娠に向けた保険にはなると思うのですが、費用もかかるし、凍結したからといって確実に妊娠ができるというものではありません。なのでそこに過度に期待してしまうのはちょっと危険かもしれないです。もしも将来的には妊娠を希望していて、その時点でパートナーがいて「いつかこのひとの子供がほしい」と思うのであれば、受精卵凍結のほうがずっと成績はいいので、そちらのほうが現実味はあります。
竹中 アイドルは恋愛禁止という空気感がある中だと、それはなかなかハードルが高そうですね……。それを受け入れてくれる世の中になっていけばもちろん素敵なことですが。
竹元 あと、これは将来的に子どもを望むひとはとくにですが、生理がこなかった時に「まぁいいか」と絶対に放置せず、すぐ婦人科に相談に行ってほしいです。
竹中 たしかに。わずらわしいものだから、痛みや症状を軽減させるためには行っても、こないと「楽だしラッキー」と考えてしまうひとはいるかもしれません。実際、私が若い頃にはそういっていた子が周りにいた気がします。
竹元 たとえば35歳になった時に子どもがほしいと思って、でも「そういえば私、生理もう何年もちゃんときてない気がする」と気づくと、そこから治療をはじめたとしても、妊娠まではかなり遠い道のりになってしまうんですよ。
竹中 アイドルのように激しい運動や食事制限をする子なんかはとくに生理が止まりやすいですもんね。生理は我慢するものじゃない。そして止まったらすぐに婦人科へ、という認識をみんなが持たなくてはいけませんね。
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