横山由依(AKB48)アイドルではない自分の姿を探す。“楽しい”だけでない、複雑な感情と向き合う新たな舞台へ
AKB48からの卒業を発表した横山由依。彼女にとって新たな挑戦の場となるブランニューオペレッタ『Cape jasmine(ケープ・ジャスミン)』が10月6日からスタートする。
「これから自分の感情と一つひとつ向き合っていきたいなって思います」。稽古を通じて“アイドルではない自分の姿”を模索しているという横山に、現在の胸の内を聞いた。
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総選挙では、悲しいことや嫌なことも全部出せた
──アイドルとしての自分と、俳優として舞台に立つ自分では、気持ちの部分でも違いはありますか?
横山 私自身はAKB48としての活動でも飾っているつもりはまったくなくて、素直な自分をステージで表現してきた感覚だったんですけど、ほかの現場に行くと声の出し方とか言葉の伝え方ひとつ取っても、AKB48としてのフィルターがひとつかかっていたんだな、っていうのは感じています。AKB48としての自分は常に人から見られているという意識で、無意識に背筋もピンと伸ばしていたというか。
大きなステージで、たくさんのお客さんがいる前でのパフォーマンスを経験してきたのは自分にとってもすごく財産になっているんですけど、本来の、AKB48というフィルターがない自分っていうのもこれから必要になってくるんじゃないかなって思います。
もし自分がAKB48に入っていなくて、アイドルじゃない仕事をしていて、普通に街で暮らしていたらどんな感じだったのかな……っていうのも、これからの活動のバリエーションとしてあったほうがいいんじゃないかなって。
──「フィルターがない自分」を、今回の舞台を通じて探している感覚でしょうか?
横山 アイドルのときは「楽しい」「うれしい」っていう感情を全面に出してパフォーマンスするんですけど、自分が本来感じている「楽しい」の中にもいろんな感情があると思うんです。たとえば「昨日すごく嫌なことがあったけど楽しい」みたいな感じで、嫌な気持ちの上に「楽しい」っていう感情が乗ってくることもある。アイドルの自分はそういう感情を抑えていたんですけど、お芝居ではそういう表現ができたら深みが出るんじゃないかなって。難しいんですけど……言ってることわかりますか?(笑)
──わかる気がします。
横山 お芝居は、「楽しい」だけじゃない、いろんな複雑な感情を見せていい場所というか。AKB48でも、選抜総選挙のときは自分の中にある悲しいこととか嫌なこととかも全部出せて、自分の言葉が出たからよかったなと思っていて。普段はそういう部分をわざわざ見せたりしないじゃないですか。今回の舞台もそうですけど、これから自分の感情と一つひとつ向き合っていきたいなって思います。
──今後の活動にもつながる作品になりそうですね。
横山 そうですね。やっぱり卒業したらひとりになりますし、今回の舞台みたいにお芝居で表現することはつづけていきたいなって思いますし、その中で観てくださった方に何か少しでも受け取ってもらえるような、そんな俳優になりたいなと思っています。アイドルとして経験したことをゼロにするんじゃなくて、その上にいろんな表現の幅をプラスしていきたいですね。
人に気を遣い過ぎていたかもしれない
──根本宗子さんから最初に出演オファーを受けたときはどんな印象でしたか?
横山 すごくおもしろい作品を作っているということは知っていたので、いつかご一緒できたらなって勝手に思っていました。お会いしてみたらとても穏やかな方で、今までご一緒したことがある演出家の方とはまた違うタイプの方だな、という印象でした。いい意味で、普通の同世代の女性という感じで……。
──世代的にも近いということで、共感できる部分も多いのでしょうか?
横山 初めてお会いしたのが取材のときだったんですけど、その前にふたりでお話しする時間を作ってくださって。そこで、私の今までの行動やその理由を細かく聞いてくださって、占いみたいに「それってこういうふうに思ったからじゃないですか?」って当てられて。すごい見透かされてるなっていうか、全部バレてるなって思いました(笑)。
──どんな部分を当てられたんですか?
横山 私、AKB48で総監督をやっていたときは、すごい話が長くなりがちだったんです。根本さんにその話をしたら「それって、いろんな人に気を遣い過ぎてるからじゃないですか?」と言われて、まさにそうだなと思って。これを言っちゃうとこの人はよく思わないかも……とか、いろいろ考えちゃうんですよね。それで自分でも結局何を言っているのかわからなくなっちゃったり(笑)。
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